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歯科の進歩
歯を注射で蘇らせるという研究から治験に移るというニュースがしばらく前にありました。画期的で素晴らしいことです。インプラントも時代を経て、どのメーカーも同じような形態、性状になってほぼ完成された感があります。矯正治療も、歯の外側にワイヤーをつけて動かしていましたが、舌側にワイヤーを付けて動かしたり、マウスピースで歯を動かすことができます。少しずつ歯科の世界でも進歩しています。どの世界でも絶えず研鑽を積み、時代をキャッチアップしていかなくてはならないと思いますが、歯科でも同様です。また機器、機材の進歩もあり、治療の効率化も図られるようになっています。
基本は変わらない、でも、
しかしながら診断や基本的な手技に変わりはありません。通法に従って治療を行うのですが、症状の改善が見られないこともあります。当院でも対応が難しいケースがあり、病院歯科や口腔外科、矯正専門医で診察していただいた方がよいこともあります。原因が特定できない場合、痛みが引かない場合、専門医の受診がよい場合、などがあります。
難易度の高い親知らず
きちんと真っすぐ生えていて、上下で噛んでいるなら抜歯する必要はありません。完全に生えきれていないと親知らずの奥の歯茎が腫れたりします。そんな場合は抜歯した方がよいでしょう。また親知らずが斜めに生えていたり、生えきらずにいると、腫れやすいです。それだけでなく、親知らずと手前の歯の間に物が詰まりやすく、虫歯になりやすいです。親知らずを抜歯しないと手前の歯の虫歯の治療が出来ないことが多いです。抜歯をためらっていると少しづつ虫歯が進行し、神経を取らないといけなくなるかもしれません。
親知らずの抜歯で難しいのは
神経に近い
下顎には大きな神経が走行しています。親知らずがその神経に近接していると、神経を圧迫したり、傷つけてしまう可能性があります。レントゲン撮影すると、ある程度近接具合がわかります。神経に影響を及ぼすと下唇や舌のピリピリした痺れや感じが残ったりします。その治療にはビタミン剤の投与がされたりすることがあります。一般開業医では投薬できません。
癒着 年齢
年齢が上がるにつれ、噛んでいない(機能していない)歯は骨と癒着します。歯は骨とガッチリついているわけではありません。グッと噛みしめると歯は沈みます。少し浮いているイメージです。クッションみたいですね。そうすることで噛む力を和らげて分散しているのです。骨と歯が癒着すると、力を加えてもビクともしません。無理に力を加えると歯が折れてしまいます。折れてしまうと骨の中に残った部分の摘出はさらに大変です。奥に生えているので、手や道具が届かなくて虫歯の治療が出来ないです。悪さをしているなら抜歯は不可避となります。
根の肥大 湾曲
歯は普通、口の中に出ている部分が大きく、根の部分が尖端に向かって細くなります。根の先の部分の方が大きいと、そこが骨に引っ掛かって抜歯することが難しくなります。歯の根が先に行くにつれて曲がって生えるとやはり骨に引っ掛かって抜きにくくなります。(それは親知らずに限らないのですけれど。)
見えない親知らず
鏡を使ったり、口を小さめに閉じていただいても親知らずを直接眼で確認できないことがあります。外科的な処置は直視して行うのが鉄則です。手探りで抜歯はできませんので、口腔外科、病院歯科を受診するようい話します。
リスクの高い歯の抜歯
歯を抜く時は、歯と骨の境目にくさびを打ち込んで、分離して歯をたわませます。そして歯を抜いていくのですが、その境目がほとんどわからない状態、しかもかなり骨の中に埋もれていると難抜歯になる可能性が高いです。大きく骨を削らなくてはならないこともあります。鼻の横に副鼻腔があり、上の奥歯の根の先が副鼻腔に近接していることがあります。歯をたわませないと抜けないのですが、虫歯が進行していると上顎骨が軟らかい場合、抜歯すべき歯が上顎洞に入ってしまうことがあります。一旦入ると出てきません。蓄膿症の手術みたいなことをしないと取り出せないことがあります。このように親知らずでなくても難しい抜歯もあります。
顔貌でわかるくらい腫れている
親知らず、根の治療を途中で放置している、進行している虫歯を放置している、歯茎が腫れたり引いたりを繰り返していたが放置していたなどが原因で顔まで腫れることがあります。膿が溜まっているとそれを切開して出すのが常道ですが、切開しても膿が出ないくらい深部に溜まっていることがあります。その場合、口も開かないことが多いです。切開のための麻酔も効きが悪いです。このような場合は点滴により炎症を引かすようにすることがありますので、病院歯科口腔外科へ行っていただくことになります。紹介状が必要となります。
根管治療で通法に従った治療を行っても痛みが引かない場合
神経があっても無くても、神経の取ってある歯の根の治療は、歯の中の神経のあった穴の中を綺麗にして固形で経年的に劣化のしない材料を詰めていく。大まかに言えばそういう治療です。通法に従って治療を行っても噛んだ時の痛みが無くならなかったり、腫れたり引いたりを繰り返す場合があります。歯や根の先が割れていることもあるのですが、半年以上の治療で症状が軽減しないのであれば、根の治療の専門医で診ていただくことをお勧めしています。(微小な亀裂や破折はレントゲンでは見えないのです。)
大きな骨造成を必要とするインプラント
インプラントは骨の中に埋入します。インプラントを埋めるだけの骨を削ることになります。その際、骨の中を走行する神経や血管を傷つけてはいけませんから、インプラントを入れていく部分の骨のボリュームは最低でも骨の幅は7㎜以上、骨の高さに12㎜は必要です。もし骨のない所にインプラントを埋入しようとすると、骨を増やすことをしなければなりません。その診断は事前にレントゲン写真やCTで行います。インプラント治療を行うのにどうしても骨が足らない場合、自分の骨をどこからか持ってくるか、人工の骨を使うことになります。僅かに骨が足らない場合、人工の骨を使うことでインプラント治療が可能になるケースは治療させていただきます。しかしながら沢山の骨が必要な場合、インプラント治療に先立って人工の骨を使って骨造成を行うか、他の部分から骨を移植します。そうでないとインプラントを安全に埋められないのです。そのような場合はそういった治療例を沢山されている医院や大学病院を受診されることを勧めています。
インプラントのメンテナンスは、治療されたところで3ヵ月毎に定期的に行うのが基本です。
インプラントは、骨に埋入して、しっかり骨との生着するのを待ってから、上部構造と言われるいわゆる被せ物にとりかかります。ですから治療をすべて終えるのに時間がかかります。また治療が終わっても、メンテナンスの始まりになります。命が尽きるまでずっとです。人工のものですから自分の歯以上にメンテナンスをしなければなりません。そのメンテナンスは治療された医院でしていただくことになります。インプラントシステムはメーカー毎に異なります。採用しているメーカーも医院により異なります。不具合が起こった場合、器具器材が異なりますので、その医院でなければ対応できません。メンテナンスまで含めた治療をどうしていくかまでを考慮して検討してください。
上部構造の脱落(被せの部分が取れた場合)の再装着は保険外治療です。
他院で治療されたインプラントの被せ物を再度装着する場合、システムが違っていても何とか付けることが出来たとして、インプラント治療そのものが保険診療で認められていませんので、お付けすることも保険外診療になります。
代表的なものを記載しましたが、細かいところはまだあります。他日コラムに記していきたいと思います。ボタンの掛け違いがはじめから無いようにしておくことが相互の関係性を良好に保つことだと考えるからです。