目次
歯周病に現れる症状
日本臨床歯周病学会に表記されている歯周病のチェックリストを参考にすると(少しわかりやすいようにしています。)
1.口臭を指摘された、あるいは自分で気になる
2.朝起きたら口の中がネバネバする、血の味がする
3.歯みがき後に、歯ブラシの毛先に血がついたり、すすいだ水に血が混じることがある
4.よく見ると歯肉が赤く腫れている
5.歯肉が下がり、歯が長くなった気がする
6.歯肉を押すと血や膿が出る
7.歯と歯の間に物が詰まりやすい
8.歯が浮いたような気がする(どこかの歯が良よく当たるような気がする)
9.歯並びが変わった気がする(ガタガタしてきた)
10.歯が揺れている気がする(食事中に気になったり、舌で押すと動くのがわかる)
判定
チェックが0
無症状で歯周病が進行することがあるため、1年に1回は歯科検診を受けましょう。
チェックが1~3個の場合
歯周病の可能性がある。
チェックが4~5個以上の場合
中等度以上に歯周病が進行している可能性があります。
とあります。5と7についてですが、加齢と共に歯を支える骨と歯茎は少なくなって下がりますから、必ずしも歯周病というわけではありません。ただ年齢不相応に歯茎が痩せて、複数の他のチェック項目がある場合は歯周病の可能性が高くなります。
歯周病の原因、それが歯垢です。
お口の中には約400~700種類の細菌が存在しています。必要悪みたいなもので、これらがいてくれないと他の細菌や真菌が繁殖してしまいます。人の命を脅かさない程度の細菌が口の中にいることで、それ以上に人に害を及ぼしかねない細菌の侵入を防いでいるのです。口腔常在菌と言います。その中には虫歯菌、歯周病菌が含まれます。ですから普段あまり悪いことをしません。現代では砂糖の入っていない食事はおそらくないと思います。砂糖を元にして歯周病菌がネバネバした物質を作り出します。これを歯垢(プラーク)と言い、歯の表面に付きます。粘着性が強いのでうがいする程度では取り除くことはできません。取り除きにくいのは、歯と歯の間、歯と歯茎の境目、義歯の金具のかかっている歯、ブリッジの歯の無い部分です。充分ブラッシングができて歯垢がきちんと取り除かれていれば問題はありません。この歯垢1mgの中には約10億個の細菌が住みついていると言われ、むし歯や歯周病をひき起こします。その中でも歯周病をひき起こす細菌が多く存在していると言われています。歯垢がきちんと取り除かれていないと、歯垢の中の細菌によって歯肉に炎症をひき起こします。炎症が続くと歯を支えている骨が少しづつ溶けていきます。歯を支える骨がなくなっていくので、歯が揺れたり、歯茎が下がったり、噛みにくくなります。この病気を歯周病と言います。進行が続くと結果的に歯を失います。
歯石って何
歯垢は取り除かなければ硬くなってそのまま残り、歯石と言われる物質に変化し歯の表面に強固に付着します。ブラッシングだけでは取り除くことができません。この歯石の中や周囲に細菌が入り込み、歯周病を更に進行させる毒素を出し続けていきます。細菌の住処がどんどん増えていくのです。歯石もよくありませんが、元は歯垢です。歯垢の付着をしっかりとブラッシングして取り除くことが出来れば歯石はできません。ハブラシは毎日しっかり磨いているはずなのに歯周病と言われた方もいらっしゃるでしょう。歯垢を完全に取り切れていますか?磨いているのと磨けているのは大きく違うのです。
歯周病は骨が溶けているのです。
骨が溶けるって、すごいことが起きていると思いませんか?気づかない内に進行して指先が少しづつ短くなって、ある時短いのに気づいたらどうですか?何とかしたいと思いませんか?無くなったらその時考えればよいですか?というか、そうならないように普段からケアしないといけないと思いませんか?もし気づいた時にすぐに治療に取り掛かって、骨が細くなっても、多少短くなっていても、だいたいの形が残れば機能を維持したいと思いますよね。毎日よく手入れし、定期的なプロフェッショナルケアをすることで骨を守れるなら、頑張れると思いますがどうでしょうか?
悪くなったらまた来ます、でいいのですか?
歯はそういう風に思われない方が、残念ながら本当に多いです。悪くなるのは当たり前と思っています。年だから仕方ないですよね、と言われる方もあります。歯周病は老化で起きるものではありません。歯周病は防げるものです。悪くなったと自覚する時は骨が溶けて抜歯になることがほとんどです。平均寿命まであと何年ありますか? 自分だけでは出来ないので、定期的にプロが補うのです。医院だけの治療で完結しないのが歯周病です。自分で健康を維持するという強い意志、自ら進んで定期的に健診を受ける、くらいの心構えでないと歯周病は治りません。
歯周病の治療は何をするのか
歯周病治療の基本は
歯垢を付けないこと しっかり歯垢を取り除くこと
歯石を取ること
これに尽きます。今までのブラッシングで歯垢が取り切れていないので、ご自身でできるだけの歯垢の除去行っていただくブラッシングを覚えて、毎日励行してもらうことが第一になります。歯科衛生士と二人三脚で歯垢除去率を限りなく100%に近づけていきます。歯ブラシだけでは難しいので、補助的清掃具を用いることがほとんどです。歯間ブラシ、フロスと呼ばれるものです。これらの使用も多少のコツがいります。それができると、あるいは並行して歯石の除去を行います。先ほど述べたように自分で取れないのが歯石です。これを医院で、主に衛生士が行っていきます。付着の仕方で回数は異なります。沢山付着している方は回数がかかります。
歯周ポケットとは
歯と歯茎には隙間があります。口の中に出ている部分の歯にも歯垢、歯石は付きますが歯周ポケットの中にも付きます。口の中に出ている部分の歯垢、歯石は除去しやすいのですが歯周ポケットの中の物は除去しづらいです。歯周ポケットも浅ければ、歯の根に付いた歯垢、歯石は除去しやすいのですが、深くなるとなかなか除去しづらいです。歯垢は歯茎の炎症が治まるとポケットが減少するのでブラッシングで除去できるようになりますが、歯石の除去はなかなか難しいのです。
歯石を取るために歯茎の手術をする
深い歯周ポケット内にある歯石を通常の治療で除去できない場合は、目で見えるようにして取るようにします。嫌な言い方になりますが、歯の周りの歯茎を切って歯が直接骨に植わっている状態にして、直接目で歯石を確認できるようにしてから歯石を除去するのです。要は見えるようにして歯石を除去するのです。保険でも認められている普通の治療です。外科的なことをせずに歯石を取り切れたらよいのですが、歯周病の進行があるとやむを得ず行います。歯を抜くのではありませんから想像されるよりも痛くはありません。鎮痛剤で対応できるくらいです。(個人差はあります。)歯茎が下がりますから、今まで出ていない歯の根が口の中に出るので、しみるという副作用が出ることもあります。
外科処置したらそれで終わり、ではない
外科処置をして歯石を取り切っても、歯垢や歯石の除去ができないと歯茎の炎症は起こります。ちゃんとケアし続けないと、歯周病はまた進行を始めます。歯石を徹底的に除去しても終わりではありません。一生お手入れを続けていかなければなりません。せっかく良くしたのに、また外科をしたいですか?歯周病治療のための外科処置はある意味必須な処置です。必要なら取り組むべき治療です。
抜歯したらインプラントすればいいや、と思っていませんか?できないことがほとんどです。
インプラントは骨に植えます。骨がないと出来ません。歯周病で骨が無くなっていたらインプラントはできません。もしインプラント出来たとしても歯周病と同じくインプラント周りに歯垢がいっぱい付いていると、歯茎に炎症が起きるので、骨が失われ揺れてきます。手入れは自分の歯以上に必要になります。入れたら終わりではないのです。