最近こんなことはありませんか。
噛めない、噛みにくい食べ物がある
歯が抜けたまま放置している
滑舌が悪くなった
舌の表面がピンク色でない
口臭が気になる
口が乾いている
飲み物や汁物でむせることがある
食事に時間がかかり疲れる
歯の間によく食べ物が詰まる
飲み込んでも食べ物が口に残る
食事を食べこぼすことが増えた
これらのうち3つ以上思い当たる場合は口の機能が加齢により低下している可能性があります。この状態を放っておくと要介護状態につながる危険性が大きくなりますので、早めに対処した方がよいです。というのは口の健康が全身の健康にも大きな影響を及ぼしていることが明らかになってきているからです。健康的な生活を維持するためには適切な方法で歯と口の健康管理を適切に行う必要があります。人生100年時代を健康に過ごすためには自分で行うセルフケアと歯科医院でのプロフェッショナルケアを併せて行い、生涯にわたって歯と口の健康を保つ口腔健康管理を実践することが重要です。
加齢による歯と口に現れる特徴
噛む力、飲み込む力が低下する
食べ物を噛んで飲み込む過程には舌や口周りの筋肉が関わっています。それらの筋力が衰えて飲み込む力が低下すると飲食物が誤って気管に入って、むせたり誤嚥性肺炎を引き起こしたりします。若いうちは異物を排出する筋力があったり、抵抗力が強いですから悪化することはさほどありません。また歯がグラグラしたり、歯の本数が減ったり、入れ歯が合わなかったりすると食べ物を嚙み砕きにくくなり咀嚼機能が低下します。ブリッジや義歯など歯を削って修復することは極力避けて、失った部分をインプラントで修復する方が、一時的に費用は掛かりますが、残った歯を長持ちさせられる可能性が高くなります。
唾液の量が減る
唾液は口の中を潤わせることで、飲食物に含まれている酸によって溶けた歯の表面を修復したり、歯肉や粘膜の乾燥を防いで傷つくにくくしています。咀嚼した食べ物を飲み込みやすくし、消化を手助けするなどの大切な役割がたくさんあります。唾液が加齢で減少するのは噛む力の低下、薬剤の影響、唾液腺(唾液を作る細胞)の減少などで唾液の分泌量が減るからです。唾液が出にくくなると口の中が乾燥し、虫歯や歯周病、義歯が擦れて歯茎の痛みが出やすくなったりします。薬剤による唾液分泌量の低下は、薬剤の変更により改善されることもあるので、担当医さんと相談されるのもよいでしょう。
舌の機能が低下する
舌の主な働きは食べ物の摂取と味覚です。下の表面にある1万個ほどの味蕾という細胞で味を感じて唾液の分泌を促しながら食べ物の消化と吸収を助けています。舌は噛み砕いた食べ物を咀嚼して、飲み込みやすい形これを食塊というのですが、口から喉に送るという重要な働きをしています。加齢によって舌の動きが衰えると、噛んで、食べ物を飲み込みやすい形に整えて、飲み込むという一連の動きに障害を生じます。舌の動きは若いうちから簡単な運動で訓練できます。具体的にはあいうべ体操です。毎日大げさに、声を出さなくてもよいので口周りを動かしてみてください。また味蕾細胞も減少していきますから味を感じにくくなり食事が味気なくなり、楽しみが減ることにもつながります。こればかりはやむを得ないところです。
歯がすり減る
長年にわたる食事や歯ぎしり、歯の噛みしめなどが原因で自覚症状がないまま歯の表面を覆うエナメル質が擦り切れ、象牙質と呼ばれる歯の内部を構成する組織が露出してきます。この状態が進んでいくと知覚過敏や歯の神経が見えるようになってきます。象牙質はエナメル質に比べて虫歯への抵抗力が低く、虫歯になりやすくなります。歯の先端部だけでなく歯と歯茎の境目の歯もえぐれるようにすり減ります。同じように知覚過敏の原因になります。
歯茎が下がる
歯茎も加齢と共に退縮、歯茎が下がっていきます。歯が伸びてきた、と言われる方もいます。元々の歯の根の部分が露出してきます。歯の形は逆三角の形ですから、歯茎が下がると歯と歯の間がに隙間ができます。食べかすや歯垢が溜まりやすくなります。上手くケアできていないと磨き残しが常にあると虫歯や歯周病になりやすくなります。一度下がった歯茎は元に戻りません。特に汚れが慢性的に残っていると歯茎の下がり方は激しくなり、歯がグラグラしやすくなります。
噛めなくなると食欲低下、栄養低下を招く
歯がグラグラする、歯の本数が減る、入れ歯が合わない、などあれば食べ物をしっかり噛めなくなると、唾液分泌量の減少と相まって食べようとする意欲が減っていくことも考えられます。このことで栄養の面で問題が起きかねません。
健康長寿を目指して今から
セルフケアとプロケアを
歯と口の機能は加齢により変化します。いつまでも昔と変わらないと思いたいですが、誕生日が来た時には年齢はわかりますよね。そろそろ気を付けないと、と年に一度は年齢を意識して、変化に応じた口の健康管理を思い出してください。
セルフケアで行うこと
フッ素入りの歯磨剤を使用したブラッシングと、デンタルフロスや歯間ブラシを使った歯間ケアが基本となります。回数は少なくとも朝晩2回食後、できればお昼も、です。歯茎が痩せて根元の隙間が広がっている場合にはその部分に歯垢が残ります。その部分のケアが虫歯、歯周病にとても大切です。必ず歯間ブラシかフロスを行ってください。それで歯茎が下がったとおっしゃる方がいらっしゃいますが、歯茎の炎症が治まって歯肉が引き締まったからです。無理に大きな歯間ブラシを入れると歯茎に傷がいって歯茎が下がることもありますからそこだけは注意してください。
菌血症
虫歯と歯周病の進行により口の中で増加した原因菌が血液に入りこんで全身を巡り、心臓病や脳卒中の発症に影響を及ぼしていることがわかってきています。磨き癖やセルフケアだけではどうしても磨き切れない部分があります。自覚症状が無くても、セルフケアだけでなく、定期的なプロフェッショナルケアも必要です。
義歯もお手入れしてください。
入れ歯にも汚れは付きます。汚れが残ると歯石が付き、雑菌が増えて入れ歯の内部に蓄積します。清掃不十分な入れ歯は、口臭や残っている歯の虫歯の原因になります。食後必ず入れ歯を水で洗い流し、うがいをしましょう。一日一回はブラシを使ってしっかり汚れを落とすことも必要です。特に部分入れ歯を使用している場合は入れ歯を支えている歯の周囲に歯垢がつきやすいため虫歯になりやすいです。念入りに歯を磨くことを心がけてください。その上で、できれば週に何度か義歯洗浄剤を用いてください。
きちんと噛める環境作りで機能の維持
年齢と共に誰もが要介護や認知症になる可能性があります。そのような状況になる時期をできるだけ遅らせるには自ら食べ物を咀嚼し、嚥下するという口の機能を維持する、急速な低下を防ぐよう努めましょう。施設に入られている方の多数は8020を達成されていないとの報告もあります。グラグラの歯で8020を達成できていてもそれでは歯の機能は発揮されません。入れ歯になってもよく噛めていれば健康寿命は維持されています。
歯を失っても食べることは積極的に
加齢と共に様々な原因で歯を失うこともあるのですが、放置することなく噛む機能を低下させないことが口全体の機能低下を防ぐことになります。失った部分はなるべく歯を削るブリッジを避ける。失った部分が多い場合は入れ歯になりますが、なるべく動きの少ない義歯を作製されるとよいでしょう。