顎関節症とは
口を動かすと顎の関節から音がする(カクっと鳴る、ジャリっと鳴るなど)、顎の骨に痛みが出る、口が開けにくいといった症状はありませんか。
心当たりがあれば、顎関節症を患っている可能性があります。
実は顎関節症はとても一般的な病気で、軽度の症状を含め2人に1人は発症するといわれています。
女性が発症しやすく、男性と比べ患者数が2~3倍になるのも特徴です。
顎関節の音が鳴る理由
顎関節には、下顎骨(下顎の骨)と側頭骨(頭蓋の一部)の間に「関節円板」と呼ばれる軟骨組織があります。この円板は、顎の動きをスムーズにするためにクッションの役割を果たしています。
口を開けるときに下顎骨が前方に動きますが、関節円板がずれたり、適切に動かなかったりすると、顎の動きが引っかかり、円板が突然元の位置に戻る際に「カクッ」という音が生じます。
顎を開け閉めする際に関節が正しい動きから外れると、突然関節が正しい位置に戻る際に「カクッ」と音が鳴ることもあります。長期にその状態が続くと関節円板、関節頭の変形を招きます。
顎関節症の主な原因(噛みしめによるものが6割超です。)
- 噛みしめ(顎の筋肉が常に使われている状態になり、これが痛みや炎症につながります。)
- 歯ギシリ(音のしない歯ぎしりもあります。)
- 歯を強く、くいしばる(力仕事をして歯をくいしばる。特別な行事で緊張してくいしばった。一日中スポーツをした。(唇は閉じていても歯は噛んでいないのが普通です。)
- 加齢による咬合高径の低下
- 精神的な緊張・ストレスによる表情筋の強張り(無意識に歯を食いしばったり、筋肉が緊張しやすくなります。これが、顎周辺の筋肉や関節に負担をかけ、痛みや不快感を引き起こすことがあります。)
- 頬杖などの日常生活やうつぶせ寝などの就寝時の悪い姿勢
- 不正咬合(出っ歯、開咬、受け口など)
- 入れ歯や歯のかぶせものや入れ歯が体にあっていない(良くない噛み合わせ)
- 口を大きく開ける、硬いものを噛む(アゴの酷使)
- 噛む歯が左右どちらかにかたよっている噛み癖(片側の歯が悪いため食べ物を反対の歯だけで噛むなど)
- 不安因子がある、うつ、睡眠障害(ストレスで夜よく眠れない)
- 事故による外傷や顔面打撲(顎に直接衝撃を受けた場合、顎関節やその周辺の筋肉が損傷することがあります。)
- 姿勢の悪さ(首や背中の姿勢が悪いと、顎に不自然な力がかかりやすくなります。例えば、長時間のデスクワークやスマートフォンの使用で前かがみの姿勢が続くと、首から顎にかけての筋肉に負担がかかります。)
- 顎関節内の不具合
- 関節リウマチなどの病気(全身の関節に影響を与える病気が、顎関節にも問題を引き起こすことがあります。)
当院での顎関節症の治療
- 1.検査や診察などで顎関節についての症状を調べ、日常習慣や姿勢をチェックします。
- 2.レントゲンで顎の骨の状態を確認します。歯のすり減り、顎の関節の変形がないかなど確認します。
補助的な治療として
顎関節のストレッチ
筋肉をほぐし関節の動きをよくする運動
顎の筋肉をほぐしたり、関節の動きをよくしたりする運動を続けて、顎関節の位置や動きを改善する方法を用いることもあります。
主な運動としては、少しずつ大きく口を開けてあごの筋肉をほぐす大開口練習、ずれた関節内の組織を元に戻す円板整位運動、顎の関節の動きをよくする下顎頭可動化訓練などがあります。
下顎の抵抗運動
- 1. 手のひらを顎の下に当て、軽く上に押し上げるようにします。
- 2. 下顎をゆっくりと開けようとしながら、手で軽い抵抗をかけます。
- 3. 5秒間この状態を保ち、次に5秒間リラックスします。
- 4. これを5回繰り返します。
下顎の側方運動
- 1. 手のひらを顎の側面に当て、軽く押し込むようにします。
- 2. 下顎をゆっくりと横に動かそうとしながら、手で軽い抵抗をかけます。
- 3. 5秒間この状態を保ち、次に5秒間リラックスします。
- 4. これを左右各5回繰り返します。
マッサージ
最近は、マッサージによって顎関節症を改善させる治療が普及してきました。顎の周辺にある筋肉を覆う組織「筋膜」に着目し、マッサージでほぐす方法です。 顎関節症になると、顎の周辺の筋膜が癒着してこわばり、痛みが生じていることもあります。具体的には理学療法士が手技を用いて顎や首、肩の筋肉や関節を緩めていくものです。筋肉のトリガーポイントを緩和し、関節の動きを正常化させます。また、頭蓋骨や顎関節の動きを整えることで、痛みを軽減することが期待されます。(当院で対応していません。)
日常生活で気をつけること
口を大きく開けることをできるだけ避ける
固い食べ物やガムなどを避ける
頬杖をつかない
噛みしめないように常に気をつける
うつぶせ寝をしない
片側噛みしない
治療の注意点
顎関節症の原因は、ほとんどが噛みしめによると言われています。対症療法では根本的な治療にならず、再発を繰り返すことが多いです。
噛み合わせが原因であるとマウスピースなどを用いて診断できた場合、咬合の再構築(被せ物の全体的なやり替え)や矯正治療(歯並びの矯正)などが必要となります。マウスピースの装着だけで根本的な原因が取り除くことはできません。
顎関節の痛みが噛み合わせでないと診断した場合には、顎関節そのものの問題である可能性がとても高いので、病院の口腔外科で加療していただくことになります。(関節内への外科的なアプローチなど)
▲※ 土曜日 9:00〜13:00 / 14:00〜17:00