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呼吸位って何でしょう
人には起床時の起きた時の顎の位置の他に、就寝時の顎の位置がある場合もあります。それは呼吸をキープするための顎の位置です。就寝時の顎の役割には歯ぎしりと呼吸があります。歯ぎしりは起きている時のストレスを発散するために行われています。お子さんの歯ぎしりもよく相談を受けますが生理的な行為ですので心配しなくてよいです。何にストレスを受けているのか、という疑問はありますよね。
呼吸とは何でしょうか?
呼吸することは生きること
睡眠時無意識下に呼吸を確保するための生命維持反射が行われています。それはどういうことなのでしょうか。それは呼吸を確保するため、すなわち気道を開大させるために下顎を前にズラしているのです。舌の筋力が落ちると就寝時に舌を前方に維持しておくことができずに気道を塞いでしまいます。ヒトは少々食べれなくても、水が摂取できなくても生きていけますが、呼吸が数分できないと生きることができません。生きていくために寝ている時でも本能で下顎を前に突き出します。気道が狭くならないように下顎を前に出すので歯が削れたり、被せ物が外れたりします。歯を壊してでも呼吸して生きようとしています。睡眠時無呼吸症候群は舌を前に出せないのでいびきをかきます。気道が塞がれるので呼吸が一時的に止まります。いびきは息を吸い込む時に音がします。酸素を取り入れる気道が塞がれているのです。
言われたことない!
歯が明らかに削れているのに、歯ぎしりはしていない!と言い張る患者さんもいらっしゃいます。証拠はあるのにかたくなです。刑事ドラマなどでよくありますよね、私はやってない、身に覚えがない、と。治療の提案をしても受け入れてくれることはほとんどないです。逆切れされたりしてとても悲しい気持ちになることもしばしばです。その方を思っているのに。
寝ている時にできること
寝るときに呼吸しやすい頭位があります。これまでの話からある程度想像できるかもしれません。それは首を反って寝ることです。枕をせずに顎先を突き出すようにして寝ると水平の状態で空気を取り入れる鼻、口と気道が一直線になりやすく呼吸できるようになります。首あたりに枕をして同じように顎先を突き出して寝ても同じなのですが、水平でなくなる分脳脊髄液の循環が悪くなります。
脳脊髄液の働き
脳脊髄液は、脳の周囲を取り巻き、そのまま頸椎から尾骨の骨膜まで覆うようになっています。脳脊髄液が正常に生産、循環、吸収されていると自律神経の働きがよくなります。体が軽くなったり、姿勢が良くなったり、深い呼吸ができるようになったりします。頭部や首のあたりの骨の歪みや筋肉の凝りで脳脊髄液の流れが悪くなると自律神経の働きが悪くなると、脳脊髄液が頭に溜まって頭痛が起きたり脳が萎縮することもあります。
脳の萎縮を解消するには
下顎の位置のズレを上顎と一致させる、噛み合わせの上下の面を整える、噛み合わせの高さを高くする、ことを行うと改善されます。その3つを取り入れたマウスピースを作って、上下に装着します。歯を壊さないように、顎が後ろに下がらないようにして呼吸しやすいような環境を作ってあげればよいでしょう。そこまで考えられたマウスピースを作製するには自費の治療でないとできません。保険の診療のマウスピースでは噛み合わせの高さを高くすることだけのものになります。
口の中の環境を直接変える
矯正治療、補綴治療を組み合わせて、下顎の位置のズレ、噛み合わせの面の修正、噛み合わせの高さの修正を行い、歯にマウスピースと同じ機能を持たせるようにするのが本当は一番よいです。口にそのような機能を持たせても加齢による筋力の低下は防ぐことは誰にもできません。年齢が上がってきたら機能をもったマウスピースを補助的に使うのが理想です。
無呼吸症候群のプレートはよいのか
医科で睡眠時無呼吸症候群の診断をうけた場合のみ、歯科医院で保険診療適用の睡眠時無呼吸症候群用のマウスピースを作製することができます。普通のマウスピースと何が違うかといえば、上顎と下顎のマウスピースがひっついて一対になっているものです。思ったよりも大きなものではありません。下顎を前に出して、前歯の先端同士が当たるくらいの位置に設定します。どうしてそうするかと言えば、下顎が後ろに下がらないようにするためです。舌の置き場が広くなることで、舌が下がらないようにする目的で使用されます。
一時的にはよいのですが
極端に言えば、強制的に顎を前に出しています。そのため舌も前に出るのですが、筋肉自体が鍛えられていない、あるいは筋力が落ちているからすぐ舌がまた落ちていきます。また前に出す、しかももっと前にだすと良くなります。でも舌の筋力は変わらないか、楽を覚えているので舌は前に保持することができず奥に引っ込むという悪循環に陥ります。下顎を前に出すには限界がありますよね。体が自分で何とかしようとしなくなる。これを廃用性萎縮と言います。
睡眠時無呼吸症候群用のマウスピースを活かすには
あいうべ体操
睡眠時無呼吸症候群用のマウスピースが悪いわけではありません。それを活かすには舌の筋トレをすればよいのです。筋トレと言ったって、バーベル持ち上げれないし、何すればいいの?と思いますよね。1つは、あいうべ体操を毎日30セット行うことです。あいうべ体操の効能は今更言う必要もありません。スマホでググってください。唇周りの筋肉、頬、舌を大げさなほど動かすのです。声を上げなくてもよいです。お金もかかりません。やる気があればいつでもどこでもできます。舌に関しては極限まで舌を前に出してください。他の動きも極限まで動かしてくださいね。急ぐ必要はありません。
もう一つはぶくぶくうがい
お金のかからないもう一つのトレーニング方法がぶくぶくうがいです。そんなん毎日してる、とおっしゃるかもしれません。歯磨きの時にぶくぶく洗口していますよね。それを5分してみてください。5分です。5分出来ますか?ブクブクうがいを真ん中、左、右、下、上、色々動かしてもらって構いません。小さな動きではいけません。大きく動かしてください。何のためかといえば、舌の下、下顎の下の部分の筋肉、顎舌骨筋、顎二腹筋という筋肉を鍛えているのです。5分は最初からは難しいでしょうから2分から始めて、少しづつ時間を延ばしていってください。
フレイル予防
加齢による筋力の衰えは致し方ないですが、比較的若い年代で睡眠時無呼吸症候群になっていると、高年齢になったときどうなるか、想像がつきますよね。今のうちからできることはやっておいた方がよいです。誰のためでもありません。脳への酸素供給量が減っていきますから認知の問題にもつながっていきます。何を言おうとしているかお分かりかと思います。ついつい毎日のことで忘れてしまいがちですが、将来の自分への投資だと思って毎日のルーティンワークにしてください。
噛み合わせも同じ
噛み合わせると下の前歯が見えない状態、あるいは少しだけ見える状態は口の中の容積が、下の前歯がほとんど見えている普通の噛み合わせの方よりもかなり小さくなっています。当然舌を置いておくスペースが少ないですからどこにいくかといえば、後ろです。そうすると日常生活でも気道が狭くなります。少しでも気道を広げようとするため下顎を前に突き出す姿勢、つまり猫背になります。受け口は下顎が前にありますが、上顎の成長がよくないことがほとんどです。舌は通常上あごの前歯の歯の付け根についています。舌はそれ以上前にいけません。歯並びガタガタは歯が並ぶだけの大きさに顎が大きくなっていないのですから、舌は後ろにいきます。
健康に生きていくために
呼吸が一番大切なのです。その呼吸が正しく行われるような環境を整えておかないと、高齢になった時にしっかり生きていけないと思います。いつでもその取り組みはできると思います。