こんなことはありませんか?
朝起きた時の感覚

起きた時に顎の関節や筋肉が重だるい、または疲れを感じる。
こめかみ辺りが重い。
特定の歯ではなく、全体的に浮いたような感じや痛みがある。
お口の中の状態

頬の内側の粘膜に、薄く白い筋ができている。
舌の周りに歯形がついて波打ったようになっている。
前歯の先端が平らになったり、以前より短くなったりして歯のすり減っている。
歯茎の付け根や上顎の真ん中に、ボコッとした硬いコブのような出っ張りがある。
日常生活での影響

冷たいものがキーンとしみるが歯医者で虫歯がないと言われる。
詰め物や被せ物がよく取れたり、割れたりする。
エラの張りが発達し、角ばっている。
耳の奥が痛むことがある。
家族から言われたことがなくても、朝起きた時の顎の重だるさや舌の縁の歯形がある場合は、音の出ないタイプの食いしばり(クレンチング)をしている可能性が高いです。朝起きたときに、奥歯が噛み合わさった状態で目が覚めるという方は、ほぼ確実にクレンチングをしています。
夜間の歯ぎしりは無意識のうちに行われる

自分では気づきにくいものですが、このように体にはいくつものサインが現れます。ではなぜ歯ぎしりをするのでしょうか?最も大きな要因はストレスを解消するための反応と言われています。人は強いストレスや不安を感じると、交感神経が優位になります。人間は進化の過程で、敵に襲われたりピンチに陥ったりすると、交感神経を急激に高めて、戦うか逃げるかの準備をします。その時、最も力が入るのが顎と肩です。人によってストレスは異なります。(例えば上司への怒り、将来への漠然とした不安など)程度に差はあれストレスを脳は生命の危機と同じレベルで処理します。ストレスに対して反撃も逃走もできないとき、行き場を失ったエネルギーが、最も力を込めやすい咀嚼筋に向かうのです。
なぜ音が鳴らないのか
通常の歯ぎしり(グラインディング)は、歯を左右にギリギリと擦り合わせるため摩擦音が出ます。一方で、クレンチングは上下の歯を強い力でギュッと垂直に噛み込み、固定した状態なので、音が全く出ないのです。
感情を処理するために噛み締める
日中に溜め込んだイライラや緊張を、睡眠中に顎を動かしたり噛みしめたりすることで、脳が発散しようとしているのではないかと言われていますが、就寝中だけではなく、仕事や家事などで何かに没頭している際、無意識に食いしばってしまうこともあります。(噛み締め癖 Tooth Contact Habit)これは、脳が戦闘モード(緊張状態)に入っている、とも言えます。
噛み締めはどれくらいの力なのか
無意識の食いしばりでは、自分の体重の数倍(100kg以上)の力が歯や顎にかかっていると言われています。これは意識して噛んで出せる力を遥かに超える、火事場の馬鹿力が歯や顎にかかっているのです。周囲の人に指摘されないため、自分でも気づかないうちに歯や顎をボロボロにしてしまうことがあるのです。
噛み締めると幸せホルモンが出る
私たちの脳は、ストレスを感じるとストレスホルモンを分泌します。これらが溜まりすぎると脳にダメージを与えてしまうのですが、噛むと心地よさやスッキリ感を感じさせる、特定の化学物質が脳内で分泌されます。無意識に噛みしめることで、脳内のノルアドレナリン(不安や攻撃性を高める物質)の活動を抑え、精神的なバランスを保とうとしているのです。主に以下の3つの物質が、噛み締めることで分泌されています。
β-エンドルフィン
快楽物質の代表格です。奥歯を噛み締めることで強い圧力が脳への刺激となり分泌されます。強力な鎮痛作用と多幸感をもたらし痛みを和らげようとするのです。例えると、ランナーズハイに近い状態を脳内で作り出しているような感じです。
セロトニン(幸せホルモン)
一定のリズムで筋肉を動かすリズム運動によって分泌が促進されます。精神的に安定し、安心感や満足感を与えます。ガムを噛むとリラックスできるのは、このセロトニンが増えるためです。不足するとイライラしやすくなりますが、噛むことで心のバランスを整えることができると言われています。
ドーパミン
噛み締めているときに活発になります。やる気や快感を引き出すホルモンです。
音が鳴るタイプよりも、鳴らない噛み締めの方が体へのダメージが深刻
歯の根元が削れる

噛み締めると垂直的に歯へ力がかかり、付け根に応力が集中するので、歯の根元(歯と歯茎の境目)が削れてきます。くさび状欠損と言われます。知覚過敏の原因になります。
早く歯茎が痩せてきます。
噛み締めの力が慢性的にかかると、歯を支える骨が加齢よりも早く減少します。そのため歯茎も下がるので歯が伸びたように見えます。
歯にヒビが入ったり、破折しやすくなる
毎日持続的に圧力がかかり続けるので、歯にヒビが入ります。ヒビが入ることは加齢と共に起こることなのですが、程度がきついので、健康な歯がある日突然真っ二つに割れてしまうこともあります。
顎関節への過度な負担
顎の関節が常に圧迫されている状態になっているので、顎の関節に負荷がかかります。口が開きにくくなったり、開閉口で痛みが生じる顎関節症を誘発します。
肩こりや首こりの慢性化

首の後ろにある広頚筋や肩の筋肉まで緊張が伝わり、マッサージをしても治らない頑固なこりの原因になります。
睡眠が浅くなる
噛み締めは浅い眠りの時に起こりやすいため、睡眠の質が低下しているときほど激しくなりがちです。ストレスが多いと、脳は半分起きているのに体は寝ているような不安定な状態で、自律神経が乱れやすくなります。
対策と緩和方法
噛み締めを止める治療法はありません。無いだけに意識的なケアが重要になります。
ナイトガード

歯科医院で歯型を採ってマウスピースを作製して、夜間に使用します。上下ではなく、どちらか一方に装着します。保険適応です。噛み締めの強い方は早くすり減ったり壊れたりします。噛み合わせの高さが挙がることで顎関節を保護します。歯同士が当たらないので歯のすり減りを防ぐことが出来ます。ナイトガードすれば噛みしめが無くなるということではありません。対症療法です。
自己暗示療法
日常生活で、“歯を離す”と自分に言い聞かせるだけでも、脳への抑制効果があると言われています。マークを決めて、目に入った時に噛み締めていないか常にチェックしましょう。もし噛み締めているようならすぐさま歯を離すようにしましょう。また、就寝前に“リラックスして寝る”と言い聞かせてみましょう。
舌のポジション確認
起きている間、上の歯と下の歯は触れさせないのが正常です(安静空隙)。(この生理的な反応を参考に総義歯を作成します。)それと共に舌は上顎に付けましょう。
マッサージ
寝る前にエラの部分(噛むと硬くなる筋肉)を指で円を描くように優しくほぐし、緊張を解いてみてください。
まとめ
受診された方の口腔内を拝見する時、最初に記載した噛み締めの口腔内の兆候がないか確認しています。兆候がある方に自覚症状があるかないかお聞きすると大抵は、ない、家族にも言われたことがない、と言われます。お話をしてナイトガードの説明をするのですが、不具合も無いと聞き流される方がほとんどです。噛み締めのダメージは後で大きく跳ね返ってきます。大事にならない前に対応された方がよいと、切に願います。思います。



