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指しゃぶり

2024年10月17日

よく聞かれることの一つに、指しゃぶりをどうすればやめさせられますか、があります。診療していても、学校検診でも、指しゃぶりをしていた、あるいはしている、のは咬み合わせるとすぐわかります。奥歯が噛んでいても上と下の前歯が噛まずに空いています。上下に空いている、あるいは前後に空いているパターンがあります。

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指しゃぶりを何故するのか

指しゃぶりは、赤ちゃんが自己慰撫や安心感を得るための自然な行動とされています。ストレスや不安を和らげているとも言われています。ある年齢になるまでは肯定的でよいのですが、幅をもったある時期までには止めた方がよいのです。

何歳まで許容できるかの目安

乳児期(0~1歳)

この時期は、指しゃぶりは自然な行動です。多くの子どもがこの時期に指しゃぶりをしますが、過度でない限り心配する必要はありません。

幼児期(1~3歳)

まだこの時期では指しゃぶりすることは特別なことではありません。聞いたり話したりする言語能力が発達し始めるこの頃から、徐々に指しゃぶりが減ることが多いです。

就学前期(3~5歳)

自我が目覚め、家庭以外の社会に入り、他人を観察し自分と比べることで、指しゃぶりが減少することが期待されます。指しゃぶりが続く場合はストレスや不安が考えられるので、ご家庭で考えてみて原因を取り除くことができるものであれば対処してみてください。

就学後(6歳以上)

小学校に入る頃には、指しゃぶりの習慣は無くなっているのが普通です。この段階でも収まらないのであれば、積極的に指しゃぶりを止める取り組みをしなければなりません。

一般的には、3歳までに指しゃぶりが自然に減少し、5歳までに止めることが理想とされています。

指しゃぶりを長く続ける弊害は

口の発達への影響

指しゃぶりを続けることで、上下の前歯が噛み合わなくなり隙間ができてしまします。通常は奥歯も含めて上と下の歯は噛み合っています。前から見ると噛んでいるように見えても、前後的に隙間が空くこともあるので見た目でわからないこともあります。先ほど述べた通り、小さいうちに止めることが出来ると口と舌の力で隙間は元に戻っていきます。指しゃぶりしている期間が長く続くと、上下の前歯が噛まないままになってしまいます。そうなると食べ物や唾液を飲み込む嚥下という機能がおかしくなります。上下の歯を接触させ、舌先を上の前歯の付け根あたりに当てて飲み込みます。しかし指しゃぶりが長く続き上下の前歯が噛んでいないと、上下の前歯の隙間に舌先を入れて飲み込むようになります。その癖がついてしまうと、矯正治療をして前歯をかませても舌を隙間に入れて飲み込もうとするので、また隙間ができてしまいます。飲み込む時の舌の習慣を治すことから治療しないと再発するのです。これを正すのはとても難しいのです。

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歯の並びが悪くなる

指をしゃぶると唇をすぼめます。唇を前に出し、頬をすぼめます。それぞれの筋肉が働くことで通常はゆったりしたU字の歯並びがV字の歯並びになります。顎が正常な大きさに大きくならないということです。顎が大きくなれないと、歯が並ぶスペースが足らなくなります。乳歯の時期のみならず、永久歯になってもガタガタな歯並びになってしまいます。

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鼻呼吸できない

顎が大きくなれないのと関連しますが、上あごの上は鼻です。上顎が大きくなれないと鼻も大きくなれません。見かけの鼻ではなく、鼻の中です。そうすると鼻の中の空気の通り道が狭くなり鼻呼吸しづらくなります。鼻呼吸できないと口呼吸になります。口呼吸になると鼻毛など、ろ過装置を通らない空気を取り入れることになりますから細菌やウイルスが体内に入りやすくなり、耳鼻咽喉領域で炎症を起こしやすくなったり他の病気のリスクが高まることがあります。

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舌足らずな発音になる

指しゃぶりが続くと、言葉の発音に影響が出てきます。舌が上と下の前歯の間に入り込むので、サ行やタ行の音が不明瞭になることがあります。また上の前歯が前後的に前に出ていると上唇も前に出てくるので、唇を閉じて発音する音がうまく出せないことがあります。唇を閉じて発音する音は、主にマ行、パ行、バ行です。言葉を使い始める時期までに改善したいです。

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精神発育に問題がでるかも

幼稚園や保育園、学校などで他の子どもたちと違う行動をしていることで、ストレスを感じることがあります。同年代の子どもたちが指しゃぶりをしていないと、心理的な面に影響を及ぼすことがあるとも考えられます。

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指しゃぶり対策

代替手段を検討する

他の興味をもっていることに気をそらすようにしてみましょう。絵を描くなど、子どもが指しゃぶりをしているときに指しゃぶり以外の活動を積極的に取り入れると良いでしょう。ずっと見ていることも出来ないのでタイミングは難しいかもしれませんけれど。

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母が女優になる!

実はこれが一番効果的なのではないかと密かに考えています。何を言っているのか?と思われるかもしれません。子供は親に褒められたいと思っています。いい方は変ですがそれを利用するのです。指しゃぶりをしていると、とても悲しそうな顔をして“~ちゃんが指しゃぶりをしているとお母さんはとても悲しい気持ちになる。体によくないことだから。お母さんは~ちゃんが健康になってほしいから、指しゃぶりをやめてくれるととっても幸せな気持ちになるんだけどな。”と。指しゃぶりをしていないと、しそうなときに、“~ちゃんが指しゃぶりしていないから、お母さんは今とっても嬉しい、幸せ!”ととびきりの笑顔をみせてあげてください。抱きしめてあげてください。たくさん褒めてあげてください。

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家族の協力が必要

どれも本当のことですよね。お子さんのことです。一生にかかわることです。女は生まれながらに女優、と嘘か本当かはわかりませんが、どこかで聞きました。ある時期限定のことです。頑張ってみてください。ただし家族全員で一貫した同じ対応をすることが必要です。水を差すような言動や行動がないよう充分すり合わせはしておいてください。

根気強く続ける

お子さんがすでに成人されたあるお母さんから聞いた話です。そのお子さんが小さい時指しゃぶりが治らなくて困っていたそうです。ある日祖母に当たる方が指しゃぶりの解消のため、お孫さんの指にシナモンを塗ったそうです。そうするとたちどころに指しゃぶりが収まったそうなのです。素晴らしいことなのですが、後日談があり、そのお子さんは成人になってもシナモンがNGなのだそうです。私は指しゃぶりを止めさせるためにシナモンを指に塗ることを推奨しているわけではありません。くれぐれもご注意ください。何が言いたいかといえば、無理に頑張ると子供のトラウマになるということなのです。指しゃぶりをやめることは、時間がかかることもあります。根気強く続けていくことが大切です。無理にやめさせようとせず、焦らずゆっくりと進めましょう。

専門家に相談することも一考に値します。

それでも指しゃぶりが続く場合や、発達への影響が心配される場合は、小児科医、子育て支援センターや保健師さんなどに相談することも検討してください。

歯科医院でできること

私の考える対処法は先に述べた通りです。ご家庭での対処が中心になります。歯科医院として出来ることは、就学前くらいに小児矯正で用いる口腔機能装置を装着することになります。

装置を入れることで

舌先の定位置を覚える。

不要な筋肉の動きから歯列を守ってU字歯列にする。

正しい嚥下の仕方を覚える訓練になる。

などの効果を期待します。

子供は適応力があるので早期に入れることができればよいと思います。基本夜間使用ですが日中も少し装着する時間を増やすことが効果的です。ただし鼻の通りがよくなければ先に治療しないと装着できないです。自分で取り外しできるので、言い聞かせてきちんと装着できることが条件になります。外していては効果が出ません。

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