ブラキシズムには種類がある。
歯ぎしりや食いしばりのことを、ブラキシズムと言います。体や心が発しているサインであることが多いと言われています。本人が気づいていないことも結構あります。グラインディングとクレンチングです。どちらもブラキシズムです。歯ぎしりをグラインディング、食いしばりをクレンチングといいます。上下の歯をカチカチカチと素早く打ち鳴らすタッピングというタイプもありますが、比較的稀です。
歯ぎしり(グラインディング)

特徴として
上下の歯を横にギリギリと擦り合わせる
ギリギリと大きな音が出ることが多い
主に睡眠中
歯の表面が平らに削れる(摩耗)
範囲の筋肉が疲労する
自覚しやすい
同居している人に、音がうるさいと指摘されて気づくことが多いです。
長年続いていると、犬歯(糸切り歯)などの先端の尖った部分が真っ平らになり、象牙質が露出して知覚過敏になることもあります。
食いしばり(クレンチング)

上下の歯を強い力でギュッと噛み締める
ほぼ無音(周囲が気づきにくい)
起きている時・寝ている時の両方
歯が割れる、歯ぐきが下がる、歯の根元が削れる(くさび状欠損)、詰め物が壊れる、よく外れるなどの症状が見られる
顎の関節や特定の筋肉(咬筋)に強い圧力がかかる
隠れブラキシズムとも呼ばれることがあります。それは音がしないためで、家族も本人も気づきにくいです。こちらが指摘しても自覚の難しいのはそのためです。(家族にも言われたことがない。定番の答えです。)自覚症状で比較的多いのは、朝起きた時の顎のだるさや歯の違和感です。自分で疑いを持つのはその症状があるときです。横に力を逃がす動きがない分、垂直方向に凄まじい力がかかります。自分の体重以上の力が歯や顎にかかり続けることもあり、歯の寿命を縮める大きな原因となります。(歯にヒビが入ったり、割れたり)
ミックスタイプもある
ミックスタイプも多く、最初はギリギリとやり、その後にギュッと食いしばるといった混合タイプの人も多く、どちらか一方だけとは限りません。
原因には何があるのか?
主な原因は、大きくは4つあります。
ストレスや緊張
もっとも一般的な原因と言われています。現代人において最大の原因と言われているのが精神的なストレスです。寝ている間は理性を司る大脳辺縁系がお休みし生命を司る脳幹だけが働いています。日中の不安や抑圧された感情を解消しようとするストレスの発散のために無意識に歯を食いしばっているという説があります。
噛み合わせの不調
歯の並びや噛み合わせがわずかでもズレていると、脳がそれを違和感」と判断し、適正な位置に戻すため無意識に(歯ぎしりで)削って調整しようとすることがあります。詰め物や被せ物の高さが合っていなかったり、歯が抜けたまま放置している、加齢による歯の摩耗などでも起こります。
生活習慣
日中の何気ない習慣が、夜間の歯ぎしりを引き起こすトリガーになります。具体的には頬杖やうつぶせ寝などです。他にも様々な原因があります。起きている間に無意識に上下の歯を接触させている癖がある人は、夜間もそのまま食いしばる傾向が強いです。通常唇が閉じていても歯が上下当たっていないことが普通です。この癖をTCH(上下歯列接触癖)と言います。
睡眠の質や疾患

睡眠時無呼吸症候群で呼吸が止まりそうになると、脳が覚醒して呼吸を再開させようと顎を動かします。これが激しい歯ぎしりにつながることがあります。舌を持ち上げる筋力の衰え、生まれてから舌の位置を正しく覚えていないことで睡眠時無呼吸症候群が起こることもあります。舌が奥に引っ込んでいると気道を防ぐので、生きるために顎を前に出して気道を確保しようとして歯ぎしりするのです。
ブラキシズムのサイン

口腔内にはブラキシズムによって起こっている変化が現れています。その点を指摘しても受け入れてくれません。どのようなことを見ているか、サインには下記のようなものがあります。
朝起きた時に顎の疲れや重さを感じる
歯の詰め物がよく外れる(金属、白い詰め物問わず)
歯が削れている(前歯のてっぺん)
知覚過敏(部分/全体的)
WSD(歯の付け根の削れ)
頬の内側に白い線の跡がある(噛み締めの跡)
顎関節症(噛み合わせの高さの低下によってあごが鳴る、痛む)
歯の破折(神経のない歯、神経あっても割れたり欠けたり)
義歯破折
など
早めの対策が大切です。
歯ぎしりや食いしばりのダメージを最小限に抑えるために、取り入れられる施策がセルフストレッチとマウスピースです。
顎の緊張を解く「1分ストレッチ」
咬筋マッサージ
食いしばりに関わっているのは、主に頬にある咬筋という大きな筋肉です。ここをほぐすと、驚くほど顎が軽くなります。奥歯をグッと噛み締めたときに、ボコッと膨らむ頬の部分(エラに近い場所)を見つけます。そこが咬筋です。指3本の腹を使い、円を描くように優しくマッサージします。ポイントは口を少し半開きにして、力を抜いた状態で行うのがコツです。
側頭筋マッサージ
耳の上のあたり(こめかみ周辺)に手のひらの付け根を当てます。上に引き上げるように円を描きながらほぐします。食いしばりによる頭痛がある方に特に効果的です。
あいうべ体操
口を大きく動かすことで、顔全体の筋肉のバランスを整えます。「あー」「いー」「うー」「べー(舌を出す)」と各3~5秒ずつ思い切り動かします。あいうべの最後に「ん」を足して、その位置に舌を置いたまま唾を飲み込む訓練をしてください。
マウスピース(ナイトガード)

寝ている間の無意識な動きを自分の意志で止めるのは不可能です。物理的に歯をガードするのがマウスピースです。(物理的に歯を保護し、摩耗を防ぐため)
効果
歯の保護(歯が削れたり、割れたり、詰め物が外れるのを防ぎます。)、顎関節への負担軽減(噛み締めたときの圧力を分散させ、顎の関節を優しく保護します。)、筋肉の緩和(厚みのある板を挟むことで、筋肉がこれ以上噛み込めない位置で止まり、筋肉の緊張を和らげます。)があります。マウスピースをしていれば歯ぎしりが解消される、と言う訳ではありません。
注意点
市販のマウスピースもありますが、マウスピースがしっかり歯と合っていないと逆に噛み合わせを悪化させることがあります。歯科医院で型取りをして作れます。保険適用で約3,000円〜5,000円程度で作れます。(材質により費用は異なります。材質の選択は歯科医師が行います。)
意識する
日中に意識すべき「NO クレンチング」最後に、一番効果があるといっても過言ではないのが自己意識です。理想の状態は上下の歯の間に1〜2mmの隙間があること(安静位空隙)です。対策としてスマホやPCの角に「歯を離す!」と書いた付箋を貼ってみてください。それだけで、日中の「食いしばりグセ」がリセットされ、夜間の歯ぎしりも軽減されることがわかっています。まずは、今この瞬間も上下の歯を離して、肩の力を抜いてくださいね。
まとめ

歯ぎしりや食いしばりをただの癖として放置してしまうと、時間をかけてダメージが蓄積され高齢になった時に歯を失う、食事が楽しめない、顔貌が変わるといった深刻な不具合として現れてきます。歯を失う三つの敵は虫歯、歯周病そしてブラキシズム(歯ぎしり)と言われています。高齢になってから後悔しないためにブラキシズムに対して今からできることはやっておきましょう。それが自分の未来への投資になります。



