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開咬とは

前歯が咬合していない状態のことです。そばやうどんが前歯で噛み切れません。見た目に空いている場合と前後的に空いていて、見た目にはわかりにくい2パターンあります。何故開咬が起こるのか、その発生機序には多くの要因が関わっており、単一の原因ではなく遺伝的要因、習癖、成長発育のバランス、親知らず、などが複雑に絡み合っているとされています。
要因はいくつかある
骨格的要因
顔面の垂直的成長が強い、いわゆる馬面タイプでは、下顎骨が後下方へ回転しやすく、前歯がかみ合わなくなることがあります。後下方への回転とは、横顔を右から見たとき時計回りの回転する動きのことです。下顎が後ろかつ下方向に回転すると、正面から見ると顔が長く見えます。特に成長期において下顎骨が後下方に回転してしまうと、前歯の被蓋が失われ、開咬傾向が強まります。
歯槽性要因
親知らずが斜め方向や横向きに萌出すると、その手前の第二大臼歯を押して歯列全体のバランスが崩れ、奥歯の咬み合わせが高くなります。奥歯が高くなると前歯が噛み合わなくなります。割りばしなどを奥歯だけで噛むと前歯が噛まないと思います。少し極端ですが、感じ的にはそんな感じです。
機能的要因(習癖)
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指しゃぶりが長く続いたり、おしゃぶりを長期使用していると、上下の前歯の間に隙間ができてしまいます。そういう集患を止めれたとしても、時期を逸すると嚥下や発音時に舌を前方に突き出す癖が付いてしまっていると、開咬になります。口ポカンだと上下の前歯間に舌が入り込みやすくなるので開咬になりやすいです。そこに舌を入れないと嚥下することができないのです。アデノイド、扁桃肥大による気道狭窄で口呼吸が強いと、開咬の原因になると言われています。まれに巨舌症という舌が著しく大きくなっている疾病もあります。舌が大きいので口の中に収まりが付かず、上下の前歯の間に常態的に舌を差し込むので開咬になったりします。
親知らずの影響はかなりある!

親知らずが生えることだけで開咬になることはありませんが、奥歯の噛み合わせのバランスを乱すことはよくあります。直接原因ではありませんが、親知らずを抜去してすることで臼歯の噛み合わせが安定するが多いです。開咬の治療で親知らずを抜歯することは重要になります、というか必須です。開咬の治療のみならず噛み合わせの安定を妨げる要因になるので親知らずは抜歯された方がよいでしょう。
親知らずを抜かないことはあるのか
親知らずは顎の関節の位置に最も近く、僅かでも高いと顎をずらしてしまう原因になります。もちろんそこが高くなると前歯が空いてくる原因になります。基本的に開咬治療の場合抜歯が基本になります。ただし抜歯などで歯の数が減っていたりすれば、失った歯の代用として使うことも可能性としてあります。また上下の親知らずが真っすぐ生えていてしっかり噛んでいる場合、まれに抜かないこともあります。
開咬の治療は 年齢、原因、重症度によって異なります。
小児期(乳歯列・混合歯列期)
長期の吸啜習癖、つまり指しゃぶりやおしゃぶりは前歯部開咬の最大要因です。やめるだけで自然改善することもあります。ですから理想は3歳までに中止できればベストです。止めさせることはなかなか難しいのですが、やってない時は褒める、やってしまったら悲しむ、という母子の関係性でやめさせるように持っていく他ありません。アデノイド、扁桃肥大、鼻疾患などの問題があって呼吸しづらくて、指しゃぶりをして呼吸を確保していることもあります。止めれないときには耳鼻科と連携して処置することが必要です。鼻呼吸できることが基本です。指しゃぶりやおしゃぶりが止めれたら、舌を正しい位置に誘導する訓練が必要です。その場所はスポットポジションと呼ばれ、上顎前歯の後ろの、歯と歯茎の境目です。この位置を覚えるのがMFT、口腔筋機能療法です。
学童期から思春期にかけて(成長期)

成長発育を利用して時期です。この時期を逃すと難しくなっていきます。習癖を取り除いておくことは前提条件です。上顎骨は10歳までにほぼ成長を終えます。下顎の成長はしばらく続きます。(男児18歳、女児15歳頃まで)下顎が後下方に回転しないようにしなければなりません。上顎が正しく前方に成長出来ていないと下顎が前に成長出来ません。上顎の成長が終わる前に正しく成長させることが大目標です。当院ではマウスピースの柔らかさとしなやかさを用いて顎を拡げるマウスピース矯正を行っています。矯正だけでなく同時に舌の筋機能訓練も同時に行います。成長期のうちであれば成長を正しいラインに乗せることができます。
成長終了後(成人含む)
大きくは2つに分かれます。軽度であればマルチブラケット矯正やマウスピース矯正、重度であれば顎矯正手術と矯正を併用して上下顎の位置関係を改善していきます。軽度だと親知らずの抜歯と歯列不正の改善で後下方へ回転している下顎を前方に回転させる可能性が高いです。(開咬の改善)開咬の状態で長くいると生体もその環境に慣れていますから、前上方に回転するかしないかは適応力によっても大きく異なります。
矯正で開咬が治るメカニズム
圧迫されている関節を解放する

開咬症例の中には、下顎頭(耳の前にある、下顎を開け閉めすると動くところ)が後上方に押し込まれて関節円板や後方結合組織に圧迫が生じていることがあります。嚙み合わせを治すと、関節窩内での圧迫が減少するので下顎頭がやや前下方に位置取りできるようになるのです。この下顎頭、顎の関節の位置の変化に伴って下顎全体が反時計回りに回転し、前歯部の開咬が改善されることが多くあります。開咬の場合多くは関節円板の後方転位や圧迫感を伴って下顎が後ろに押し込まれていることが多いので、噛み合わせをよくすることで開咬が改善することが多いのです。
開咬治療のリスク
全てのケースが噛み合わせの治療で良くなるわけではありません。下顎骨や上顎骨の垂直的過成長、舌癖や口呼吸などの機能的要因が主な原因である場合、関節円板の不可逆的変形や高度の変性が起こっている場合、関節構造がすでに適応しきっていて下顎が前方に出ない場合などです。病態を見極めた上での治療になります。下顎の前方への適応が見込めない場合に前歯を噛ませようとすると、奥歯を骨にめり込ませ、前歯を伸ばすということも選択肢となります。矯正力を使っても奥歯をめり込ませることは難しいですし、前歯を伸ばすと歯が長くなり、審美性に欠けます。また骨に埋まっている部分が少なくなりますし、被せ物で対応しようとしても植わっている部分と口腔内に出ている部分のバランスが良くないので、歯が揺れてくる原因にもなります。
開咬は再発リスクが高い

開咬は後戻りしやすい不正咬合です。舌癖が残っていると再発する可能性はかなり高くなります。折角前歯が閉じても上下の前歯の間に舌を入れ込む癖が残っていると、前歯は開いてきます。感じていないかもしれませんが、筋肉の力って凄いんです。治療が終わって前歯が閉じたら舌の位置や嚥下習慣を安定させることが最も重要です。時間と費用をかけて直しても後戻りしやすいです。治療の恩恵は必ずありますが、治療結果を維持するための努力は必要です。



