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永久歯の数が足らない、と聞いたらビックリしますよね。
乳歯が抜けてしばらく経つのに永久歯が生えてこないとか、学校検診で指摘されて永久歯の数が足りない先天性欠如を知ることになって受診されることも少なくありません。先天性欠損は、遺伝的要因が主な原因とされていますが、環境的な要因や全身疾患、発生過程の異常も関係していると言われています。先天性欠如の約70〜80%は遺伝的背景があるとされています。家族にも歯の欠損があるケースが多く、常染色体優性遺伝が関与するともいわれます。特に上顎、下顎の第二小臼歯や上顎側切歯の先天欠如は、遺伝性が強い傾向があります。永久歯の先天欠如の頻度は日本人で約7%前後らしいです。

発生過程での異常(歯胚形成の失敗)
歯は胎児期に歯胚(歯の芽)から発生しますが、この歯胚が形成されない、あるいは途中で消失することで、永久歯が作られなくなります。歯胚の形成は胎生6〜10週に起こるため、この時期の異常(栄養不足、薬剤、感染など)も影響する可能性があります。まれに、母胎の病気(風疹や栄養不良)、特定の薬剤の使用などの要因で歯胚の形成や発育が阻害されることもあります。
多数の永久歯の欠損もある
複数歯の欠如(6歯以上)や全欠如(無歯症)は、遺伝症候群の一部症状として現れることがあります。外胚葉異形成症、Down症候群、クルーゾン症候群、ゴールデンハー症候群など
乳歯はあるのに永久歯だけ欠如するのはなぜ?
乳歯と永久歯の歯胚は別々に形成されるため、乳歯が正常に生えていても、永久歯胚が作られていないことがあります。特に第二小臼歯や上顎側切歯は、進化的に退化傾向にあるとされ、永久歯が欠如しやすい部位になります。
先天欠損があるとどんな影響があるのか
先天的に1~2歯の永久歯が欠損している子どもにおいては、乳歯が抜けてしまう時期、欠損の部位や数、周囲の歯の状態、咬合関係によって、顎の成長に次のような影響が出る可能性があります。
噛む力のバランスが崩れ、顎の成長が左右非対称になる可能性がある
後から生えてくる永久歯のない乳歯が抜けてしまうと、歯の並びに空隙が出来てしまいます。そちら側では噛めないので、反対側ばかりで咀嚼する癖がつき、顎の左右の筋肉の発達に差が生じやすくなります。これにより、顎の偏位(非対称)が起こることもあります。また前後の隣接歯が倒れこんだり、噛み合わせの反対の歯が少しづつ伸びてきて咬みにくくなります。結果として、上下的な顎の成長がアンバランスになります。

永久歯の欠如により乳歯が長く残る
交換する下顎小臼歯がない乳歯は歯の根が吸収されないので、長く機能し続ける傾向にあります。永久歯の萌出する力で上下方向に顎は成長していくのですが、乳歯のままだと萌出する力がないので高さが確保されません。咬みあわせが低くなり、下顔面の垂直的成長が抑制されることもあります。顎側切歯の先天欠如 があると前歯に隙間ができ、前歯の真ん中と顔の真ん中が合わなかったりするので。顔貌の非対称が起きたりします。
多数の先天欠損がある場合
5〜6歯の永久歯の先天欠如(中等度の先天性欠如)になると、これまで述べてきたことがすべて起きうる可能性が高くなります。乳歯が残っていてくれたら良いのですが、比較的早期に抜けてしまうと成長が終わってから欠損部位を補うのではなく、成長期から顎の発育誘導、咬合育成、歯列形成、審美・補綴などの長期に渡る治療が必要になります。
早期からの対応とフォローアップが重要
先天欠損歯があっても、早期から咬合誘導や矯正治療を行うことで顎の成長を良い方向に導くことは可能です。成長の観察と適切な時期に補綴スペースの確保、空隙の閉鎖を行い、成長終了後の補綴やインプラントが行いやすい環境を整えておくことが重要です。

部位別永久歯先天欠如の治療方針
哺乳や離乳の時に適切な負荷をかけて口の機能を獲得できているのが条件にはなりますが、顎は親知らずを除き、永久歯の数に合っただけしか大きくなれません。口ポカンは口の機能が獲得できていないので顎は適切な大きさに成長出来ませんから、歯並びはよくないです。先天欠損があれば数が少ない分だけ顎は大きくなれません。
上顎側切歯(上顎の2番目の前歯)
頻度が高い先天欠如部位です。審美的・機能的影響が大きいため、特に早期から治療に取り組む必要があります。上顎の成長は10歳がピークです。ピークを越えると顎は大きくなれません。本来永久歯萌出してくる部分に成長後、インプラントできるだけのスペースを確保しなければなりません。上顎骨の成長時期に矯正治療でスペース確保しなければなりません。成長が終わるまでインプラントはできませんので長期的な管理が必要になります。それまでは矯正の保定装置をしようしていただき、空隙が目立たないようにします。
下顎第二小臼歯(下の奥から3番目)
非常に多い欠損部位です。奥歯なので噛み合わせと骨格に大きな影響を及ぼします。基本的に第二乳臼歯を長期保存します。 永久歯ではないため、将来的な補綴が必要になることが多いです。本来生えてくる永久歯の幅に形態修正することもあります。その乳歯が抜けてしまったら、成長後にインプラントで補綴できるようにスペースを確保するようにします。成長終了までは矯正の保定装置をしようしていただき、空隙が狭くならないようにします。
上顎第二小臼歯(上の奥から3番目)
下顎の同じ歯に比べて欠如頻度は低いが、同様の処置が必要です。基本的には下顎第二小臼歯と同じ対応になります。
下顎側切歯(下の2番目の前歯)
比較的稀だが、左右非対称な咬合になりやすいです。歯の幅は比較的小さいので隣接歯を移動して空いているスペースを閉鎖することが多いです。逆に本来の永久歯の萌出するスペースを、成長が終わるまで保持して、成長後に補綴することもあります。
矯正治療と補綴治療の連携
本来成長するだけの大きさにしたいのでスペースを確保します。永久歯列が完成し成長が終わってから(女子16歳〜、男子18歳〜)インプラント治療するのがベターです。ブリッジも検討する補綴方法ですが、人生の長さを考えると歯を大きく削合することを若年のうちに行うことは悪手だと私は考えます。(下顎前歯に限っては接着性ブリッジという選択肢はアリです。削合量がかなり少ないからです。他の部位への使用は脱落の可能性が高くなるからです。)

中等度先天性欠如(5~6歯欠如)の治療方針
今まで述べたすべてを行うことになると考えられます。欠損歯が多いと顎の発育が不十分になりますから、本来なるべき顎の大きさまで成長させなければなりません。欠損部のスペースを確保し、欠損部を成長後にインプラントで補綴するという最終目標になります。長期にわたる治療となります。上顎の成長は10歳がピークです。それまでに取り組み、インプラントなどによる欠損部の修復まで7〜10年の長期的管理が必要になることも珍しくありません。必要に応じて筋機能療法(MFT)、上顎急速拡大装置など、将来の咬合や顔貌への影響を最小限にするための取り組みもしていかなくてはなりません。

早期から取り組むことが超重要
1歯の永久歯の先天欠損であっても、これまでお話した通り覚悟と根気が必要になります。顎の成長を促し、長い生涯を健康に過ごすための取り組みだとご理解ください。治療の開始時期は早ければ早いに越したことはありません。



