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12人掛けのシートに14人座ることはできますか?
電車に乗ると、横に長いシートがありますよね。14人が掛けられるシートは現実の電車にはないですが、歯は上顎14本、下顎14本あるので、例え話をするのにそんなシートをイメージしてください。(親知らずがあれば16本ですが、それはこの際置いておきましょう。)大人14人掛けだったら大人14人座ることはできます。
1人1人の横幅が大きいと座れないかもしれません。
歯の大きさも大きい人、小さい人、個人差があります。14人掛けでも大きい人ばかりだと14人座れないかもしれません。ちょっと前に座ったり、ズラしたり、はみだしたら全員座れるかもしれません。でもちゃんと座れていないですよね。みんなスリムになれば座れるかもしれません。平均的より大きな歯であれば、平均的な大きさにすれば並ぶかもしれません。
全員子供なら座れる
数名だけ子供がいたら少し余裕ができるかもしれません。座れます。14人とも子供なら隣との間隔が空きますよね。これがすきっ歯です。すきっ歯でもう一つ考えられるのは、もともと16人掛けのシートだった場合です。もともとのシートが大きいので14人ゆっくり座ることができるのです。隙間を埋めたいのなら詰めればよいので比較的治療は難しくありません。ただし人間キチキチはいやで、余裕を持ちたくなるので、少しずつ間隔が空いてくることが多いです。後戻りへの対処が重要となってきます。
12人掛けのシートにきちんと座りたい。
きちんと座るにはどうすればよいでしょうか。ひとつの方法は先ほど述べました。ダイエットにも限界があります。無制限に歯を削ることはできません。では何ができるか考えてみます。
方法1
14人のうち、2人別の車両に移ってもらう。シートの大きさは決まっていますからやむを得ませんよね。歯の場合は抜歯することで並べていくということになります。それでもキチキチであればダイエットも取り入れることと組み合わせることが必要になります。逆に余裕ができ過ぎることもあります。
方法2
補助椅子を探してくる。普段はテーブルの下に格納してあって、スライドさせると必要な時にテーブルの面積を増やせるものがありますよね。あんな感じですかね。簡単に言えば、顎を全部の歯が並べるくらいに大きくすれば並びます。ただしこれは成長が見込める時期限定です。成人では基本的にはできません。
MSEという手立て
成長の終わった成人の上顎を、横方向に拡げる裏技があります。上顎限定です。上顎に4本の小さなインプラントを装置と組み込んで左右に拡げていくものです。上顎の骨の厚さなどで結果は左右されます。残念ながら当院ではまだ取り組めていません。12人掛けのシートの真ん中を切ってスプリングを使って左右に拡げて14人座れる幅を確保します。空いたところには骨が少しづつ出来ます。簡単に言えば、上顎の骨の成り立ちから上顎にのみ適応できます。
成長期の抜歯矯正は避けたい
出来る限り抜歯をせずに歯並びを改善していくような計画をあれこれ考えて治療するのですが、誰にも予測できない成長の結果やむを得ず、途中で抜歯になることもあるとお考えください。できることできないことがあります。とはいえ、上下の顎のバランス、顔貌のバランスを考えると抜歯はせずにいきたいものです。
顎を正しく成長させておけば抜歯は回避できます。
12人掛けのシートを14人掛けに出来ていれば、問題なかったのです。正しい成長ができていれば歯の数余裕をもって並べます。上顎の成長のピークは10歳前後です。下顎はそれから少し後がピークになります。乳歯だけの時の歯並びは、すきっ歯で、上下の前歯の先端同士がぴったり噛んでいるのが正しい噛み合わせで正しく成長している証拠です。乳歯の段階で歯並びが悪い、キチキチに生えている、噛むと下の前歯が見えない、という状況では、様子を見ていっても変わりません。永久歯に生え変わっていっても歯並び、噛み合わせは悪いままです。
乳歯列のうちに既に歯並びが決まっている
子供のうちの歯並び、噛み合わせは上顎が正しく成長していないことが原因です。(劣成長)上顎が小さいから下顎が上にブロックされて大きくなれないのです。上顎の上には鼻があります。上顎が小さいと鼻も大きくなっていませんから、鼻詰まりや口呼吸の原因になります。鼻で空気をろ過して感染を防いでいるのですが、口にはろ過する機能がありませんから、扁桃腺がその機能を少し代行しますから、本来の機能ではありませんから口呼吸していると扁桃腺が腫れたりします。
上顎の成長のピークは10歳前後
上顎の成長は、頭蓋と同じように成長します。 産まれた時の頭位の平均は33cm、半年で48cmになります。半年で1,5倍です。メチャメチャ大きくなります。3歳で50㎝ほぼ完成に近くなります。 頭とか神経の成長率はとんでもないくらいロケットスタートがかかり、どんどん率は下がっていきます。上顎は下顎と違って頭に近いですから10歳くらいでおよそ完成します。10歳を越えると背がぐんぐん伸びていきます。下顎は頭というより体幹と同じ成長に近いです。下顎は上顎と違って、10歳からまだ成長します。上顎と下顎の成長のピークは異なります。
小学校4年は区切りの年
10歳までに、上顎にすべての永久歯が並ぶくらいの大きさにしておくべきという趣旨で述べてきました。またその兆候は乳歯だけの歯並びの時からあるともお話しました。いつから始めるか、という問いには、気づいたらその時から、というのが本当のところです。顎を大きくすることが大切です。まずは
鼻の治療
食育
MFT
トレーナー矯正
鼻の治療は
鼻の中の通りが良くないと鼻呼吸できません。ですから小さいうちに、鼻に起因する疾患を取り除き鼻呼吸できる環境を親として整えてあげることが大切です。
食育
前歯を使って噛む食事をすることで、前歯周辺の骨に刺激が与られて、その刺激が上あごの成長を促すことにつながります。前歯の上に当たる脳は前頭前野と呼ばれていて、考える力、コミュニケーションを司っています。前歯の刺激がその部分の活性化につながります。絶えず刺激を与えることで脳も活性化されるのです。食事はとても重要なファクターです。
MFT
哺乳の仕方 離乳食の与え方が口腔、鼻腔の成長の方向、機能の獲得の有無を決めています。何度かコラムで記載しているところですが、その時期に戻ることはできません。口ポカンを無くし、正しい舌の使い方、適切な唇の使い方などを、口の周りの体操を取り入れて獲得しなければなりません。その訓練のことをMFTといいます。家で毎日する訓練ですからついついサボってしまいがちですが、獲得できなかった機能を取り返すと思って頑張りましょう。
トレーナー矯正
T4Kとかプレオルソといった、夜間と家にいる時の2時間口に装着する装置です。この装置を用いることで鼻呼吸を覚え、舌の定位置を体得し、嚥下訓練になります。鼻に問題がないことが前提です。ある程度顎も大きくなります。歯並びを整えるというよりは、機能回復のための装置です。乳歯や乳歯と永久歯の混在する時期にいわゆるワイヤーによる矯正器具を用いることはなかなか難しいと思います。小さい子供のうちに出来るだけのことをやっていきましょう。
10歳は過ぎている場合はどうするのか。
ピークは10歳と書きましたが、女子は15歳、男子は18歳くらいまで僅かではあるが成長はまだあります。顎を少し大きくできる可能性があります。萌出している歯に矯正力を加えることで骨に刺激を与え、前方と側方に拡げるという意図をもって矯正治療を行うようにしています。ガタガタな歯並びでも、まずは抜歯を避けるための方策をとるべきかと思っています。時期が遅れているので、拡げるのにも限度があります。先ほど述べた歯のスリム化(歯の両端を少しづつ削ること)と合わせてガタガタな歯並び(イメージ的には八重歯)を治していきたいと考えています。
思い通りにいかないのも治療です。
こちらの描いた絵の通りに治療が進むとは限りません。思い通りにいかない場合には抜歯して治療しなければならないことも当然あります。成長にも個人差がありますから。きれいな歯並びをリスクなく獲得するには、10歳までに永久歯が並ぶくらい顎を大きくしておく矯正治療を早くにしておくとよいかと思います。