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いろいろなレントゲン写真
保険診療で認められている画像診断として2~3歯を撮影するレントゲン写真、お口全体を撮影するパノラマレントゲン(携帯でもパノラマ撮影ありますよね。あんな感じです。)、顎関節に焦点を当てたレントゲン撮影、噛み合わせの面を撮影する咬合法撮影、CTがそれに相当します。保険診療には認められていないのですが、顔の横、正面から撮影するセファロレントゲンもあります。矯正診療によく用いられています。局部のレントゲン、パノラマレントゲンについてはざっと以前にお話しさせていただきました。パノラマ写真についてはもう少し詳しくわかることがあるので記載していきます。重複している内容もありますがご容赦ください。
パノラマ写真
親知らずがあるのかないのか、どの方向に生えているか、神経までの距離がどうか、歯を支える骨がどの程度失われているか、虫歯があるのかどうか、などはぱっとみてわかります。(小さい虫歯はよく見ないとわかりません。)歯の根の先に膿が溜まっているかどうか、歯が割れているかなどもわかります。
咬耗
犬歯はその先端が尖っています。それが前歯と同じように平らになっていることがあります。歯が削れているのは歯同士が擦りあわされているからです。歯ぎしり、噛みしめで削れているのです。削れるのも両方の場合、片方の場合もあります。
エラの張り
エラの部分の骨の形に左右差があるかないかを診ます。噛み癖がないと左右差が出ませんがよく使う方の骨が大きくなります。噛み癖があるかないか、どちらにあるかが何となくわかります。
顎関節の形態
顎の関節は本来親指や小指のような丸い形をしています。その形が小さかったり、尖っていたりしていることがあります。噛み癖がある方の顎の関節が変形していることが多いです。変形している原因は噛み合わせの高さが低くなっていることが多いです。片側、両側どちらのケースもあります。噛み合わせが低くなると下顎が後ろに下がっていることが多く、舌も下がります。いびきや睡眠時無呼吸症候群の原因になることもあります。顎を開けるとカクカク鳴る方が多いです。
親知らず
現代人の顎は小さくなっていて、親知らずの生えるスペースが少なくなっています。親知らずがあるままだとその親知らずが悪さをして歯並びを悪くします。前歯が押されてガタガタになったり、親知らずの手前の奥歯の生えている方向をずらして噛み合わせを変えます。親知らずを抜歯することで噛み合わせがよくなることもあります。それゆえ矯正治療では親知らずを抜歯することが多いのです。
親知らずの生えている方向
親知らずの一つ手前になる、普通は一番後ろに当たる歯が虫歯の場合(上に限ります)、親知らずの生える方向によってはその虫歯の歯を抜歯して親知らずをその代わりにできるかどうかを検討します。残念ながら下顎ではそのように出来ないです。親知らずが未萌出でないとできません。矯正治療が必要になります。
歯の軸の傾き 起こせるか
前歯がガタガタで矯正治療をする場合、歯を並べるためのスペースを確保しなければ並べません。あまりのガタガタでは歯を抜かないと確保できませんが、奥歯が前方に傾斜していると後方へ歯を起こすことでスペースを作ることができます。奥歯の生えている歯の軸がどうなっているかもパノラマ写真である程度わかります。
前歯と奥歯の段差
噛み合わせの面はフラットである方がよいのですが、犬歯と奥歯の境目で段差の付いていることがあります。これは、奥歯の噛み合わせの高さが低くなっていることを示しています。上下前歯同士が奥歯よりも先に当たって下顎が後ろに行きますから顎に負担がかかります。
セファロレントゲン写真
頭部規格レントゲン写真と言われます。このレントゲン写真は耳、左右の外耳道にイヤーロッドという軸を入れます。おでこに支えるものを当てて、頭を固定して撮影します。顔の真横から撮影するものと、後頭部から前後方向に撮影するものがあります。きちんと背筋を伸ばして撮影するのは基本になります。頭蓋は一番先に成長が終わります。頭蓋、眼窩(眼のくぼみ)、内耳の穴、眉間の凹んでいるところ、など、変わらない骨を基準に重ね合わせると、昔と今の変化の有る無しを知ることができます。
規格写真
パノラマ写真は頭の周りをレントゲンを照射する照射筒が周ります。ですから頭部の固定が少し甘くなるので重ね合わせることが難しいのです。規格写真は照射筒を動かしませんから頭を固定することができるのです。小さなレントゲン写真も撮影時に規格用の補助具を用いればある程度規格化できます。ただし少しでも撮影時に頭が動くとおじゃんです。
セファロ撮影からわかること
横方向から
気道の広さ
気道が狭いか、広いかをみることができます。気道が狭いと下顎が後方へ下がっていることが多いです。後方へ下がるのは噛み合わせの高さが低くなっているか、上顎の大きさが小さくて噛んだ時に前歯が先に当たって後ろへ押しやられるか、いずれかの場合がほとんどです。
頸椎の湾曲
頭は頸椎の上に乗っています。頭の重さを支えるのに適切な位置だと頸椎はとても緩いS状のカーブを描きます。それが真っすぐだったり、逆のカーブを描いていると何か原因があってそのようなっています。先ほど述べたように気道が狭くなっていると呼吸しやすいように下顎を突き出す傾向があります。猫背とかがそうです。噛み合わせがズレていたりするとやはり前後、左右のバランスが悪くなるので頸椎の湾曲に影響を与えます。
横顔のプロフィール
レントゲン写真は骨を映しますが、一部軟組織をくっきり映し出します。横顔の写し絵も見ることができます。下顎が出ているとか、下がっているとか、鼻先と下顎の出ているところ、オトガイをつなぐ線からどのくらい唇が出ているかなど見ます。唇の出具合から出っ歯の原因が、上顎が前に出ているのか、見かけ上出ているように見えるだけなのか、などチェックします。
上顎が出ているのか引っ込んでいる
脳を守るために適切な位置に歯は並んでいます。頭蓋と奥歯の位置の関係をレントゲンで知ることが出来ます。きちんと測定しなければなりませんが、適切な位置にあれば歯をそこから動かすことはできません。矯正治療を行うときにどの歯を動かすかなどの診断をするために必要です。
前後方向
咬合平面の傾き
前後的な規格写真では噛み合わせの面が左右の眼窩や頬骨をつなぐ面と平行か、傾いているのかを知ることができます。もし傾いているようなら、矯正治療や噛み合わせ治療でフラットになるように治療します。局部的な治療で収まることはなくお口全体の治療になります。高さの低い方を高くして揃えていきます。
顎の左右のズレ
頭蓋に対して下あごがきちんと真ん中にあるのか、左右どちらかにズレているかを知ることができます。ズレている方の噛み合わせが低くなっていることが多いです。左右で顎の長さが如実に違うこともあります。筋肉や皮膚があるとわかりにくいこともレントゲン写真になるとわかることもあります。
鼻の通り具合
鼻の通り道は通常空間になっているので黒く映りますが、真っ白、あるいは片方だけ白い、ということがあります。通りが悪いと口呼吸していることが多く、上あごが小さくなりますから噛み合わせが悪くなる傾向が高いです。
これらを活かした矯正治療を行っています。
矯正治療を行う前にレントゲン写真を撮影するのはこれまで述べてきたことを治療に活かすためです。まだ他にも得られる知見はあります。矯正治療はただ歯を並べるだけではなく、できるだけ身体の歪みの無い状態にして健康を取り戻すことも同時にしたいと考えて治療計画を立案しています。治療の節目節目にレントゲン写真を撮影するのは経過を追うことと共に、改善しているか、どう改善していくかのために撮影させていただいています。