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保険の材料

日本の保険診療においてむし歯治療や歯を失った際の治療に使うことができる主な材料は、これと定められています。大きくは金属、レジン(プラスチック)、CAD/CAMの3つに大きく分けられます。それぞれの利点欠点について今回は述べていきます。それぞれ強度、見た目、アレルギーのリスク、費用(保険点数)などが大きく異なります。まずは金属から。
金銀パラジウム合金(通称金パラ)
日本の保険診療における、いわゆる銀歯の主役です。銀(約40~50%)にパラジウム(20%以上)と金(12%以上)を混合しています。口腔内において安全な金属は金です。金単体では咬合力に耐えれないので、プラチナを混ぜて強度や硬さを調整した金合金にして用います。ただし保険診療で金合金を使うと保険診療そのものが破綻してしまいます。財政破綻を招かず、国民すべてに遍く医療を提供するために、代用金属として開発されてきた経緯があります。
銀 約40~50%
合金の主成分となっています。口腔内で使う金属としての基本的な強度を保ち、かつコストを抑えています。唾液中の成分や食品の硫黄分と反応して、時間が経つと錆びてくる欠点があります。硫化というのですが、黒ずみやすくなるのです。
パラジウム 20%以上
銀の弱点を補うために含まれています。合金全体の硬度を大幅に高める役目があります。ただし歯科金属の中で最も金属アレルギーを引き起こしやすいと報告されている成分の一つです。昔は安価だったのですが、昨今は携帯電話などにも用いられるため価格が高騰しています。(世界情勢も影響しています。)
銅 約10〜20%
合金を硬くするために含まれています。パラジウムや金と混合することで、合金を硬くします。銅は錆びやすいです。口の中は湿り気があり、乾いたり、を繰り返すので酸化しやすい状況にあります。酸化すると黒色や緑色に変色する原因になります。
金 12%以上
金はほとんど錆びない、つまり酸化や硫化しない貴金属です。金を加えておくことで、お口の中で金属イオンが溶け出すのを防ぎ、合金全体の耐食性を高めます。先ほど述べたように、言うまでもなく高価なため保険診療の枠組みの中で配合できる限界が定められています。3gの被せ物なら最低0.36gの金が含まれていることになります。
微量添加元素(インジウム、イリジウムなど) 数%
金属を溶かして被せ物の型に金属を流し込む際、結晶を細かくして均一に凝固させる役割を担います。強度をが高くなります。
金銀パラジウム合金の利点と欠点

利点
金属なので壊れません。強い力がかかる奥歯で噛んでも割れる心配がほとんどありません。歯同士をずっとすり合わせていると削れてきます。本当はある程度削れてくれた方が歯に近いのです。(理想に近いのが金合金です。)素材自体に強度があるため、薄く作っても壊れません。咬み合わせがきつくて隙間のない部位は薄くせざるを得ません。また噛み締めのきつい方は奥歯にプラスチックやセラミックを用いると壊れやすいです。
欠点
見た目が良くない
見た目は銀色なので、口を開けたときに目立ちます。特に前歯に近い部分や、大きく口を開けて笑ったときに見えやすいです。
金属アレルギーのリスク
長年お口の中にあると、唾液によって金属イオンがわずかに溶け出すことがあります。溶けだしたイオンが体内に取り込まれることで、皮膚のかゆみや湿疹などの金属アレルギーを引き起こす原因になることもあります。
二次むし歯(再発)のリスク
硫化や酸化が起こったり、経年劣化による接着させている歯科用セメントが崩壊すると、隙間ができて虫歯になる可能性が高まります。
銀合金
金銀パラジウム合金と別にパラジウムや金をほとんど、あるいは全く含まない銀を主成分(約70〜90%)とした金属です。乳歯の治療や、歯の土台、一部の詰め物などに使われます。金属としての最低限の強度は持っていて。金銀パラジウム合金に比べ安価です。患者さんのご負担も少なくなります。ただし金パラに比べると硬さが柔らかく、お口の中の硫黄成分と反応し、短期間で真っ黒に硫化、つまり変色します。サビや変色に弱い金属です。
CAD/CAM冠

プラスチック(レジン)にセラミックの粒子を混ぜ合わせたハイブリッドレジンというブロックを、コンピューター制御の機械で削り出して作る白い被せ物、詰め物です。少し前までは限られた歯にしか使えませんでした。現在は前歯から奥歯まで、条件を満たせば原則すべての歯に保険適用されています。見た目は白くなるのですが、100%セラミックに比べると強度が著しく劣るので、歯ぎしりや噛みしめの強い人は割れたり外れたりしやすいです。長く持たせることを考えて、お勧めしないことがよくあります。金属を一切使わないため金属アレルギーの心配がありません。数年経つとタバコのヤニなどの着色や唾液などを吸収して、黄色っぽく変色したり、表面がすり減ったりします。
チタン
インプラントや人工関節にも使われる、生体親和性(身体に為害性がない)が極めて高い金属です。保険診療では、主に奥歯の被せ物として認められています。金属でありながら金属アレルギーをほとんど起こさず、非常に軽いのが特徴です。チタンは融点が高いため製作に特殊な設備が必要となるのでまだ普及が進んでいません。また非常に硬いので、作製や調整など取り扱いがとても難しい材料です。見た目は銀歯と同様に金属色です。
身体に優しい歯科材料は何か
これまで述べてきた保険適応の材料は錆びたり、黒くなったり、強度が不足したり、見た目が良くなかったりします。身体に良い材料は他にあります。生体親和性が高く、金属アレルギーがほぼないという点で一致しています。
金合金
純金にプラチナなどを加えた、歯科用貴金属です。天然の歯とほぼ同じ硬さを持つため、噛み合わせる相手の歯(対合歯)を傷つけず、自分の歯と同じように適度に変形・摩耗して馴染んでいきます。金属に伸びる性質があるため、歯との隙間が非常にできにくく、治療後の虫歯再発のリスクが最も低いとされています。強い力がかかっても、割れません。金色であるため目立ちやすいことと、量を沢山使うと重くなるのが欠点です。
ポーセレン(セラミック)

いわゆるセラミックで、陶器に近い組成を持つ高級な歯科材料です。天然の歯が持つ絶妙な透明感やグラデーションをリアルに再現できます。変色もほぼありません。衝撃に弱く、お皿のようにパリンと割れたり、端が欠けたりすることがあります。そのため、強い力がかかる奥歯や、歯ぎしりや食いしばりのある方には不向きのこともあります。強度を担保するために一定の厚みが必要となります。そのために歯を多めに削る必要があります。作る技術が要るので、費用は高くなります。
ジルコニア

人工ダイヤモンドとしても知られる、極めて頑強なセラミックの一種です。金属並み、あるいはそれ以上の強度があるため、噛み合わせの強い奥歯やブリッジにも対応できます。従来のセラミックの最大の弱点であった割れやすさを克服しています。表面が非常に滑らかで、プラーク(歯垢)などの細菌が付着しにくいため、歯周病予防にも有利です。天然の歯よりも遙かに硬いため、噛み合わせの調整が非常に重要です。適切に調整されていないと、噛み合う相手の歯が削れたり痛めたりするリスクがあります。当然定期的な調整が必要になります。透明感はポーセレンに比べるとやや劣ります。
まとめ
保険診療の材料は身体にとってベストな材料が使われてはいません。国の財政で賄える範囲の材料です。ですから錆びるけれど比較的安価な銀を主とした材料になるのです。金属が世界情勢により高騰しているので、強度に問題はありますがCAD/CAMも保険に導入されました。身体にとって良い材料を使えればよいのですが、保険適用外となるため費用は高額になるのです。よく考えて決めてください。



