定期健診でお見えになる時に、当院では必ず舌をチェックしています。舌の色、舌の形、舌苔(ぜったい)舌の動き、などなど。舌は身体の内側をうつすスクリーンと言われます。内科でも舌を診てもらいますよね。舌を観察することで、東洋医学では全身の状態、歯科医学では口腔内の健康状態を把握する手がかりになるとされています。
東洋医学における舌診
あまり詳しくはないのですが、東洋医学では、舌は「内臓の鏡」とされており、気・血・水のバランスや五臓六腑(肝・心・脾・肺・腎など)の状態が舌に現れると考えています。その五臓六腑の状態・冷え熱のバランスを観察し、生活・食事・漢方指導に活用します。また口腔清潔度・栄養・神経・全身疾患のサインを読み取り、早期発見・予防に役立てようとしています。
舌の色
簡単に言えば、舌の色で全身が熱をもっているか、冷えているかを判断します。赤い舌だと熱、白っぽい舌だと冷えを表しています。自分で毎日確認してみてください。白系か、赤系か、続くようなら身体の状態がその傾向にあります。ご自身では、食べ物や運動で改善させる方法などあります。
舌の色に応じた食事療法と具体的な献立
冷えタイプ(舌が白い人)
ポイントは体を温める食材を中心にしましょう。香辛料や発酵食品、根菜類が効果的です。冷たい飲食物、生野菜、果物のとりすぎに注意です。温かいお茶やスープを意識的に摂ることはよいことです。ただし、あったかい飲み物をいくら飲んでも冷え性は治りません。水分の飲み過ぎは、冷え体質を作り出す元になるので、食事のスープ以外は、喉が渇いたときに一口飲む程度にしておきましょう。
おすすめの食材
温性食材 生姜、ねぎ、にんにく、シナモン、山椒、唐辛子
根菜類、にんじん、大根、ごぼう、かぼちゃ
発酵食品 味噌、納豆、ぬか漬け、キムチ
肉・魚 鶏肉、羊肉、鮭、サバ
穀類 黒米、もち米、玄米、お粥
1日の食事例
朝食
黒米入りおかゆ
味噌汁(生姜+ねぎ+かぼちゃ)
温かい番茶
昼食
鮭の塩焼き
ひじきとにんじんの煮物
ご飯(玄米または雑穀米)
お吸い物(大根+わかめ)
夕食
鶏肉と根菜の生姜煮
納豆(ねぎ入り)
ぬか漬け

舌が赤い人の食事療法
ポイントは体の熱を冷ます食材を意識することです。緑の野菜、豆腐、果物、海藻類がグッド。逆に辛いもの、脂っこいもの、アルコール、刺激物を控えましょう。
おすすめの食材
涼性・寒性の食材 きゅうり、セロリ、トマト、苦瓜、レタス
海藻・豆類 もずく、わかめ、豆腐、緑豆
果物 スイカ、梨、りんご、バナナ
穀類 はとむぎ、とうもろこし、そば
飲み物は冷やさず常温で 麦茶、緑茶
1日の食事例
朝食
冷やし豆乳そば
トマトとレタスのサラダ
常温のお茶
昼食
豆腐ときゅうりの冷やし中華風
油少なめの苦瓜とトマトの炒めもの
とうもろこしご飯
常温のお茶
夕食
白身魚の蒸し焼き(セロリ添え)
わかめと豆腐の冷製味噌汁
甘さ控えめの梨のコンポート
季節や体質に合わせることも大切です。
夏は熱がこもりやすいので涼性食材を多めに。冬は冷えやすいため温性食材を多めにしてみてはいかがでしょう。舌色が混在する(白っぽくて赤いところがある)、あるいは日によって変わることもよくあります。すべてが分かる訳ではありません。目安、くらいにされるとよいでしょう。

食べ物だけでなく、生活習慣を整えることも大切です
冷ますための方策は考えつきますが、身体を暖かくする食事以外の方策はなかなか思いつきません。以下に箇条書きします。これも参考程度に取り入れてみてください。
適度な運動をし、 筋肉を動かすことで、熱を生み出しやすくなる。
シャワーだけで済ませず、湯船に浸かって体を温める。
腹部を温めて、内臓の冷えを防ぐため、腹巻きを活用する。
肌を露出することで熱が逃げます。周りに合わせなくていいので、薄着をせずしっかり防寒対策をする。
歯科における舌の観察
舌は口腔内の健康状態を反映する組織と捉え、全身疾患の兆候を含めて診断材料にします。色、形、舌苔の量、乾燥、舌の裏などを診ています。
舌の色
すべてがわかるということではありませんが、何かが起こっているのではないかという指標になります。赤い色の記載が多くなりましたが、白くても同じ原因ということもあります。確定的なことは内科受診していただいた上方がよいでしょう。
鉄欠乏性貧血
鉄不足により赤血球が作れず、酸素が不足して舌が赤くツルツルしてきます。ヒリヒリすることもあります。鉄分の多い食品(レバー、赤身肉、小松菜、ひじきなど)とビタミンC(吸収促進)必要に応じて鉄剤を服用するとよいでしょう。
ビタミンB12欠乏
動物性食品の摂取不足や吸収障害によってビタミンB12が不足すると舌に炎症がおきて赤く見えます。舌が腫れたようになるので表面がツルツルした感じになります。肉、魚、卵、乳製品をしっかり摂取することを心がけてください。
栄養失調(たんぱく質不足など)
でも舌の色が濃くなる傾向にあります。偏食・ダイエット・高齢者などに多い。良質なたんぱく質(魚、卵、大豆)やバランスの取れた食事を意識してください。
水分不足、ドライマウスなど
舌が乾燥することで舌が赤くなります。ドライマウスの自覚のある方は十分な水分補給・口腔保湿・唾液腺マッサージなどでたいおうするようにしましょう。
地図状舌
舌の表面に赤くツルツルした部分と、白っぽく縁取られた部分がまだらに現れ、舌の上に模様ができる状態のことです。模様の位置は数日〜数週間で移動して変化します。通常は痛みやかゆみがなく(ただし、刺激でしみることも)多くの場合は無症状で自然に治るため、治療の必要はありません。原因ははっきりとは分かっていません。食事でしみる、痛みがある 、症状が長引く、拡大する 、場合には念のため口腔外科を受診しましょう
白板症
こすっても取れない白い斑点や粘膜の肥厚”のことを言います。特に舌の側面などに見られることが多いです。初期は無症状で、痛みはほとんどありません。長期間変化がなく、少しずつ広がることもあります。白板症は前がん病変に分類されます。がんではないが、がん化する可能性がある粘膜病変です。義歯、尖った歯、頬を噛むなど慢性的な刺激、タバコ、アルコール、が原因ではないかと考えられています。定期的に歯科受診していただき、必要に応じて口腔外科で組織検査(生検)を行い、がん化の有無を調べることもあります。

口腔カンジダ
白苔が厚くて取れない場合、口腔カンジダ症を疑います。何かの病気で抗生剤を長く投与されていると口腔内細菌が減少し、カンジダ菌すなわちカビが口腔内に定着して舌が白くなります。食物繊維が少ない食事を続けていると、舌の上に汚れが溜まります。これを舌苔と言います。この舌苔は同じように白いのですが、歯ブラシなどでやさしく擦ると取り除けます。カンジダ菌は取り除くことはできません。
舌の形
噛みしめ癖(tooth contact habit)
舌の側縁がギザギザしていて歯型のようだと、噛みしめ癖の可能性があります。筋緊張や咬合の不調和がると判断します。ストレスに起因することもあります。自覚される方もありますが、無意識に歯を接触させていることがほとんどです。他の兆候も口腔内に見つけることが多いです。
がんや腫瘍の早期発見
当院では定期健診時に舌の下、側縁、裏側を観察しています。他にも歯茎や上あごなど、軟組織も拝見します。もし気になれば写真を撮影して経過を追います。明らかな異変があれば口腔外科の受診を勧めています。
舌の痛みや違和感
全身疾患やストレス、舌痛症、シェーグレン症候群、味覚異常、糖尿病なども考えられます。こういった場合、内科的な治療が必要になります。
自分でもチェック、歯科でもチェックしましょう
毎日でも歯ブラシのついでに見ようと思えば見れます。毎日見る必要はありませんが、ときどき自分の健康状態を確認してみてください。歯科医院ではビタミンを投薬出来ませんので、先に内科受診されるのもよいでしょう。



