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あくまでも歯磨剤は補助的なもの

よく聞かれる歯磨剤について今回はお話しようと思います。症状別に述べていきますが、基本的には歯磨剤は補助的な役割を果たすだけで、それだけで予防や症状改善できる訳ではありません。すべてにおいて歯垢を落とせる磨き方をしていただいていれば歯磨剤は効果があると思います。磨いているのと磨けているのは、行為は同じでも内容は全く違います。
症状別選択
特定の商品名などは記載しません。成分を参考にしてみてください。
むし歯リスクの高い方
歯の表面はエナメル質という組織で出来ています。食事するたびに口の中のPhは酸性に傾き歯の表面が少し溶かされます。これを脱灰と言います。少し溶けた歯の表面は唾液に含まれるカルシウムやリンによって修復されるのですが、口の中が酸性のままだと修復されにくいのです。また歯の表面が歯垢で覆われているとその部分には唾液が行きわたらず修復されず、むし歯になっていきます。修復される過程でフッ素も取り込まれると歯質が強化されます。強化というのは、少し歪んでいる歯の結晶の歪みを是正してくれます。虫歯リスクの高い方は歯間ブラシなども併用して歯垢の除去が第一、ダラダラ食べで口の中を何度も酸性にしないことが第二です。虫歯リスクの高い方は歯の表面が一時的に溶けて修復するときに役に立つ成分が配合されている歯磨剤を選びましょう。具体的にはフッ素、TCP(リン酸カルシウム系)、CPP-ACP(リカルデント)です。フッ化物(フッ素)の目安は成人で1,450ppmF、小児は年齢に応じて500〜1,000ppmF(小さいうちは少量で)です。量が多ければ良いってもんではありません。虫歯リスクの高い方におすすめする歯磨き粉は、汚れを落とすというより、歯を強くする意味合いのものになります。
歯周病リスクの高い方(歯ぐきの腫れや出血のある方)
最初に申しますが、歯磨き粉で歯周病は治りません。歯間ブラシやフロスなど補助的清掃具も使っていただき、歯垢を取り切る歯磨き方法をマスターしていただくというプラークコントロールが大前提で効果が発揮されます。簡単に成分について説明します。
CPC(塩化セチルピリジニウム)
主な効能は歯周病原因菌の殺菌とされています。また比較的効果が持続しやすい。歯周病菌の中には口臭に関与している菌もあるので口臭原因菌の減少にも寄与すると言われています。
IPMP(イソプロピルメチルフェノール)
IPMPは、歯垢の中に入り込んで細菌を弱らせる成分です。CPCより即効性が高いと言われています。厚くなっている歯垢やバイオフィルムの中に入っていけるわけではありません。被膜が薄ければ薄いほど効果はあります。歯垢除去を完璧でなくてもしっかりできた上で効果が見込めます。
トラネキサム酸
簡単にいうと止血成分(アミノ酸誘導体)によって歯肉出血を抑制します。歯周病菌に効果はありません。歯ぐきの腫れや出血を落ち着かせる成分です。ブラッシング時に出血がどうしても気になる方は選択する成分の一つになります。
グリチルリチン酸(主にグリチルリチン酸2K)
歯肉の炎症抑え、歯肉腫脹の軽減する目的のものです。刺激が少なく安全性が高いです。これも歯周病菌に効果はありません。
しつこいかもしれませんが、歯周病対策において歯磨剤はあくまでも補助的なものです。正しくプラークコントロールすることが一番の予防であり治療です。
知覚過敏
知覚過敏は原因が特定されていません。いろいろな説があります。ですからその説に沿って対策するので知覚過敏用の薬剤は色々あります。同じ薬剤でもこの方には効いたが、この方には効かなかった、ということがあります。歯磨剤にも同じことが言えます。同じ歯磨剤でも効く方、効かない方があるということです。初めから大容量のものは選ばず、色々試すつもりで購入検討してください。歯の表面にしみ止め成分を塗り付けてフタをするイメージです。効いてくれれば良いのですが、即効性はあまり求めない方がよいでしょう。
硝酸カリウム
歯の神経の興奮性を低下させて、神経が刺激に反応しにくくさせる成分です。神経を落ち着かせて感じにくくする成分です。
乳酸アルミニウム
歯の、外からの刺激を伝える組織が象牙細管です。象牙質の中にあり普段は口腔内に露出はしていません。歯の一番外側のエナメル質が削れてきたり、噛み締めや歯ぎしりで歯にヒビが入ったり、歯茎が痩せてくると、象牙細管が口腔内に露出します。その開口部を物理的に塞いで刺激が伝わらないようにします。歯の表面にフタをするイメージですね。
フッ素
先に述べているので省略します。配合されていると効果増強を期待できます。
噛み締め、歯ぎしり、など虫歯でなくても、歯茎が下がってなくてもよくしみてしまうことがあります。原因がとして考えられることをまずは最優先しましょう。その上で改善されなければ、軽度なら硝酸カリウム中心、歯肉退縮・象牙質露出が明らかなら乳酸アルミニウム、それぞれメインのものを選んでみましょう。それでも知覚過敏の改善は難しいことが多いです。
着色(ステイン)が気になる方

歯の表面に付いている茶渋のようなものをステインと言います。良く使う湯飲み茶わんに残るあれですね。ヘビースモーカーのかたのいわゆるヤニもステインと言えます。歯の表面に付いているものなので、歯そのものの色を変えたいホワイトニングにはなりません。基本的には研磨剤を用いて削り取る、というイメージです。元々の歯を削ってしまうリスクがありますから、研磨剤が過多に入っているものは避ける、毎日というよりは週に数回使用するなど、歯質保護を考え使用してください。過度に研磨してしまうとは知覚過敏や歯肉退縮を招いてしまいます。できれば医院で着色除去された方がよいかと思います。
ホワイトニング用の歯磨剤に過多な期待はしない
ホワイトニング用の歯磨剤と言われていても、歯そのものを白くするものではありません。コーヒーやお茶の着色を落として、本来の歯の色に戻すためのものがほとんどだと思ってください。着色汚れの除去、新たな着色の付着予防、歯の表面をなめらかにする、という意味あいで用いてください。歯の内部から色を白くする、歯科医院で行うオフィスホワイトニング、ホームホワイトニングの代替にはなりません。歯磨きするモチベーションを上げるためなら、使用頻度に気を付けて用いるとよいでしょう。
ドライマウス
ドライマウス対策の歯磨剤は、口腔内の保湿、粘膜保護、刺激緩和が目的となります。歯磨剤はあくまでも補助的なものであり、唾液分泌促進や生活指導などの治療と併用する必要があります。
選び方のポイントとして、
保湿成分が含まれている(ヒアルロン酸、グリセリン、セラミド)
刺激が少ない(アルコールフリー、ラウリル硫酸ナトリウムフリー)
pHが中性から弱アルカリ性であること
ジェルタイプ
この辺りを勘案して選択されるとよいでしょう。
高齢者

高齢になると加齢に伴う口腔の変化として、歯肉が退縮し歯の根の部分が口腔内に露出します。歯と歯の間に空隙が出来て、物が詰まりやすくなります。歯ブラシだけでなく歯間ブラシなど使用しないと食渣や歯垢がうまく取れないので歯と歯の間や歯の付け根が虫歯になりやすくなります。そのため歯の再石灰化を促すフッ化物が含有されるものを選びましょう。虫歯リスク低減につながります。加齢と共に唾液分泌が減少することが多いので、保湿感のあるものが望ましいです。すぐに磨けた気になるので発泡剤が少ないものを選ぶのもポイントの一つです。
歯磨剤に期待しない
歯磨剤に含まれる薬はお守り、くらいのつもりでいましょう。化学的な効果は非常に限定的で、どんな症状でも機械的清掃(ブラッシング)がきちんと出来た上で効果が少しあると思ってください。



