矯正治療では咬み合わせが悪くなった歯並びを整え、しっかりと咬み合うように歯を動かす治療を行います。審美的な目的ではなく、健康回復のための治療とお考えください。
歯の移動には矯正装置を使用し、顎の骨や歯を時間をかけて徐々に理想の位置へと動かしていきます。
矯正治療が必要な方
叢生(そうせい)
叢生(そうせい)とは歯と歯が重なり合うように生えてきている状態です。
歯が複雑に重なり合ってしまっていると、ご自分で歯を磨く際に歯と歯の間の食べかすや汚れを落とすことが難しくなってしまい、虫歯や歯周病になりやすくなってしまいます。
乳歯が多い子どものうちは矯正装置を用いることで顎を広げて、歯が綺麗に並ぶようにスペースを作ります。歯が生え揃った大人は歯を抜くことでスペースを作ってから歯を動かして歯並びを整えます。
八重歯も叢生に含まれます。
出っ歯
出っ歯は上顎が下顎よりも前に突き出た状態であり、口をしっかり閉じることができず隙間が空いてしまいます。
下顎が上顎にくわべて十分に成長しなかった、上の前歯が傾き過ぎているなどが主な原因です。(日本人は下顎の劣成長が多いです。)
口を閉じることができないと口の中が乾燥してしまい、虫歯になりやすくなったり、口臭が強くまったりします。
子どものうちは矯正装置を用いて上下顎を永久歯がきちんと並ぶ大きさに大きくする治療を行います。下顎を前方へ成長させることで出っ歯を改善します。大人は歯を抜くことでスペースを作ってから歯を動かして歯並びを整えます。ることが一般的ですが、下顎を前方に誘導して出っ歯を解消できる可能性があります。まず抜歯せずに問題を解消できるか検討します。
受け口
上顎よりも下顎が前に出てしまっている状態を受け口といい、人と話すときに発音がしづらくなってコミュニケ―ションを取りづらくなります。
顎が成長中の子どもは、矯正装置を用いて上顎の成長を促すことで顎の位置の改善を目指します。近年は負担が少ないマウスピースを使った治療が一般的になってきています。
大人の場合、上と下の前歯がぴったり合うところまで下顎を後ろに下げることができれば、矯正装置で受け口の改善を図れますが出来ない場合、顎の骨を切断する外科処置で問題を解決する可能性が高くなります。
すきっ歯
「すきっ歯」は、文字通り歯と歯の間に隙間があいている状態のことを指します。歯の大きさに比べて顎が大きいです。歯の隙間から空気が漏れてしまい、発音がしづらくなります。
矯正装置で歯を動かし、歯と歯の隙間を縮める治療が一般的ですが、後戻りしやすいのが特徴です。
開咬
上の前歯と下の前歯が空いていて前歯が噛んでいない噛み合わせです。舌足らずなしゃべりになります。上下の前歯の隙間に舌を入れないと嚥下が出来ないので治療と共に、舌の訓練を行わないと後戻りして、また隙間が空いてしまいます。
矯正装置の種類
ワイヤー矯正
もっとも使われる矯正装置の一つです。
薄くて頑丈で、比較的短い期間に安価に治療を行うことができますが、装着中の様子が目立ちます。歯ブラシしづらく口腔清掃状態にもよりますが、虫歯のリスクが比較的高いです。唇や頬の違和感があります。
(当院では取り扱っていません。)
舌側ワイヤー矯正
歯の裏側にワイヤーを通して行う矯正です。見た目は治療前と変わりません。舌触りが気になる可能性があります。
(当院では取り扱っていません)
マウスピース矯正
ワイヤーを使用しない透明なマウスピース型の矯正装置です。
決められた日数、時間装着していただきマウスピースを交換していきます。
ご自身で取り外しが可能で、端から見てもほとんど気付かれることがありません。
お口の状態によって適用できないこともありますが、現在ではワイヤー矯正と変わらない適応範囲になっています。ただしきちんと自己管理できないと治療が上手くいきません。1日22時間以上装着します。必要に応じて矯正用のゴムを使用するなどが必要になるからです。当院での矯正治療はマウスピース矯正となります。
部分矯正
1本~数本の歯並びだけを整えたいという場合に適した矯正治療です。
部分的な動きになるので適応は限られます。補綴治療を行う際に行います。
大人と子どもの矯正治療の違い
矯正治療は子どもが受けるもの」と思われがちなのですが、実は様々な年代の人が受けられます。 ただし、子どものうちは歯や顎が成長段階にあるため、歯を動かしやすく、「矯正は子供のうちに行った方がよい」と言われています。
歯や顎の成長が終わっている大人の場合、歯を少し削ったり、抜歯を行うことで歯を動かすスペースを作ります。また状態によっては小さな外科的手術を行い顎の骨を左右に拡大する装置を用いる場合もあり、子どもと比べて治療が大掛かりになりがちなため、患者さまのお身体はもちろん、費用・治療期間の負担も大きくなることあります。
個人や家庭の事情もあるとは思いますが、治療にかかる負担を考えても、大人になってから矯正治療を行うより、歯や顎が成長しきっていない子どものうちに取り掛かる方がよいといえます。
お口の気になる小さなお子様がいる方は歯科医院を一度訪れていただき、相談してみてください。矯正治療が必要なのかどうか、タイミングはいつがよいのかなど、早めに情報を知っておくことで事前に準備ができます。定期的に受診することで時期を外さず治療に取り掛かることが可能です。噛み合わせが健康維持に大きく関与しています。
また大人の場合でも、長年ご自分の歯並びや噛み合わせなどの悩みがある場合、歯科医院で診察を受けてみてください。歯並びは自然に治ることはなく、放置してしまうとより悪化してしまいます。歯並びは、全身の身体の不調和に影響していることもあり、歯並び以外の恩恵を受けることがよくあります。健康のために噛み合わせを矯正治療しておくことは健康寿命を延ばす大きな要因であると私は考えています。
よくある質問集
ガタガタなのは下の前歯だけなので(上の前歯だけ)そちらだけ治療できませんか?
部分的に治療することは、診断の上になりますが可能です。歯を並べるだけのスペースが無いと、歯を削ったり抜いたりしないと歯は並びません。なるべく削らず抜かずという方針にすると噛み合わせを変える必要が出るかもしれません。上下トータルの治療の方が治療計画に柔軟性を持たせることができるので、より良い結果を得られる可能性が高まります。
健康のための矯正治療って何ですか?
歯を綺麗に並べて水平的な連続性を持たせる
上下の噛み合わせを整えてズレなく垂直に力を伝える
下顎を適正な前後的な位置において姿勢を安定化させる
そうすることで脳へ伝わる衝撃を和らげ脳を守る。そして機能を最大化させる。子供においては正常な脳の発達をさせる。本当の矯正治療の目的はそれに尽きます。
いくつまで矯正治療できますか?
いくつになっても矯正治療はできます。歯が骨と癒着していたりすることも稀にありますが、歯は動きます。若年者とは違いダイナミックな動きや顎関節の適応はやや難しくなります。