歯周病が早産、低体重児出産に影響を与えていることがよく知られています。随分認知されてきていると思います。皆さんも聞いたことがあるかもしれません。今回はそのことについて少し深く取り上げてみたいと思います。
目次
早産とは
早産とは妊娠22~37週未満の出産を指します。その中でも28週未満の出産を超早産と言います。早産は出産全体の約5%。食生活との関係があるとも考えられるそうですが、全体にたいしての早産の比率は今も昔もさほど変わっていないそうです。2500g未満で出生した赤ちゃんを低出生体重児と言います。(いわゆる低体重児)早産で生まれた赤ちゃんのほとんどが低体重児です。早産で生まれると成長が未発達で産まれてくるので疾病リスクが高くなると言われています。ちなみに37週~42週は正期産、42週を越えての出産を過期産と言います。
早産の原因
- 子宮内感染
- 子宮頸管無力症
- 全身性炎症
の3つが主な原因です。歯科と関わるのは3の全身性炎症なので、そちらの話をしていきますが1と2については簡単に記載します。
子宮内感染
早産全体の8割を占めていて一番多いです。膣から子宮に細菌が入って感染が起こります。感染による炎症が原因となり陣痛の誘発や子宮の収縮、破水などを引き起こして早産の危険性が高まるそうです。
子宮頸管無力症
本来閉じている子宮頸管が緩んでしまい流産や早産を引き起こすそうで、原因がよくわかっていないそうですが体質とも言われています。
全身性炎症
体のどこかで炎症が起こると(外傷なども含む)サイトカインと呼ばれる炎症物質が産生されます。それが血中に取り込まれ全身に送られて他の部分でも炎症を起こしてしまいます。歯周病は歯垢や歯石を足掛かりにして歯周病菌が炎症を起こす疾患です。歯周病で産生されたサイトカインが肝硬変や糖尿病などを悪化させる原因の一つであることが分かっています。同じく歯周病で産生されるサイトカインが子宮収縮を増強させると考えられるようになっています。
歯周病と早産の関係性
- 妊娠中期以降、特に女性ホルモンが増加することで歯周病菌が増えます。
- つわりなどもあり、口腔清掃が滞りがちになり歯肉に炎症が起こります。サイトカインが産生されます。
- 血中を通してサイトカインが全身へ運ばれます。
- サイトカインが子宮収縮を引き起こすきっかけになって、早産になる。
諸説ありますが、歯周病と早産はこのようなメカニズムと考えられています。そのため妊娠中期から後期にかけて歯科受診が勧められていました。でも、もっと前の段階から歯周病と早産は関係あるという研究が主流になりつつあります。
女性ホルモンと歯周病
先程女性ホルモンの増加の話が出ましたのでそのお話を少しします。女性ホルモンにもいろいろあるのですが、特にエストロゲンやプロゲステロンは、血管を拡張させる働きがあります。風船は萎んでいると割れづらいですが、膨らませると少しの刺激で割れやすくなります。歯茎の中の毛細血管が拡張されるので歯肉が腫れます。少しのブラッシングの力で血管が破れて歯茎が出血するのです。また、女性ホルモンは、特定の歯周病菌(Prevotella intermedia菌など)の成長を助ける環境を作り出してしまいます。このように歯周病菌が増えることで、歯茎に炎症が起こりやすくなるのです。
妊娠する前からケアする必要がある。
早産や流産患者さんの胎盤や卵膜から歯周病菌(菌の塊)が発見されていて、炎症を起こしていることが分かってきました。ということは、妊娠初期でも歯周病が原因で早産や流産を引き起こすリスクがある、ということです。つまり妊娠する前から歯周病の予防や治療をしておくことが重要だということです。本来は妊娠するしないにかかわらず、生涯口腔内のケアは大切なのです。妊娠してから受診することも、正しい授乳の仕方や離乳食の与え方を知っていただくために大切なのですが、普段から予防に努めていただきたいと思います。
健康に妊娠しましょう
早産と歯周病には深い関係があります。歯周病に罹患している人はしていない人の7倍の早産、低体重児出産のリスクがあるというデータが出ています。歯周病の低体重児出産のリスクは、高齢出産やアルコール摂取と比べても突出して高いです。妊娠前からしっかり歯周病の治療、そして予防を行っておくことが大切です。ご本人だけでなくパートナーにもその意識をもってもらわないといけません。このことも、とても大切なことです。(パートナー間での歯周病菌の伝播が多いのです。)
妊娠期のセルフケア
妊娠中は体調の変化が著しいです。無理なく少しでもよいので口腔ケアしてもらえるとありがたいです。
におい、味がだめなら好きな味、低刺激なものを選ぶ。
歯磨きで気分悪くなるなら洗口液だけでもする
小さな歯ブラシを選ぶ
奥は洗口液、前は小刻みブラッシング
できそうな時だけブラッシングする
できることだけ。無理は禁物です。
低体重で生まれると何があまり良くないのでしょうか
短期的な問題と長期的な問題が考えられるので、そのことについて簡単ですが述べていきます。
短期的な問題
呼吸器
低体重児は肺が十分に成熟せずに生まれてきますから十分機能を果たすことができない可能性があり、呼吸困難症候群や無呼吸発作を起こしやすいとされています。特に早産児は、肺サーファクタント(肺胞の表面張力を調整する物質)が不足しているため、呼吸が難しいようです。
体温調節が難しい
体脂肪が少ない状態で生まれてくるため、体温をうまく維持できず、低体温になりやすい傾向があります。
免疫力が低くなる
免疫システムが未熟な状態でうまれてくるため、比較的感染症にかかりやすいとされています。
消化器
消化機能が未発達のため、哺乳や栄養吸収が難しいことがあります。腸が未熟で、壊死性腸炎などの重篤な腸疾患にかかりやすくなることもあります。
神経発達への影響
脳が未熟な状態で生まれると、黄疸や低血糖、出血などのリスクが高まり、神経発達に影響を与える可能性があります。視力や聴力にも障害が出ることもあるそうです。
長期的な問題
神経発達や学習障害
低体重児の一部は、成長後に発達障害や学習障害を示すリスクが高くなることが報告されています。すべてではありませんが言語、運動、社交スキルなどで遅れが見られるケースもあります
慢性的な健康リスク
低体重で生まれた子どもは、成長後に高血圧、心臓病、糖尿病といった生活習慣病のリスクが高くなることがわかっています。これには胎内での栄養不足が関与していると考えられています。
呼吸器疾患
成長してからも、喘息などの呼吸器疾患や呼吸器感染症にかかりやすい傾向があります。これは肺機能が未熟な状態で生まれることに起因しているのではないかと言われています。
口ポカンの原因にも
胎児は丸まった姿勢ですが、その姿勢を覚える期間が短いと反り気味の姿勢になりやすいです。反り気味になると口が開きやすく口ポカンのリスクが高くなり、口呼吸になる可能性が高まります。
リスクを回避できるならした方がよくないですか?
これらのリスクはすべての低体重児に当てはまるわけではありません。しかしながら妊娠前からのセルフケア、プロフェッショナルケア、歯周病治療することで、リスクを減らすことができます。ぜひ日ごろからのケアに気を配ってください。