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口腔機能低下症とは?

お口の筋肉や働きの衰えが、いくつか重なった状態のことです。年を重ねるにつれて、身体の筋力が落ちるのと同じように、お口の周りの筋肉や舌の力も衰えていきます。ある日突然動かなくなるわけではなく、よく舌を噛むようになった、とか滑舌悪くなったかな、前はそんなになかったのに、という小さなサインが重なるのが特徴です。
例えば
固いものが噛みにくくなった
食事中によくむせるようになった
お口の中が乾きやすい
食べこぼしが増えたり、滑舌が悪くなったりした
舌や頬、唇を噛む頻度が多くなった
飲み込みづらいときがある
主な原因は加齢、病気、筋力や唾液量の低下なのですが単なる年のせいと放っておくと、しっかり栄養が摂れなくなり、全身の筋力低下(フレイルと言います。)へつながる引き金になってしまいます。検査を受けることでどの程度機能しているのかを知ることができます。基準に比べて数値が低いなら、お口の機能を回復させましょう。
口腔機能低下を検査でチェックすることが出来ます。
口腔水分計

お口の中がどれくらい潤っているかを約2秒で測定できる機器です。舌の粘膜にセンサーを押し当てることで、唾液が十分に行き渡っているかを数値化します。基準値は27.0以上で27.0未満の場合に口腔乾燥と判定します。
基準値に達しないと、どのようなリスクがあるのか
口の中が乾燥しているということは、唾液の殺菌、自浄作用が十分働かず、お口の中に細菌が繁殖しやすくなるということです。その結果虫歯や歯周病のリスクが高くなります。また口臭の原因になります。お口の中がカサつくので、食べ物を飲み込みにくくなったり、喋るときにも舌や頬が歯に引っかかって話しづらくなります。食べ物の味を感じるセンサーは舌の上にある味蕾細胞なのですが、唾液に溶けた状態で味を感知するため、乾燥すると味が薄く感じたり、違和感が出たりします。
お口の乾燥対策とセルフケア
簡単に出来る対策は、こまめな水分補給です。一度にたくさん飲むのではなく、お口を潤すように少しずつ回数を分けましょう。市販の口腔用保湿ジェルや保湿スプレーを活用するのもよいでしょう。口呼吸していると口の中が乾くので鼻呼吸を意識しましょう。耳の下、顎の下などにある唾液の出口をやさしく刺激すると唾液が出やすくなります。この唾液腺マッサージも有効な訓練です。
舌圧測定

バルーン状の使い捨てプローブ(風船のようなセンサー)を舌と上あごの間に挟んで、グッと舌を持ち上げてバルーンを押しつぶすことで、舌の筋力を測定します。食べ物をのどに送り込む、食べ物を上手にまとめる、といった舌の力がどれくらいあるかがわかります。舌の力、機能も加齢により衰えます。30.0 kPa(キロパスカル)以上が基準値で、30kPa未満の場合低舌圧、つまり舌の機能低下と判定されます。
舌の力が弱いと何が起こるのか

誤嚥という言葉を聞いたことはないですか?食べ物が食道ではなく気管に入ってしまうことです。最悪の場合は命に関わる肺炎を引き起こします。これが誤嚥性肺炎です。舌の力を衰えると食べ物をのどの奥へ力強く送り込めなくなります。通常は噛みながら喉に送り込みやすくするために舌を使って食べ物をまとめるのですが力が無いと口の中で食べ物をコントロールできず、口からこぼれたり、お口の上あごに食べかすがへばりついて、残ったりします。舌が上手く使えないと「タ行」や「カ行」などがうまく発音できず、相手が聞き取りにくくなります。
舌の筋力トレーニングをする
舌の力を維持するために、毎日あいうべ体操を行いましょう。お口を大きく使って「あー」「いー」「うー」「べー」と動かすトレーニングです。一日30回大袈裟に動かしてみましょう。声は出さなくてよいです。顎が開けにくい方は、「あ」は省いてもよいです。最後に「ん」をつけ足して、唾液を意識して「ゴクン」と力強く飲み込みましょう。飲み込む動作も衰えるので是非やってみてください。
咬合力測定

平たいセンサーシートをお口の奥で思い切り噛んでもらい、噛む力(咬合力)を測定するデジタル機器があります。奥歯でグッと噛みしめたときに、どれだけ大きな力を発揮できているかを調べます。機器によりますが当院の測定機器では375 N(ニュートン)以上が基準値で、375N未満の場合咬合力低下と判定します。噛むという行為は脳への刺激になっています。噛む力が低下して咀嚼回数が減ると、脳の血流が低下し、認知機能の低下を招きやすくなってしまいます。噛み合わせのバランスが悪い、または一部の歯だけで噛んでいると、特定の歯や顎の関節に負担がかかり、残っている歯の寿命も縮めかねません。噛む力が低下すると、お肉(タンパク質)や野菜(繊維質)が噛み切れなくなり敬遠するので、低栄養になる傾向が高まります。
体重計に乗っていますか

咬合力の数値が低くなることは、実は全身の筋肉や体重が落ちていく意味合いがあります。口の力が弱るだけで、なぜ体重まで減るの?と不思議に思われるかもしれません。咬合力の数値が低いということは、お肉や噛みごたえのある野菜などをしっかりと噛み砕くことが難しくなっているサインです。無意識のうちに、噛みやすい柔らかいもの(うどん、お粥、パン、柔らかいお菓子など)に偏ったものばかりを食べるようになりがちです。こ柔らかい炭水化物中心の食事に偏ると、体をつくる最重要栄養素であるタンパク質(肉、魚など)の摂取が減るので必要なカロリーが大幅に不足します。食事からタンパク質が入ってこないと、体は生きるために自分自身の筋肉(手足や体幹の筋肉)を分解して栄養を補おうとします。全身の筋肉量が落ちることで、結果として体重減少につながるのです。筋肉が落ちると外で出るのが億劫になり、お腹も空かなくなるため、さらに食が細くなっていくという悪循環に陥りかねません。
お家でできる対策
噛む力や飲み込む力が低下しているときでも、しっかりとタンパク質やカロリーを補給できる食事を心がけましょう。食材を噛みやすく、かつ栄養価を高く仕上げるために
・ひき肉や卵、豆腐などは強い咀嚼を必要とせず、効率よく良質なタンパク質を摂取できます。
・隠し油脂、片栗粉などでとろみをつけると、むせにくく飲み込みやすくなります。
・隠し包丁を入れる
など工夫しましょう。また意識して左右均等に噛む習慣をつけます。 頬やこめかみ周辺の噛む筋肉を優しくほぐしたり、お口を開閉する運動をしたりして顎の負担を軽減してみましょう。
歯科医院での治療
合っていない入れ歯の調整、虫歯や歯周病の治療、抜けた部分にブリッジやインプラントを入れるなど、しっかり噛める環境を整えましょう。失った歯が多いと一番噛めていたところまで戻すことはかなり難しいです。若い頃からの定期健診をお勧めするのは、そういう理由があるのです。
まとめ
ちょっと噛みづらいなというお口のささいな変化をオーラルフレイルと呼びます。始まりはいつの間にか始まっています。放置していると全身の筋肉が衰えるサルコペニアや、要介護の一歩手前であるフレイルという状態になってしまいます。極端な変化がある訳ではないのでなかなか気づきにくいです。定期健診に合わせて簡単な検査を受けることで自分の口腔機能がどうなっているかを知ることができます。また半年毎に検査を受けることで、機能が維持できているか、落ちているかを知ることができます。何でもそうですが、早め対策を打つことが健康維持のために重要です。知るだけではなくご家庭での自主練が大切になります。三日坊主ではダメです。出来るだけ人様に面倒掛けず人生を駆け抜けたいと思いませんか。



