目次
子供の呼吸のためにアプローチする3つのこと
1 口呼吸(鼻腔)へのアプローチ
2 咬合高径(高さ)へのアプローチ
3 歯列(面積)へのアプローチ です。
口呼吸の原因
低位舌
口腔閉鎖不全
狭い口腔
鼻腔の劣成長
アデノイド
口蓋扁桃肥大 が考えられています。
アデノイドと口蓋扁桃
簡単に言うと、鼻腔と口腔の境目で鼻腔寄りにあるのがアデノイド、口腔側にあるのが口蓋扁桃です。本来空気は鼻腔を通って肺に到達し、肺から呼気を吐き出します。入ってくる吸気には汚染物質やウィルスなどが混じっています。鼻の中の、大きくは鼻毛、小さくは鼻絨毛で、いうなれば、鼻フィルターで空気を綺麗にして肺に空気を送っています。口呼吸すると、空気がフィルターを通さずダイレクトに肺に行くので感染のリスクが高まります。そのリスクを減らすために身体の防御反応として、口蓋扁桃やアデノイドが肥大化していると考えられています。鼻腔の未発達に対する防御反応と言えます。
鼻を大きく育てられるのか
口蓋扁桃やアデノイドは防御反応ですから鼻呼吸することができれば自然に収まってくるかもしれません。それだけを積極的に小さくする術はないです。口呼吸の原因は狭い鼻腔が原因と考えられています。でも鼻って自分で大きくできるものでしょうか。鼻の穴に指を突っ込んで広げても大きくはなりません。ようは後から大きくすることはできません。感受性期、生まれてすぐに始める哺乳を正しく行うことが鼻腔を大きく育てる唯一の方法なのです。
ゴールデンタイムは0~2歳
哺乳が正しく行われていれば口ポカンは無く、構音障害はなく、正しい嚥下を覚え、歯並びも悪くなりません。哺乳するのに舌、唇などの筋肉を上手に使って上前方に負荷をかけることで鼻腔は成長します。正しい哺乳を覚えると正しい舌の使い方を覚えます。舌の先の定位置は上顎前歯の歯と歯茎の境目です。そこに舌先があると上あごに舌が当たりますよね。それが前、側方に押す力となり上顎を大きく成長させるのです。さらに成長と共に歯も萌出してきます。前歯だけだと噛めませんが、噛めるようになってくると噛む刺激が加わります。哺乳するのも噛むことを覚える訓練ですから、噛む力です。舌の力、噛む力、両方あいまって上顎が前方、側方に成長します。
上顎の上が鼻腔です。
上顎が大きくなる=鼻腔が大きくなることです。舌や歯からの刺激がないと前や横に広がらず、下方向に成長します。そうすると鼻腔も上顎も大きくなりません。横から見るとペタンとした顔になります。鼻腔は感受性期の噛む刺激と飲み込む時の舌圧で成長します。頭に引っ付いているのが上顎、下顎には首からの筋肉がついています。上顎の成長は頭の成長に近く、下顎の成長は身体の成長に近いです。何が言いたいかと言えば、成長のピークがズレるということです。先に頭、それから身体です。頭は5歳までに90%、身体の成長のピークは10歳頃です。
過蓋咬合とは
上顎の成長が下方向に向かってしまうと下顎が前に出れなくなります。逆に上顎にブロックされて下あごが後ろに下がってしまいます。過蓋咬合とは。上下嚙み合わせた時に下の前歯が上の前歯で覆い隠されて全く見えないか、少し見えるくらいの噛み合わせのことを言います。大人の場合通常下の前歯が2mmくらい隠れるくらいです。子供の場合は上と下の前歯の先端同士がぴったり合うのが普通です。ということは子どもの過蓋咬合は上顎の成長が下方向に向かっている、哺乳が上手くできていなかったということなのです。少し古いですが、1993年の小児歯科学会の調査では30%の子供が過蓋咬合です。実感として今はもっと多く半分以上は過蓋咬合だと私は思っています。
過蓋咬合の何が悪い
縄文時代の人骨が出土されて、噛み合わせをみると大人であることが多いのですが、ほとんどが前歯の先端同士が当たっている切端咬合という状態です。そういう状態の人間が寿命を全うされているのです。過蓋咬合は切端咬合に比べると高さが無い分、口の中の容積が少なくなります。高さが半分になれば、容積も半分になります。口の中に何があるかと言えば舌があります。舌の置き場が狭くなります。狭いと舌は行き場がないので奥に引っ込まざるを得ません。そうなると気道が狭くなります。起きている時には猫背、就寝時には重力で舌は沈みますからいびきをかいたりします。睡眠時無呼吸症候群の原因にもなります。
睡眠時無呼吸症候群
無呼吸の頻度が高くなると血中の酸素濃度が低下します。脳や心臓に酸素が十分行きわたらなくなりますからCPAPなど睡眠時無呼吸症候群に対して用いるわけです。強制的に酸素を吸入させたり、寝るときに顎が後ろ下がらない(舌が落ちないために)ようにマウスピースをして強制的に酸素を取り入れるようにするのです。これをルーティンにすると使わない筋肉はどんどん萎縮していきます。骨折でギプスして松葉杖などで長くその筋肉を使わないでいると、ギプスを外した時筋肉が落ちてガリガリになってしまうのと同じです。食事とかすべての機能が無くなる訳ではないので、舌が瘦せ衰えることにはなりません。
乳幼児突然死症候群
乳幼児突然死症候群の原因は、哺乳瓶での栄養、両親の喫煙、うつぶせ寝とされています。平成28年度人口動態統計によると、0歳の死亡原因2位は呼吸障害、3位は乳幼児突然死症候群 1~9歳の2位は不慮の事故 です。仰向け寝ならば、舌や下顎を動かして何とかか気道を確保しようとします。うつぶせ寝すると舌を動かさなくても気道は確保されます。でもそのために舌が廃用性萎縮を起こしたらどうでしょう。そのリスクはあると思いませんか。
反対咬合の始まりは過蓋咬合
ちなみにですが、赤ちゃんの反り返りは脳性麻痺や自閉症の可能性が指摘されています。どうして反り返るのか?生きるために気道を確保し酸素を取り入れるためではないでしょうか。酸素を取り入れるための訓練ができていないのかもしれません。過蓋咬合では舌が奥に下がるため呼吸しづらいと書きましたが、下顎を前に突き出せば、口腔内容積が拡がります。そうすることで気道が確保できるわけです。受け口は遺伝も大きく関与していますが、後天的な環境も関与しています。酸素を取り入れるために受け口にしていてそのまま本当の受け口になってしまった、ということです。
指しゃぶりの弊害
指しゃぶりはなるべく早期に辞めるのに越したことはありません。指の入る分だけ前歯の上下か前後に隙間が空きます。そうするとそこから空気が漏れます。舌をそこに入れて発音しますからおかしな発音になります。ものを飲み込む時もそこに舌を入れないと陰圧がかかりませんから飲み込めません。そういう舌の癖が治らないと永久歯になってもその部分が空きます。開咬という状態です。矯正治療でそのスペースを閉じたとしても、舌の筋肉が今までの使い方のままだと元の歯並びに戻ります。これを後戻りと言います。ですから矯正治療と共に舌の訓練をしなければなりません。
でも、指しゃぶりには訳がある
指を上下の前歯に間に入れることによって何が起きているか。指を入れると噛み合わせが高くなりますよね。そうです。呼吸しやすくなるのです。精神的な安心感を得るために行っている面もあります。噛み合わせに問題がなければある程度の年齢、3~4歳までに止めさせた方がよいと思います。噛み合わせに問題があるための指しゃぶりであればすぐに止めさせるのではなくそのための治療を行うべきです。1つの見方です。前歯の先端同士を当てた時に奥歯が空いているのであれば、過蓋咬合ですから、年齢に応じた治療を行いましょう。 イラストは切端咬合です。
子供の歯ぎしり
子供の歯ぎしりも下顎を前に出したくてしているものですから、無理に止めさせることはしない方がよいです。どうしても気になればマウスピースをしますが、日々成長しますからずっと同じマウスピースではなく度々やりかえることになりますが、自然のままでよいかと私は思っています。寝ている時に気になるなら無理やり口を開けることも出来ませんから、頬骨の下辺りを押さえてみてください。子供は寝てしまうと滅多と起きませんから大丈夫です。反射的に口は開くと思います。一時的ですけれど。(笑)