親知らずが腫れた、どうしよう、抜いた方がいいのかな?でも抜くのは大変って聞くし、腫れるらしい。できたら抜きたくない、というのが本音ではないでしょうか。それはそうです。抜かずに済むならその方がいいです。
目次
親知らずはどこにある
一番奥にあるというのはおわかりですよね。親知らずを入れてヒトは32本歯があります。前歯は犬歯を含めて上下それぞれ6本づつ計12本、奥歯は左右に5本づつ、上下合わせて20本あります。(ちなみに乳歯は上下10本づつ、計20本です。前歯の数は大人と同じ6本づつ計12本です。)犬歯の次の歯から後ろ向きに数えて5番目が親知らずになります。しっかり生えていることもあれば、ほんの少し頭が出ている場合、全く歯茎の中に埋もれている場合もあります。ですから、親知らずがあるかないかはレントゲンを撮影しないとわかりません。
抜かなくてよい親知らずは
親知らずなら何でも抜いた方が良いのかと言えば、条件によっては抜かなくてもよいと私は考えています。ですがそれはかなりのレアケースです。それは顎が大きくて真っすぐ生えていて、反対側の親知らずときちんと噛んでいる場合です。こういう条件だと歯も磨きやすく清掃性がよく、噛み合わせにも悪さをしません。ただし真っすぐ生えていても、反対の歯が無いと歯がほんの少しづつ伸びていきます。手前の歯と噛む面と段差が出来るくらいになってしまうと、歯と歯の間に物が詰まりやすくなり虫歯になりやすくなります。一番後ろにありますから治療はとても大変です。手前の歯は残さないといけない歯ですが、そこが親知らずがあることで虫歯になってしまえば本末転倒です。まっすぐ生えていても抜かないといけないことも多々あります。軟食のせいか、顎が小さくなってきているのは変えられないところで、親知らずがきちんとしっかり4本生えている方はあまりお見受けしません。エラが張っている方は少数になっているように思います。
歯が少しづつでも伸び続けると
噛んでいない歯をそのままにしておくと、親知らずに限ったことではありませんが反対側の歯茎に当たってくることがあります。硬い歯と軟らかい歯茎の接触が長期間持続していると歯肉癌などの原因になることもあります。噛み合わせが無い歯をそのままにしておくことがよくないのはこういう理由です。伸びてしまった歯が噛み合わせをずらしてしまう可能性もありますから放置されない方がよいでしょう。
抜く理由には何なのか
虫歯
親知らずの一部あ、るいはほんのちょっと歯は見えているがそのままの期間が長くて生えきらないでいる、状態は斜め方向、あるいは真横に近い生え方かと思います。中途半端なままだと先に述べたように虫歯になるリスクがあります。
歯並びを悪くする
それだけでなくて、前の歯を前の方向に押す力を加えてしまいます。前方向に押す力は歯並びを悪くしてしまいます。遠く離れた前歯を少しづつガタガタにしてしまうこともあります。直接的には一つ前の歯に一番力が加わりますから斜めに倒してしまうことになります。そうなると噛み合わせが変わってしまい顎の関節に負担がかかり顎がズレて顎関節症の原因になったりします。
嚢胞
ほぼ埋まっている状況の親知らずで、歯の頭の周りの骨が無くなってしまうこともあります。これを嚢胞と言います。滅多とありませんが経過観察し、大きくなっているようなら摘出した方がよいです。
歯周病
歯周病対策的にも抜歯しておくとよいのです。歯の周りには骨があって歯を支えています。その周りの骨が無くなるのが歯周病です。親知らずの前の歯にとっては後ろに歯があるということは、骨が無いということになります。その歯を支える骨が一部元から無いということですから、歯周病になってしまうと他の歯よりも治すのに条件が悪いということになります。噛み合わせ的にも力のかかるところですから事前に環境を整えておきたいところです。抜歯すれば基本的には骨は回復してきます。(そうでないこともあります。)
抜歯するのに何が大変か
開口度
一番奥にあるのでまずは大きく口を開けていただかないといけないのですが、これがなかなか難しい。顎がカクカク鳴る方は顎関節症の素因があるので、長く口を大きく開けていられません。難しい親知らずは治療に時間がかかります。なかなか大変です。
舌の動き
舌は筋肉の塊で多くの血管が走行しています。切開や歯の削合が必要な場合、舌を動かさずにおいておけない、舌の下の底の高さが上部にある方は舌を押さえなくてはなりません。
麻酔の効き
上顎は比較的麻酔が効きやすいです。それは骨の性状によります。下顎は骨がタイトなので麻酔が効きにくいことがあります。特に壮年期以上の男性にその傾向があります。通常の麻酔ではなく伝達麻酔という麻酔を行わないといけないこともあります。
歯の癒着
インプラントは骨と結合しますが、歯は結合していません。噛み込むと歯が沈むのがわかると思います。歯根膜という組織が骨と歯の緩衝材として働いています。言葉の表現になりますが、接合というニュアンスでおわかりいただけるでしょうか。年齢を重ねていくと接合ではなく結合のように歯が骨と癒着します。若年者だとそんなことはあまりありません。癒着をおこすと抜歯は極めて困難です。
下歯槽管(神経との近さ)
下の親知らずの近くには下歯槽管という神経と血管が走行している管があります。また内側の歯茎の中にも神経が走行しています。それらとの近接具合があまりに近いと傷つけないようしなければなりません。
上顎洞(鼻との近さ)
上顎の親知らずの根の部分には副鼻腔という組織が近くにあります。抜歯するとその部分と口が貫通してしまうこともあります。その場合は歯茎で塞ぐ処置を講じます。
親知らずの生えている方向
真っすぐ生えて入れ歯よいのですが、生えている方向が斜めだったり、横向きだと歯を削って分割して抜きやすいようにしてから抜歯します。親知らずの生えている深さによっては歯の削合がとても大変で、道具が届かないこともあります。
見えやすさ
歯の切断が必要になった場合、下顎は比較的術者からは見えやすいのですが、上顎はとても見えずらいです。前の歯に隠れれてしまうからです。
道具の届きやすさ
奥に合って、親知らずの位置が深部にあると抜歯する道具が届きづらいです。お口を開けていられないとますますです。
歯の大きさ 根の湾曲度
通常親知らずは退化していく傾向にあるのですが、残す歯以上に大きな歯があります。その歯を分割しないといけないなら開口度とも関連しますが時間はかかります。歯の根でも、真っすぐな歯、曲がっている歯、いろいろあります。真っすぐな根ならよいのですが、曲がっているとフックのような作用をして骨に引っかかって抜きづらいことも多々あります。
抜歯するメリット
ここまで大変さについて色々記載しました。親知らずの抜歯を検討されている方にとっては、えー、っと考えさせられることばかりでしょうか。それを差し引いても抜歯をしておくことのメリットはあります。
残すべき手前の歯の保存に大きく寄与する
磨きやすさを手に入れることで歯周病対策しやすくなる。
噛み合わせの原因の一つを取り除くことができる。
(矯正治療の事前準備)
です。
口腔外科で治療するメリットは安全性
当院で治療が可能かどうかを以上の事柄をレントゲン写真、口腔内の状況を鑑みた上で精査してます。親知らずの抜歯を口腔外科で行ってもらうことも多々ありますが、それは患者さんにとっての安全性を一番に考えているからなのです。