赤ちゃん
赤ちゃんが生まれてくる時、歯のない状態で産まれてきます。たまに下の前歯が少し生えている状態のときもありますが、大抵は歯がありません。成長に伴って下の前歯、上の前歯、それから奥歯が少しづつ生えてきます。そして2歳から2歳半くらいにかけて乳歯はすべて生えて、乳歯の歯並びは完成します。乳歯は上下合わせて20本です。上10本、下10本、前歯は犬歯から犬歯まで6本づつ上下12本、残りの奥歯は全部で8本です。
歯の数
これもたまにですが前歯の2本がひっついて1本の歯になってしまう癒合歯になっていることもあります。癒合歯が2本あるときもあります。そうすると乳歯は18本になります。また先天的に乳歯が一本少ない場合もあります。どちらも下の前歯です。歯の数が減ると歯を並べるだけの必要がないので顎がそれだけ分しか大きくなりません。大きくなったとしても今度は歯と歯の間が空いてしまいます。それは永久歯の歯並びになった時同じことが言えます。また、乳歯の癒合歯や先天欠損があると、その代わりに萌出してくるはずの永久歯がないこともあります。レントゲンで調べないとわかりませんが、あまり小さい時期にレントゲンを撮って確認してもできることはありません。将来的にインプラント出来るだけのスペースを確保できるように顎を成長させるようにしておかなければなりません。
やっぱり哺乳
何度もこのコラムでお話ししてますが、この乳歯の歯並びが完成し離乳食を終えるまでがその子供の歯並び、呼吸を決めてしまいます。正しい哺乳を行い唇、舌、頬という筋肉の使い方を覚えることで骨、筋肉を正しい方向に成長させるのです。正しい嚥下の仕方、正しい発音の仕方を覚えるのです。
正しい歯並びとは
乳歯の歯並びで正しいのは、前歯にいっぱい隙間があって、上下前歯の先端がぴったり合わさっている状態です。哺乳や離乳食が正しいとこのような歯並びになります。すきっぱは顎が正しく成長した証拠、先端同士がぴったりあわさっているのは下顎が前に出ていて気道が大きい良い証拠です。下顎が奥に引っ込んでいると気道が狭くなり、顎そのものを前に突き出して気道を広げようとします。猫背になってしまいます。上あごが大きくなっていないと鼻腔が狭いですから口呼吸になり感染しやすくなります。
正しい成長
乳歯の歯並びで普通に噛んでもらって前からみて下の前歯が見えないのは永久歯になっても大きく変わることはありません。上顎が正しく成長出来ていないのですから下顎も上顎に邪魔されて成長できず小さいままで顎が前に出ないのです。この時期にキチキチだと永久歯がきちんと生えるだけの大きさに顎が成長しないことがほとんどです。
受け口は早急にやる
受け口は見つけやすいですよね。明らかです。遺伝的な傾向があるのは確かです。家系にそういう方がいらっしゃれば早急に何か対策をしないといけません。遺伝的な傾向がなくても前歯の生えている歯の軸の方向で下あごを前に出さないと歯同士が最大に接触できない場合受け口になります。例えば上の前歯が内側に向いている時など。前歯の歯の軸の方向が外側に変われば、下の前歯が上の前歯の内側に当たって下顎を前に出さなくてすみます。
3~4歳から治療できるのか
取り組みは出来るだけ早く、3~4歳からならベストです。乳歯は歯も小さくいわゆるワイヤー、ハリガネで治すことはできません。取り外しできる装置を口の中に入れてもらう治療になります。入れられないと治療できません。入れても自分で外したら効果ありません。就寝時と日中1時間口の中に入れてもらわないと治りません。きちんとしてもらえれば数カ月でよくなります。半年以上かかっても変わらなければ大きくなってから、骨にアプローチすることも考えた治療になります。ですからきちんと言い聞かせて装置を使える年齢でないと治療出来ないとも言えます。成長のピークを迎える6~8歳までに取り組んで終わらせることが目標です。
成長は予測できない
それでも第二次成長で下顎が大きくなって前に出てきて、また受け口になった、なんてこともあります。AIを使っても成長だけは未だに予測できないのです。それでもやるだけのことをやれる時期にやってあげることが親心ではないかと思います。哺乳と同じでその時期には2度と戻れないのですから。様子見ます、で良くなることはありません。いつの間にか中学生になって永久歯になっていた、なんてことはよくあります。永久歯も少しづつ生えてきた小学生低学年で終わらせておきたいものです。
出っ歯も早めに
見た目はそうでなくても出っ歯はあります
口を閉じても上唇から歯が見えるとかだとわかりやすいですよね。でもぱっと見でわからない出っ歯もあります。しっかり噛んだ時に上の前歯に隠れて下の前歯が見えない、ほとんど見えない、なども出っ歯なのです。下の前歯は通常上の前歯の先端近くと噛み合っているのですが、上の前歯の内側の歯茎や歯と歯茎の境目に当たっている場合は上下の顎の関係がズレています。上あごが正常で下あごが後ろなのか、上あごが出ていて下あごが普通なのか、上あごが出て下あごが後ろなのか、それは顔貌やレントゲンから診断しなければなりません。歯の軸だけが前に倒れていることもあります。
上下の位置関係をよくするのが目標
小学生の時期、歯を並べて治すというよりは、上下の顎の前後的な関係をなるべく正しい関係にすることが目標になります。上あごと下あごの成長にはズレがあります。先に上あごがピークを迎え、それから下あごが追いかけるようにピークを迎えます。15~18歳まで成長のスピードは小学生の時期とは比較にならないくらい緩やかです。ですからやや出っ歯傾向であってもそれでよくて、永久歯の歯並びになった時、本格的に治療すると考えてください。
よく言われる2期治療とは
2期治療は歯にダイレクトに力をかけて歯を並べます。1期治療である小学生の頃の治療は顎と顎の関係を正す時期で歯をきっちりきれいに並べる時期ではありません。顎の成長も予想できませんし、きちんと並べてから隙間ができたら、また治療、なんてこともありますから。2期治療は永久歯の歯並びから始める矯正治療です。
歯並びガタガタ
歯がきれいに並ばないのは歯が大きい場合もありますが、大抵は顎が小さいから歯が並びません。小学生の時期は永久歯や乳歯が混在しています。きれいに歯を並べるのが目的ではなくて、永久歯だけの歯並びになった時にきちんと歯が並ぶだけの顎の大きさにしておく、ということが目標になります。歯のガタガタは付随的によくなればよいと考えてください。
その装置として考えられるのは
T4K/プレオルソ
日中1時間と夜間使用取り外しの装置
比較的取り組みやすいですが、個別の歯に力をかけるわけではありませんから歯並びそのものが良くなりにくいです。大まかな顎の拡大とある程度の歯並びを目指します。そして鼻呼吸を覚えていくようにします。取り組む前に鼻の通りが悪ければまずその治療を行ってもらうことになります。
拡大床(半分取り外し半分取り付け)
比較的がっちり歯に固定しますが取り外しは可能です。週に1~2回ネジを回して顎を内側から拡大していきます。作用反作用の観点から1日12時間以上の装着が必要です。12-12=0です。顎は大きくなりますが個別の歯に力はかかりづらいです。
インビザライン矯正(インビザラインファースト)
1日22時間以上装着します。個別の歯に力をかけますから歯並びがよくなります。
顎そのものにも歯を動かすための力を利用して拡大するようにします。
永久歯の数がある程度揃わないと適応できません。(前歯4本と奥歯2本)
3~5日交換でマウスピースを交換していきます。永久歯がきちんと並ぶだけ顎を大きくするとともに歯をきれいに並べていきます。永久歯にすべて変わっても治療が必要になることもあります。
上記3つの治療法でも2期治療が必要なことがあります。
開咬
噛んだ時に前歯が全然かんでいない状態です。口呼吸していることが多く、口が開いています。嚥下運動する時にその開いているところに舌先をいれないと上手く飲み込めないので、舌の訓練を毎日しなければなりません。噛んでもいませんから前歯を使うように訓練しなければならず、水槽の酸素を送るチューブを短く切り、それを毎日3分噛み噛みして前歯に刺激をあたえましょう。かぶりつかないとたべられない食材を毎食一つ入れて前歯に刺激を与えてください。それと共にプレオルソを日中1時間と夜間使用します。鼻呼吸を覚え永久歯の歯並びになった時から前歯の空隙を埋めていく2期治療が必要となります。
小学生の矯正治療の目標
小学生の歯並びの治療は鼻呼吸を覚え、永久歯がきちんと並ぶ顎の大きさになるようにするということが最大の目標になります。ゴルフで言うとOBにならないように、一打目、二打目でカップの近くまでボールを運ぶことです。細かくカップに寄せていくところが二期治療と考えていただくとわかりやすいと思います。