皆さんも疑問に思ってらっしゃらないでしょうか。きちんと定期健診に通っているのに、行くたびに虫歯を指摘されて治療しているような気がする。ちゃんと家でも歯ブラシも歯間ブラシやフロスまでしているのにと。これには理由があります。
タイプは3種類
全く何にも手入れをしてないのに全然お口にトラブルがないという方も稀にいらっしゃいます。超微妙なバランスの上に成り立っているように思います。先天的な恩恵を受けているともいえるでしょう。ですが多数の方は3つのリスクを抱えています。1つの方、2つの方、すべて持っている方も少なからずいらっしゃいます。それは、虫歯のリスク、歯周病のリスク、噛み合わせのリスクです。
虫歯菌はどこから
口腔内の細菌は唾液1gで1億個、歯垢1gで1000億個の細菌が生息しています。これを無菌化することはできません。無菌化すると他の菌、あるいは真菌(いわゆるカビ)が口腔内に代わって生息します。細菌にとっては唾液という暴風雨があれど、口腔内は適温で絶えず栄養が供給されるからです。胎内にいる時は口腔内には羊水が入っています。産道を通ってくる時に口腔内が感染すると言われています。それだけではなく産まれてからの日常生活でも感染します。必ずしも口腔内の細菌は必ずしも悪ではありません。共生できる細菌がいてくれることでそれよりも害のある細菌の侵入を防いでいます。また、残念ながら今のところ虫歯菌、歯周病菌、など選択的に抗生剤でやっつけることはできません。共生できる範囲で歯周病菌の割合を減らすことはできます。
虫歯のリスク
生まれてくる時に口腔に住み着く細菌は人それぞれ違います。虫歯菌が元々多い方は虫歯のリスクは高いです。詰め物、被せ物、神経が取ってある歯が多くある方はむし歯のリスクが高いと言えます。こういう方はマメに定期健診に来ていただくことと、ご自身のメンテナンスが大事になります。神経の無い歯も手入れが滞れば虫歯になります。神経のない歯は虫歯になっても痛みはありません。健診時にレントゲンを定期的に撮影して確認することは必要です。
歯並びがよくないところの治療は難しく再発しやすい
虫歯の治療をするのに歯並びがよくないと治療はしづらいです。詰める部分と自分の歯との境目をピシッと合わせた方がもちろんよいのですが、そこが難しいのです。上手くできていないと虫歯の再発を招きやすくなります。
歯周病からのリスク
歯周病菌により歯周病は進行します。先に述べたように口腔内の細菌は人それぞれ違います。歯垢の除去が歯周病治療の根本になります。それが出来てから歯石除去するのが常道です。歯周病が進行すると歯を支える骨と歯肉が下がるので歯の根が出てきます。歯の根は歯の頭の部分に比べて虫歯への抵抗性が低いので特に気を付けてお手入れをしていただかないと虫歯になりやすいのです。
高齢者も同じように
歯周病でなくても年齢を重ねると歯を支える骨が減少します。いわゆる老化です。歯肉に炎症が無ければ骨が下がるにつれ歯肉も下がります。そうすると歯の根っこが出てきます。そして歯と歯の隙間が空いてきます。高齢者の方で、物が詰まりやすくなった、何とかしてほしいとお見えになりますが、一旦下がった歯茎は元には戻りません。物が詰まるその部分は歯ブラシと歯間ブラシでお手入れしていただく他ありません。それを怠って、物が詰まった状態が続いているとそれが原因で虫歯になります。高齢者の虫歯は根っこに出来ることがほとんどです。
歯の根は虫歯になりやすい
歯周病、高齢者の虫歯のリスクは歯の根の部分にあることは共通しています。医院での治療も大切ですが、ご本人のケアが何より大切です。根の虫歯の治療はさほどではありませんが、詰め物は脱落しやすいので定期的なチェックが必要です。
嚙み合わせからのリスク
加齢を重ねると歯の色が黄ばんできます。噛み合わせの慢性的な力が加わることで歯に微細なヒビが入って、それが原因ではが黄ばんでいきます。このように噛む力で歯にヒビが入ります。噛む力が強いと加齢に関わらずヒビが入ります。それがきっかけになって虫歯になります。どのくらいヒビが入っているかは残念ながらレントゲンではわかりません。(完全に割れていないとレントゲンには映りません)噛み合わせの力を小さくすることはなかなか大変なことです。
何故噛みしめるのか
噛みしめは下顎が後ろに行っていたり、噛み合わせの高さが低くなったりしていると起こることが多いです。歯並びがよくなかったり、噛み合わせがよくなくても噛みしめが起こります。起きている時は仕事などで集中している時にグッと噛みしめていることがあります。できればそのようなことのないように注意していただく他ありません。これは意識していただくことで対処できるかと思います。夜間の噛みしめは自分では注意の仕様がありません。噛みしめは自分で気づくことはほとんどありません。
決して自分では認めない
噛みしめのきつい方には共通して口腔にその兆候が認められます。
歯茎の骨の出っ張りがきつい
歯の擦り減り(前歯も奥歯も)
頬や舌に筋がつく
歯の付け根がえぐれて減っている
知覚過敏が局所、あるいは全体的に出る
同じ個所の詰め物、被せ物がよく取れる
などです。
お話しても、そんなことはないとか、言われたことがないと、頑なに否定されます。鏡でお口を見てもらっても、こちらは専門家でも、なかなか納得いただけないので困ることもあります。
対症療法としてはナイトガード
夜間は自分で噛みしめないようにすることはなかなか難しいので、歯ぎしり用のマウスピースを使っていただくとが有用と考えています。歯同士の接触を防ぎます。同じ硬さでなくなります。噛みしめが強いとマウスピースが削れてくれます。そうして歯にヒビが入ることを防ぎます。お手入れなどは義歯洗浄剤などを使っていただきます。噛みしめが強ければ装置の破損が早く起こります。歯が壊れるよりはよほど良いかと思います。
根本的な治療は噛み合わせを変えること
ナイトガードを使っていただいても本質的な問題が改善されたわけではありません。先ほど記載した通り下顎が後ろに押しやられていて、身体が苦しさを感じるので下顎を前に出したくて前に向かって歯ぎしりや噛みしめをするのです。身体の苦しさが何かと言えば、呼吸しづらいということです。下顎が後ろに行くと気道が狭くなります。気道を拡げるために歯ぎしりや噛みしめをしますから、顎が後ろに行かず、前で噛めるような噛み合わせにすればいいのです。
奥歯の正しい噛み合わせを確立する
下顎を上の前歯に当てながら前に出していただくと奥歯が当たらなくなります。どこまで出すかと言えば厳密には診査診断しなければなりません。前歯がすり減っていることが多いですから、そのすり減っている同士がぴったり重なるところまで出してみてください。その周辺が下顎にとって楽なところ、呼吸するのに楽な顎の位置とおおよそ考えてよいでしょう。だいぶ奥歯が開くと思います。その位置で噛み合わせを確立できると健康寿命も延びると思います。奥歯が失われると噛み合わせが低くなり、下顎が奥に下がっていき気道が狭くなります。顎の後ろに行くことで脳への血流量が低下します。酸素供給量も気道が狭くなりますから、脳へ良い影響があるとは思えません。
空いたところをどう埋めていくか
奥歯の空いたところは被せ物がしてあればやりかえることで修復することができます。ただすべての奥歯がそうなっていないと綺麗な歯を削らないといけなくなることもあります。もう一つが矯正治療でかみ合わせるようにしていくかです。小さな矯正器具を装着してゴムの力を使ってある程度奥歯を引っ張り出して、マウスピース矯正などで微細なところを詰めていく、というようにしていくかです。
歯の破折
これも噛みしめによることがほとんどですから、奥歯が低くなっていることに起因していると考えられます。少しでもこのリスクを減らしていくなら噛み合わせ治療を検討されてみてはと思います。
長く元気に暮らしていくために3つあるリスクを少しでも減らすことを考え実行されるとよいかと思います。