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皆さん、お口ってどれくらい開きますか?
口を開けて上と下の前歯の隙間に人差し指一本入れられたら、一横指、人差し指と中指を引っ付けて縦にして入れられたら二横指、薬指を足して縦に指三本分入れられたら三横指、と開口度の物差しにします。通常頑張れば三横指くらい開けることができます。頑張らなくても二横指くらいは開けることが出来るのが普通です。それが出来ない、というのは何らかの原因のある開口障害が疑われる状態です。主な原因は大きく分けて 説明してみます。
炎症や腫瘍などの問題
親知らずが口の中に少し出ていると、親知らず周囲の歯ぐきに炎症が起こり、噛む時に使う筋肉である咬筋や翼突筋に波及して、筋肉の収縮が起こります。強い炎症で開口障害を引き起こすことがあります。広範囲に及ぶと蜂窩織炎になります。また顎の骨や周囲組織に腫瘍があっても起こることがあります。親知らずが原因であれば、抗菌薬(いわゆる化膿止め)を服用する、膿が出せそうなら、排膿処置を行います。炎症が落ち着いたら抜歯すると良いでしょう。感染がきついようであれば入院管理が必要になります。腫瘍の場合、画像診断(CT・MRI)で確認し、外科的治療(関節授動術・腫瘍切除など)を行います。
顎関節の問題

耳の前に指を当てて口を開けてみると、顎が動くのがわかると思います。顎関節の中に関節円板という組織があります。関節円板が前にずれると関節の動きがおかしくなり、スムースに動けなくなって口が開かなくなります。関節円板が顎関節をスムースに動かす重要な役割を果たしています。適切な位置にないと顎を大きく開けられなくなります。顎関節症の症状の一つです。顎に外傷を受けたり、顎の関節の骨折、何らかの理由で関節に炎症が起こると、顎関節の中の組織が癒着して動きが固まってしまうことがあります。
顎関節症由来の場合の対処法、治療法
緊急性がとても高い場合、例えば朝起きたら全然口が開かないなどの場合は消炎鎮痛薬や筋弛緩薬を服用します。筋弛緩薬に関しては一般の歯科医院では処方出来ません。病院歯科での処方になります。顎関節症の原因は色々あります。関節円板の位置に問題があればスプリント(マウスピース)療法やマウスピース矯正が第一選択になります。改善しない場合は口腔外科にて関節腔洗浄や鏡視下手術を行います。
家でのセルフケア
硬い食べ物はなるべく食べない、好んで食べない
マッサージをする
安静にする
暖かいタオルなどで温める(温罨法)
無理ない範囲で開口訓練したり、顎の関節のストレッチを行う(理学療法)
ストレスの是正
TCH(上下歯接触癖)のサインが出ているようであれば是正する
顎関節症のなかでも「関節円板のズレ(転位)」は大きな要因の一つです。以下にわかりやすく説明します。
顎関節症の原因は

関節円板はなぜズレるのでしょうか?先程来述べていますが、関節円板は、顎関節の骨どうしが直接こすれないように保護する役割をしています。通常、関節円板は靭帯や周囲の筋肉によって関節頭の上に安定して位置します。しかしいろんな要因で関節円板は(多くは顎関節の前に)転位します。
・噛みしめ・食いしばりで、顎関節が後ろに、関節円板は前に、引っ張られる。
・関節円板を固定している靭帯が何らかの原因で伸びたり損傷すると、円板が安定できなくなる。
・上下の奥歯の咬合が低くなっていると、関節に力がかかり、関節円板が前に押し出されやすい。
・硬いものを噛んだ、顎を強く打った、大きなあくびをしたなど
・慢性的に顎に負担をかけるクセが持続的に関節円板を前方へ引っ張ったり、関節に偏った力を加えることでズレが起こりやすくなります。
クセ、それを態癖と言います。

関節円板をずらす態癖は色々あります。思い当たることをしていないかチェックしてみてください。食いしばり・噛みしめ・歯ぎしり、があると筋肉の力で関節円板が前方にずれやすくなります。片側だけで咀嚼する傾向が高いと一方の顎関節だけに負担がかかり、そちら側の関節円板が偏位しやすくなります。また、無意識に仕事をしながら下顎を前に突き出したり、横にずらしたりしていませんか?そんなことでも関節円板を持続的に引っ張っていることになります。唇や頬・舌を噛む癖、ありませんか?これも顎の位置を偏りやすくし、関節への不均衡な負担につながります。頬杖やうつ伏せ寝、横向き寝は下顎を後方に押し込み、関節円板を前方へ押し出しやすくします。自分で気づかないことが多いのですが、これらのクセ、態癖は直しましょう。これから述べていく治療をしても態癖があると治りません。
関節円板のズレを治す方法
一度ズレた円板を完全に元の位置に戻すことは、慢性化して靭帯が伸びてしまっている場合は難しいです。ただし、機能的に症状を改善したり、ズレを是正する方法はあります。咬んだときの上下の歯の高さを挙上することで下顎頭がやや前下方に誘導されるので、関節円板が元の位置に戻るのです。また後方組織の血管や神経への圧迫が減ります。逆に言えば、咬み合わせの高さが低いと、下顎頭は関節窩の奥に押し込まれるような位置になって関節円板がズレるのです。咬み合わせが高くなることで、筋肉が少し伸ばされ筋緊張が緩みます。スプリントやマウスピース矯正で、関節を休ませるポジションがつくれるので、関節円板が元の位置に戻り、筋肉にかかる力が緩んで、お口が開きやすくなるという環境が整っていくのです。
スプリントとマウスピース矯正の違い

スプリントは装着することで咬合を挙上します。ですからスプリントを外すと高さがまた元通り低くなります。ですから一時的な処置になると言えます。関節円板のズレがさほどでない時はスプリントの適応です。マウスピース矯正の場合は、咬合を挙上するだけでなく、その高さに歯列や咬合を誘導し、関節円板の位置を適切な位置に戻してキープすることができます。ですからどちらかと言えば、関節円板が戻った位置の高さで噛み合わせを再構成する方がよいかと思います。
注意点
咬合高径の挙上量は適切でなければいけません。高くしすぎると、かえって筋肉や関節に新たな負担をかけてしまいます。予め、どのくらい噛み合わせの高さが低くなっているか、噛み合わせを高くした時に顎関節は適応してくれるか、など確認しながら治療しなければなりません。関節円板がズレている状態が慢性化していると、元の位置に戻すよりも痛みなく機能できる状態にすることが治療の主眼となることもあります。
どうして咬み合わせが低くなるのか

咬合高径(上下の歯が咬み合った時の垂直的な高さ)が低くなる理由はいくつかあります。奥歯を失うと、失った部分を義歯やブリッジによって修復しますが、歯を削ったり、歯が揺れたりすることで被せ物や入れ歯が低い高さになる傾向にあります。長年の噛みしめや歯ぎしりでも歯が削れて咬合高径が低下していきます。同じ硬さの物を毎日体重分くらい擦り合わせていけば、削れていきますよね。高齢者に多いと言えますが、一概にそうとは言えません。日本人の多くは結構若い時期から歯周病に罹患しています。歯周病により抜歯に至ることもありますから歯の喪失は若くても起こり得ることです。
歯を失わないために
噛みしめ癖(TCH)、態癖のある方はやめる
TCHの方は、夜間歯ぎしり用マウスピースを使用する
抜歯にならないように、定期健診を受け歯周病対策、虫歯対策に努める。
硬い食べ物を避け、歯が割れないように気を付ける。
どれも出来ることだと思います。ぜひ取り組んで下さい。



