虫歯が進行するほど、治療の回数は増えます。小さな虫歯であれば1回で治療終了となります。しかし、虫歯が大きく、詰め物や被せ物を技工所で作製する必要があると、治療回数が増えます。更に虫歯が進行し、根管治療(神経治療)になると治療回数が更に必要になってきます。虫歯は早めに治療することが治療の回数を減らす近道です。気になること(歯が黒い、しみる等)があれば歯科医院を受診して下さい。
虫歯の原因
虫歯とは、歯の表面や歯と歯の間に付着するプラーク(歯垢)を足場として、ミュータンス菌によって歯が溶かされる病気のことです。ミュータンス菌が虫歯の原因菌です。(streptococcus mutans)
ミュータンス菌はお菓子のみならず、食事に含まれている砂糖を栄養源として活発に働き、より一層、酸を生成し、虫歯が悪化していきます。
口腔
歯垢はうがいだけでは洗口液を使っても取り除けません。歯ブラシや歯間ブラシを用いなければきれいに取り除くことができません。
甘い物だけでなく、普通の食事にも砂糖は含まれています。
滲みるとか、物が詰まるなど症状がひどくなれば歯を削らなければならない場合もあります。
しかし、できれば自分の歯は削るような治療はしたくないですよね?
虫歯を悪化させないためには、歯磨きをしっかり行うなどお口の中の衛生管理を行い虫歯や歯周病が進行しにくい環境を整えることが大切です。
進行してしまったところは最小限の治療を行なっていきます。
虫歯の進行度について
虫歯は通常、進行状況によってC0~C4の段階に分類されます。
一般的な虫歯治療の流れは、以下の通りになります。
C0(脱灰)
初期虫歯の治療期間まずは歯に穴や痛みなどがなく、再石灰化(虫歯の自然治癒)がまだ期待できます。初期のころは治療が行われないことがほとんどで、歯を削らず、経過観察となります。虫歯とは言え、まだ歯に穴も空いておらず痛みも感じません。再石灰化により虫歯が治る可能性もあるので、治療を行わず定期的なチェックを実施します。 特徴症状痛みなどの自覚症状がありません。しかし歯のツヤがなくなったり、溝や歯の付け根が茶色や黒く変色することがあります。場合によっては白くなることもあります。自覚症状がないため、多くの場合、定期検診で発見されます。経過観察していくことがほとんどです。
C1(歯の表面の浅い虫歯)
エナメル質の虫歯の治療期間次に初期から1段階進行した、エナメル質に広がった虫歯になります。治療では歯を削り、コンポジットレジンと呼ばれるプラスチックの詰め物をする方法が採用されます。もしくは状態により、歯を削らず経過観察とすることがあります。 特徴・症状 歯の表面をおおっているエナメル質が虫歯菌により溶かされ、虫歯がCOより進行しています。歯には小さな穴や溝ができ、色や薄茶色に見えるようになります。しかしまだ痛みはなく、治療の痛みも最小限です。なるべく削りたくないので私は経過観察にすることがほとんどです。むし歯になりやすい方は他の歯の治療痕の有る無し、有ったらどの程度の大きさか、などから経過観察の期間、あるいは治療の是非を考えます。虫歯になるリスクが高そうなら治療や定期健診の期間を短くします。
C2(歯の中のやや深い虫歯)
C2はエナメル質に広がった虫歯から、さらに象牙質に進行した虫歯です。歯を削り、白い詰め物をするか、被せ物の型取りをして、完成した被せ物をセットする治療が行います。そのため即日で済むか2回の通院になります。特徴・症状 症状として痛みを感じるようになります。甘いものや冷たいものがしみたり、虫歯の穴に食べ物が詰まりやすくなったりすることもあるでしょう。象牙質はやわらかいため、エナメル質の虫歯までと比べ進行が早くなります。また全く痛みを感じずに進行していることもよくあります。健診にお越しいただいき、視診やレントゲンでわかることがあります。定期健診は大切です。
C3(神経まで進行した深い虫歯)
虫歯が歯の神経にまで及んだ状態になります。虫歯が神経まで達すると、神経を除去する根管治療を行います。根管治療では治療に3~6回、歯の部位にもよりますが2~3ヵ月かかることもよくあります。 特徴・症状、激しい痛みをともなうこともあります。歯には大きな穴ができるため、見た目でわかるほどです。常にズキズキとした痛みが感じられ、虫歯による口臭が強くなることもあります。ズキズキしている時は麻酔が効きにくく、一度炎症を抑える薬を入れて、麻酔が効くようになってから治療になります。奥歯は神経の数が多く、細いです。術者の手も入りづらく治療しにくいので治療期間が長くなる傾向にあります。
C4(歯の根まで進行した虫歯)
虫歯でほとんど歯が無くなってしまった状態で、基本的に抜歯となります。抜歯をした後はブリッジや入れ歯、インプラントのいずれかを選択していくことになります。抜いた場所がしっかり骨になってから治療にとりかかりますから、治療完了まで相当の時間はかかります。 特徴・症状 歯を抜いた部分の骨が回復するまでに、約3~6か月かかります。C3の虫歯と同等のズキズキとした痛みや口臭が感じられますが、虫歯が進行して神経がダメになってしまうと、逆に痛みが薄れています。ブリッジや義歯で失った部分を補綴すると、残っている歯に負担がかかるのであまりお勧めしません。ブリッジの土台や入れ歯の金具のかかっている歯の寿命も短くなります。
痛くなく治療するための麻酔
麻酔液を体温程度に温める
歯科治療に使用する麻酔薬は骨の中にある神経に作用し、歯の感覚を麻痺させることで治療の痛みを抑えることができます。治療前に麻酔液を人の体温程度に温めると注射する際の痛みを軽減できます。
細い注射針を使用する
注射針を細い針にすると皮膚にあたる面積が少なくなることで痛みを感じにくくなります。当院では歯科治療機器の中でも最も細い針を使用してゆっくりと薬剤を注入することで、麻酔の際の痛みを極力抑えています。
一般的な虫歯の治療の流れ
1.治療を行う歯の周囲に局部麻酔を行う(C1からC2の境目くらいだと麻酔を行わないこともあります。)
2.麻酔が十分に効いたら、歯を削って細菌に侵された虫歯をすべて除去する
虫歯が大きい場合、すべて取り切ると、神経がうっすら見えることがあります。その場合神経を保護するカルシウム製剤をその部分に貼付してから詰めていきます。
(カルシウム製剤はアルカリ性寄りのPHのため術後48時間くらい違和感が出ることもあります。ズキズキ感が消えなかったり、鈍痛が長く続くようならやむを得ず神経処置になることもあります。)
神経のバイタリティには個人差があり、同じ処置をしても痛みの出やすい方、出にくい方、様々です。
(神経を残すことを優先しています。ご容赦ください。)
3.詰め物を入れる
その方の噛み合わせ、審美性、耐久性など総合的に考えて、白い詰め物をするか。型採りをして金属・セラミックを入れるかを決めます。
CR(白い詰め物)
主に前歯やなど小さい詰め物をする時に用います。広く用いられますが。即日に詰めます。経年的な材質の劣化で歯垢が付きやすいのが弱点です。
インレー(金属の詰め物)
歯と歯の間の距離が長かったり、噛み合わせのきつい方に用います。保険の金属材料には銀が多く用いられており酸化していくので、(隙間が出来やすいので)再度虫歯になるリスクが高くなる傾向にあります。
削った後に型取りをして、後日調整して装着します。
セラミックインレー
審美性、耐久性、抗う蝕性に優れています。銀や銅を使っていませんので酸化はしません。また歯垢が付きづらいです。強度も歯より硬いです。見た目もよいです。自費治療になります。
虫歯が神経まで達してしまったら
虫歯が神経まで進行してしまった場合(C3)、歯の神経治療を行います。広い意味で虫歯治療と言えます。簡単に説明しますと
歯の内部にある神経や血管が集まった部分を歯髄と呼びますが、虫歯が歯髄(神経)に進行していた場合、根管内の歯髄を取り除いて患部を消毒し、薬を詰めて再度細菌が入らないよう詰め物と被せ物を施します。このような治療を根管治療と呼びます。「神経を抜く」のがこの治療にあたります
歯髄まで進行してしまった虫歯はそのままにしておくと周辺にも細菌が広がっていき、患部が痛み歯茎の腫れが出てきます。抜歯をする可能性があるため早い段階での治療を受けるようにしてください。
ですが、根管治療は虫歯治療において患者様ご自身の歯を残すための最終手段となります。そのような状態になる前に予防や治療をすることがなによりも大切になります。
根管治療の流れ
- 1虫歯が進行した部分を取り除きます。
- 2.やすり状の器具(ファイル)を使用し、虫歯が進行した歯髄を取り除きます。根管の形状はまっすぐ伸びているわけではなく、その形状も本数も太さも患者さんそれぞれで異なるため、歯髄の除去には時間がかかります。
- 3.歯髄を除去した穴の中を薬剤で消毒し、歯髄腔と根管に隙間なく充填物を詰めて雑菌が入らないよう処置します。
- 4.患部に設置した土台に金属やセラミック製の被せ物を装着することで、歯の機能を保ちます。
虫歯治療のポイント
虫歯の治療期間を短くするには
虫歯は痛みがなくても状態により、治療に1か月ほどかかることもあります。しかし次の2つのポイントを意識していただければ、治療にかかる期間を短くできるので参考にしてください。
1. なるべく早く歯医者に受診する
まずは虫歯を発見あるいは兆候を感じたら、なるべく早く歯医者を受診することです。解説してきたように、虫歯は症状が進むにつれ治療も長くなります。早期発見なら1日の治療で終わることもあるので、早めに歯医者を受診してください。
2. 定期的な検診
虫歯から歯を守るために
虫歯は治療が終了した後も再発する場合があります。
それを未然に防ぐためにも治療後は特にお口の健康管理を忘れずに行いましょう。
再発予防には、歯科医院での定期健診を行うのが重要です。
当院では、治療した歯や歯茎の状態のメンテナンスやお口全体のクリーニングを行い患者様の口内環境を虫歯や歯周病になりにくい環境に整えるお手伝いをしています。
また歯科医院での定期健診だけではなく、健康で綺麗な歯を維持するためにも患者様ご自身が行う口腔内環境のケアが非常に大切です。
歯科医院とご自宅での日々の健康管理を通して、お口の中を清潔に保つ意識を身につけましょう。
※虫歯治療は保険診療の対象です。ただし神経を残すための薬剤には一部保険対象外のものがあります。適応症の場合、承諾の有無を必ずお聞きし、使用の是非を決めていただきます。白い詰め物、被せ物は保険対象外の部位がありますのでご承知おきください。
神経を残すために
当院では極力神経治療にならないように、神経保護する材料を用いるようにしています。(ズキズキしていたり、熱いものが滲みるような虫歯には適応外です。)
加齢とともに人の神経は少しずつ縮小していきます。歯がすり減り外部からの刺激を受けやすくなるので、防御反応として外との距離を取ろうとするのです。
神経にマイルドな刺激、すなわち虫歯のところに薬を置くことで歯の神経に防御反応を起こさせるのです。3ヶ月から半年くらいを目安に虫歯の除去と薬の交換を行います。痛みがなく、虫歯をすべて取り切っても神経が出ないとなったら最終的な詰め物をしていきます。分ける回数は虫歯の大きさにより異なります。トータル1年以上かかることもあります。時間はかかりますが神経を取らずに済むのであればこの治療を行う価値はあるかと思います。ただし途中で痛みや不快症状が出たならやむを得ず神経処置となります。
処置回数により費用は異なります。(1つの虫歯一回5,000円 一本の歯でも2つの虫歯ということもありえます)
【術前写真】
一気に虫歯を取ると神経まで出る虫歯です。【術後写真】
左の詰め物の下にうっすら白い帯がありますが、そこが新しくできた象牙質になります。
よくある質問集
虫歯を治したのに滲みることはありますか?(痛むことはありますか)
虫歯を取り切ると神経と詰め物が近接し、刺激が伝わりやすくなります。特に金属の場合は熱伝導率が高いので滲みやすいです。
また神経のバイタリティには個人差があり滲みやすい方、滲みにくい方があります。虫歯が大きい場合は神経を保護する材料を詰めてから処置します。
症状は一過性であることが多く、3~6か月くらい様子をみてもらえるとよいかと思います。しかし長い時間滲みて日常生活に支障をきたすようなら神経処置を考えた方がよいです。。
今まで痛みはなかったのに治療したら痛くなりました。そんなことはあるのですか?
歯の一番外側のエナメル質より内側の象牙質の方が虫歯の進行は早いです。エナメル質が欠けてしまうと刺激が伝わりやすく神経が痛みを感知しますが、欠けずにいると刺激をある程度遮断するので痛みは出にくいのです。
治療では虫歯を取り切りますから神経までの距離が短くなることや材料の刺激などで痛みが出ることがあります。
黒いところがありますが、治療しなくてよいですか?
進行が止まっていると判断できた場合、口腔清掃環境、他の歯の治療痕、噛み合わせ、定期健診の受診状況などと照らし合わせ、経過観察にしています。ただし健診期間を短くし、必要と判断すればすぐに治療します。少し疑わしい場合は、更にレントゲン撮影なども加味して治療の是非を決めています。
金属の詰め物を白くやり替えたいですができますか?
噛み合わせによっては金属が良いことがあります。保険の白い詰め物では噛む力に耐えられず、壊れることもあります。もしやり替えるならセラミックの詰め物にすることをお勧めします。
ズキズキして痛みのある大きな虫歯ですが、神経残せますか?
一過性の冷水痛程度であれば、大きな虫歯でも神経を残せる可能性は高いです。
痛みがしばらく続いたり、温水痛、ズキズキしている拍動痛などの症状がある場合、神経の保存処置をしても痛みが引かないことが多く、神経処置する方がよいでしょう。
歯にとても白いところがありますが、虫歯ですか?
周りに比べ白すぎる部分は白濁と言います。歯の結晶が歪んでいる状態で虫歯になっている可能性が高いです。稀にその状態で均衡を保って虫歯にならない状態になっている場合もあります。
その場合は経過観察していきます。白濁を周囲と同じ色に戻すことは基本的にできません。
白濁を解消する新しい薬材も登場しつつありますが、保険外治療になります。