抜歯後、噛めるからと言って放置するのはよくありません。

抜けたままになっているし、そろそろ治療しないといけないな。歯を削ってまでブリッジはしたくない、あるいは出来ないと言われている。でも入れ歯は嫌だなあ、あるいは入れ歯は付けたことあるけどあれはちょっと。じゃあ固定式のインプラントにしようかな、と思わることがあるかもしれません。インプラントするには骨や歯ぐきの状態・感染の有無などによって適切な時期があります
抜歯したあと部分を放置しているとこういうことが起こります。
隣の歯が倒れてくる
抜けた部分にスペースができてそのままにしていると、両隣の歯が抜いた部分に傾いてきます。そのため歯並びや噛み合わせが崩れ、噛み合わせが乱れます。
向かいの歯が伸びてくる

歯を抜けたまま放置すると、反対側の歯が下に伸びてきます。そうなると噛み合わせがズレますし、顎関節や筋肉に負担がかかります。
顎の骨(歯槽骨)が吸収する
歯を支えていた骨は、抜歯により歯がなくなると骨は吸収されていきます。特に前歯では唇側の骨が薄く、数か月でへこんでしまうこともあります。インプラントするにはインプラントが埋められるだけの高さを幅が必要です。骨が足らないとインプラント治療はできません。骨を増やすことをしなければなりません。
抜歯後から骨は吸収していく
抜歯直後から抜歯窩は血液が流入し、歯肉と骨で治癒し始めます。最初は食べ物が詰まりやすいですが次第に埋まってきます。残念ながら抜いた時の骨の高さと幅には戻りません。抜歯後1〜3か月するとおおよそ治癒後の形が分かるようになります。3〜6か月経つと骨も周囲の骨と同じくらい成熟してきます。抜歯に至った理由にもより骨の回復具合が変わります。虫歯による抜歯は比較的骨は回復しますが、歯周病や歯の破折では骨幅や高さが半分以下になることもあります。インプラントだけではなく、ブリッジや義歯でも骨の吸収が強いと予後はあまりよくないようです。骨はあったにことはありません。
破折やヒビの入った歯を置いておくリスク

歯にヒビが入ると、その割れ目から細菌が侵入します。そうすると歯の周りの骨に感染が起きて炎症を発症します。炎症反応は感染を防ぐために、骨を溶かして排除しようとします。隙間を作って防御しようとするので歯の周囲の骨が少しずつ溶けていくのです。歯ブラシでブラッシングしても僅かな隙間の汚れを取ることはできません。歯にヒビが入った状態をそのままにしておけばおくほど、炎症反応は続きますから、歯の周囲の骨はどんどん減ってしまいます。
インプラントは骨のあるところに埋めます。

簡単に言うと、インプラントは骨の中に埋め込む治療です。骨のボリュームがしっかり残っていないと支えられません。骨のボリュームが少ないとインプラントできないので人工的に骨を足す手術が必要になったり、無理して埋めることができても審美的に不自然になったりします。神経や血管、副鼻腔、鼻腔など解剖学的にも安全な治療を行うために、また長く永続させるためにインプラント治療に骨のボリュームは必要です。(それ以外にも骨の密度も影響してきます。)歯にヒビが入っていたり、破折している歯を長く残していると、インプラント治療の難易度が上がるということです。
歯が割れてると言われたけど前歯だし、どうしよう?
前歯の破折は治療に取り掛かったとしても歯が無いままになるのか、など経済的、時間的負担も含め治療への不安もありますよね。インプラント治療がすべて終わるまで、抜歯後から仮歯や仮義歯を入れ、見た目を保ちながら治療を進めることがあります。ケースによりますが、抜歯と同時に仮歯の装着まで同日に行うインプラント治療とを行うことができることもあります。歯にヒビが入っていたり、割れている場合には人工の骨を同時に埋入することが多いです。インプラントを設置するのに骨の条件が悪い場合、即日の仮歯まで進めることはできません。現在のところ骨の質や硬さは事前の診査診断では判断がつかないのが実情です。
前歯の破折の放置期間が長いと

前歯の骨は奥歯に比べて非常に薄く繊細です。破折した前歯を長い期間残していると、次のように骨が失われていきます。数週間〜1か月で炎症で骨がじわじわ吸収し始め、骨の高さが少し下がります。2〜3か月すると、歯根周囲の骨が明確に吸収されていき、歯ぐきがへこみ始めます。3〜6か月すると唇側の骨が特に薄くなり、消失していきます。歯ぐきのラインがそこだけ下がってきます。半年以降になると唇側の骨が大きく失われ、骨を造成することがほぼ必須になります。奥歯でも同じことが起こるのですが、特に前歯部では唇側の骨が元々薄いので吸収されやすいのです。インプラントを長くもたせるなら早めに抜歯し、インプラント周囲に骨が十分満たされている環境を整えておくことがとても重要です。
インプラントを行う時期はいつがよいのか
大きく分けると3つになります。
抜歯と同時の即時埋入
抜歯と同じ日にインプラントを埋入する時期です。メリットとして抜歯とインプラントの手術が1回で済むことです。また抜歯したことで身体を治そうとする力を使えるので、骨吸収を最小限に抑えられることもメリットです。骨が出来上がってからインプラント治療を行うのに比べると治療期間が短いということもメリットです。さきほど述べた通り審美性の要求される前歯部の治療に有利と言えるでしょう。ただし条件が多々あります。抜歯した部分に感染や炎症がなく、骨の量、幅、高さ、質が十分であることと人工骨の使用が必須です。抜くべき歯が思いのほか骨と癒着していて難抜歯になると、抜歯でオリジナルの骨を失う可能性があります。
抜歯後、歯ぐきが治り始めた頃
抜歯後4〜8週間程度の時期になります。この頃は骨が柔らかく、まだ成熟した骨になっていませんが歯茎の治癒がそれなりに進んでおり、インプラント埋入後の感染リスクが低いです。骨の吸収はそんなに進んでおらず、ある程度保たれています。抜歯した歯に軽度の炎症があった場合や、即時埋入にはややリスクがある場合に適しています。成熟した骨になっていませんが、骨の吸収がそれほど進んでおらず体の治癒力を使えるという点で、条件が揃えば適切な時期だと思っています。
抜歯後3〜6か月以降
骨と歯ぐきが完全に治癒している状態になっているので、骨は成熟しているし、歯茎の形も凸凹してなくて安定しています。適切な手技であれば最も感染リスクが低く、安全性が高いと言えます。ただし骨吸収が進んでいる可能性があるため、インプラントを埋入できるだけ骨を造成しなければならないこともあります。ずっと前に抜歯したのではなく新たに抜歯し、そこから骨や歯茎の治りを待ってインプラント治療していくとなると治療期間は長くなります。
インプラント治療の最適な時期は、
抜歯することになった歯の感染状態(何が原因で抜くことになったか)、骨の量、骨の質、全身の健康状態、審美的な希望など様々な要件によって異なります。個人的な感想で言えば、本当は骨が少なくならないうちに、特に最初の1本は残りのすべての歯の運命を決めてしまいますから、早く治療に取り掛かった方がよいのは言うまでもありません。でもその方その方のライフステージは違います。治療する時期はやろうと決めた時です。いつでもどの時期でも良いと思います。でもできるだけ骨を失わないようにしておいてもらえると、それが双方ともの益になると思います。



