下顎が体のバランスを保ち、脳を活性させるカギとなっている

約600万年前、人類は樹林帯からサバンナへ移行し遠方視のため直立二足歩行を開始しました。その代償として体の前後バランスが不安定となり、頭部が体の上に乗る構造になったことです。下顎が頭蓋に対してぶら下がるため、下顎がぶれやすくなりました。
下顎のズレが全身への波及する
下顎が左右や前後にズレると、目線を水平に保つため身体は補正します。その補正のために頸椎の配列や脊柱が歪みます。その結果姿勢不良となり全身の筋肉のバランスが崩れます。腰痛や肩こりもその影響かもしれません。首周囲筋の緊張や凝りは目線を保つため筋肉が均等に働けていないからです。筋肉だけではなく骨格がズレると骨化の中を走行している椎骨動脈や総頸動脈などの血流が悪くなり、左右不均等になります。その結果、脳血流そのものが少なくなったりします。脳への血流量不足があると、イライラ、うつ、認知機能低下、物忘れなどの不調につながるのです。頸椎の並び方の乱れで頸椎内の神経が圧迫され、手や腕のしびれが発生することもあります。
筋骨格系への影響

先に述べたように下顎のズレは上半身の歪みとバランス不良を招き、周辺筋の緊張を増加させます。その結果どのようなことが起こるかを列記します。
・腕の挙上筋、回旋筋が硬直するので腕が上がらなくなります。(四十肩、五十肩につながります。)
・脊柱カーブの歪みで腹部の支持が崩れ、支持する筋肉のこりから腰痛を誘発される。
・筋力低下、不良姿勢、肥満、過度運動などで関節腔が狭まり、関節面圧迫により膝の骨、軟骨の摩耗や変形、運動障害、痛みを招く。
・上部腹直筋が緊張すると胃が圧迫され、胃もたれや重苦しさにつながります。
・下部腹直筋が緊張すると腸が圧迫され便秘・下痢・腹痛を招き、蠕動運動が低下します。
耳鼻科系、自律神経系への影響
下顎がズレると鼻中隔が湾曲することがあります。矯正すると鼻中隔が整い通気が改善します。また体のバランス悪化で三半規管、耳石の機能が乱れ、自律神経不調からめまいや乗り物酔いが生じることもあります。
腸内環境(腸内フローラ)への影響
小腸は約7m、大腸は約1.5mあります。大腸には約4万3,000種類、約1,000兆個(約2kg)の細菌が存在し、絨毛上(大腸の内面)に隙間なく集落を形成しています。善玉菌は免疫向上、若返り、快眠に寄与します。口腔内細菌叢と腸内細菌叢の関連は証明づけられています。口の中の環境が良くないと口腔内細菌が唾液の飲み込みで大腸に届いて省内環境が変わってしまいます。悪玉菌が活性化されると疲労や便秘、肥満、うつ傾向を招きます。
顎関節そのものへの影響

下顎がズレると顎関節への力のかかり方が変わります。その結果左右あるいはどちらかの関節腔が圧迫され、開口障害、顎痛、クリック音(カクカクとかジャリジャリとか)など顎関節症が発現します。左右現れることも、片方のこともあります。
下顎を正しい位置にすることで起こる良い変化
見た目年齢や脳年齢の若返りと抗老化

顎位を正すことで頭部、顔面の動静脈血流が改善し、肌ツヤ向上、シミ、シワ、たるみ改善、表情筋の柔軟性回復にもつながると言われています。
・脳の回転速度・認知機能が向上し、約20歳程度の脳、身体機能の若返り効果を確認されているそうです。
・筋力バランスの回復による転倒予防、毛様体筋血流改善による老眼緩和、HPA軸(視床下部-下垂体-副腎系)正常化による免疫力向上など、全身の老化抑制に寄与する。
顎が正しい位置に戻ることで、脳機能や健康改善がデータ上医学的、脳科学的に有効であることが証明されています。
HPA軸とは
脳の視床下部、下垂体、腎臓の上にある副腎の3つの臓器が連動して、ホルモンバランスを調節する非常に重要な神経内分泌システムのことです。)私たちがストレス(身体的・精神的)を受けたとき、体がそれに対応して生き抜くための中心的な役割を果たします。
睡眠障害と精神症状のメカニズムと改善

少し難しいのですが、ホルモンの話をします。首こりによる脳血流不足があるとメラトニン不足を招きます。噛み合わせが治療で良くなると脳への血流が増加し、幸せホルモンであるセロトニンやメラトニンの合成が正常化されます。100名の患者データによると、噛み合わせの治療後1ヶ月で躁うつ傾向、不安神経症、統合失調症などの精神症状が約半減したとのことです。
軽度認知障害および認知症の予防

特養で認知症患者50名を調査したデータによると、自分の歯で噛める人は状態は良好だが歯が抜けた後に入れ歯を入れていない人は急速な脳萎縮とアミロイドベータ(アルツハイマー病などの原因とされている物質)の蓄積が進行するそうです。しかし義歯の装着で噛み合わせがよくなると脳への動脈血流入が増え、脳への酸素供給、栄養供給が向上します。当然脳から戻ってくる静脈流も改善しますからアミロイドベータもン網からの排出が促進されるそうです。
噛むという刺激が脳には重要

脳への血流の改善が噛み合わせによって良くなりますが、噛むという行為が脳への刺激となります。脳への刺激、特に前頭前野と呼ばれる部分に刺激があると脳は特に活性化されます。噛み合わせ治療により脳の血流量、特に司令塔である前頭前野の血流が向上することで、認知機能の改善が期待されます。
前頭前野の働きは
前頭前野は、私たちの心身を統べる司令塔のような存在です。脳の前頭葉にあります。前頭前野が健全であれば、トレスホルモンを制御するHPA軸がうまく働き、心身のバランスが保たれます。しかし、血流量が低下して司令塔の機能が鈍ると、このHPA軸の制御がうまくいかなくなってしまいます。その結果ホルモンのバランスを崩れ免疫の要であるNK細胞の働きが弱まります。脳と身体は、私たちが思う以上に密接に、そして繊細に繋がっています。
NK細胞とは
NK細胞( Natural Killer cellの略)は、体内の免疫システムで働く白血球の一種(リンパ球)です。がん細胞やウイルスなどに感染した異常な細胞をいち早く発見し、攻撃排除する初期防衛いわゆる自然免疫を担っている細胞のことです。
前頭前野が活性化すると何がよいのか
記憶の引き出し
単に記憶を保持しているだけでなく、必要な時に適切な記憶をスムーズに引き出す能力が改善します。実行機能と意欲: 将来を見据えて計画を立てたり、それを実行したりする能力が向上します。また、働く意欲や、前向きに夢を持って生きるという人間特有の意欲も高まります。
注意力・集中力

ぼんやりとした状態から脱し、集中力が向上します。無気力や「面倒くさい」といった感情による活動低下が改善されます。
空間認知能力
後部頭頂皮質の血流も改善されるため、空間的な認知能力が向上し、道に迷うといったトラブルの軽減に寄与します。
これらは、脳の司令塔である前頭前野が活性化することで、総合的な認知機能が底上げされるためです。
まとめ
下顎の位置がズレて、噛み合わせが悪いと身体のバランスが崩れて口だけにとどまらず、骨格、筋肉、関節、そして脳にまで影響を及ぼすことがお分かりいただけたかと思います。噛み合わせの治療を行うことで下顎の位置が正しい位置に収まると一見関係なさそうな全身の不調和が改善されます。また脳、特に前頭前野への刺激が適切に伝わり、脳を活性化されます。噛み合わせが重要な役割を果たしています。健康寿命を延ばすため、改善することを検討されてはいかがでしょうか。



