「口腔機能発達不全症」は、
哺乳期から密接な関係にあります。
0歳から12歳までお口の成長管理を行っています。
授乳の姿勢、離乳の
進め方や注意事項
おすすめの調理法や
食事の注意事項
ぷくぷくトレーニング
お子さんは大丈夫ですか?
子どもが歯科医院で受ける治療といえば、虫歯治療、歯並び治療、予防歯科と考える方が多いのではないでしょうか。
- 虫歯になったから治療する
- 歯並びが悪いから治療する
- 虫歯や歯周病にならないために予防する
実は、お口の中の問題はこれだけではありません。
お口には、まだ皆さんにあまり知られていない大切な機能があります。
口腔機能発達不全症とは?
「食べる」「話す」「呼吸する」などのお口の機能が十分に発達していない、もしくは正常な機能を獲得できていない状態のことです。
これだけ聞くと、「うちの子は問題ない」と多くの親御さんは思われると思います。
しかし、本当の意味の「食べる」「話す」「呼吸する」とは何が大切かご存知でしょうか。
なぜ今、子どもの口腔機能発達不全が問題になっているのか、お子さんの成長に何が必要なのか、ここで詳しくご説明させていただきます。
放置してはいけない
日本の子どもたちのアゴは小さくなっている
近年、日本の子どもたちの顎(アゴ)は小さくなっている傾向にあります。
生活習慣の変化により小さくなっているのです。
顎が小さくなるとどうなるのでしょうか。
口の広さが狭くなり、様々な問題を引き起こします。
顎と呼吸の関係
顎の発育不足でもっとも大きな問題が「呼吸」の問題です。
口が狭くなることで舌は咽頭方向(一般にノドと言われる部分)へ押し流され、良質な呼吸ができない状態になります。
人間の身体は、生きていくための必要なエネルギーを取り出すために、空気中の酸素を取り入れ、いらなくなった二酸化炭素を外にはき出します。それが「呼吸」です。
呼吸は休むことなく絶えず行っているものです。
健康で長生きするために呼吸はとても大切です。
顎の発育不足で起こる問題点
顎が正常に成長しないことで様々な問題が起こります。
鼻呼吸ができず口呼吸になる
口呼吸は早く、浅い呼吸の為、十分に酸素が取り込めません。
口呼吸になると、鼻のように外気に対する機能が備わっていないため、直接細菌やウイルスを取り込んでしまいます。
そのため、風邪を引きやすかったり、花粉症やアレルギー性鼻炎などの鼻水、鼻詰まりのトラブルを引き起こしてしまう場合があります。
また、唾液が分泌されてもすぐに乾燥してしまうため、虫歯菌や歯周病菌が停滞しやすくなります。
歯の健康を守るためにも、鼻で呼吸することはとても大切なのです。
猫背になる・姿勢が悪くなる
口呼吸になると、気道が狭くなり空気の通りが悪くなります。
そのため人間の身体は、呼吸をするために頭部を前屈させます。
猫背になるなど姿勢にも影響が出てしまいます。
また、首の後ろの筋肉が緊張して血行不良を起こし、肩こり・頭痛を引き起こすこともあります。
睡眠時無呼吸症になる
睡眠時無呼吸症候群は、空気の通り道が狭くなることによって、睡眠中に呼吸が止まる病気です。
舌の置き場が後ろや下に行き、気道が狭くなるのです。
良質な睡眠(酸素が十分にとれない)ことにより、いびき・朝起きた時の頭痛・慢性的な昼間の眠気・疲労・イライラ感・集中力や記憶力低下による作業効率の低下を招くといわれています。
飲み込みが悪くなる・発音がうまくできない
顎の発育不足で口が狭くなると舌が入るスペースがなくなります。
そのため、食べ物がうまく飲み込めない、発音が正しくできない、といった症状を引き起こします。
正常な顎顔面の発育ができない
大人になるにつれて顔つきが変わってきます。
顎の発育不足は、見た目の変化にも影響します。
顔の真ん中(中顔面)が前方に育たず、分かりやすくいえば、面長の顔立ちになりやすくなります。
美しい顔=上顎が前方に成長していて呼吸がしやすい顔
歯並びが悪くなる
顎の発育不足で口が狭くなるということは、歯が並ぶスペースがなくなるということです。
そのため、歯並びが悪くなります。
このように顎が正常に成長しないということは、いろんな病気や、正常な成長を妨げる要因になるのです。
構音障害とは
言葉は理解しているが、音を作る器官やその動きに問題があって発音がうまくできない状態を構音障害と言います。
きりん→きぎん たいこ→かいこ ぱんだ→ぱんが、ぱんな らっぱ→なっぱ さかな→たかな
などです。
さかな、らっぱ、パンダ、キリン、たいこ が就学しても上手く言えないとその可能性があります。
原因はさまざまですが、機能が発達過程にある小さなお子さんの場合は、経過観察を続けると正常な状態になることもあります。
年長クラスになってもサ行に問題があると対策が必要ではないかと思います。
顎の発育不足が関係していると考えられる場合は顎を正しく成長させる矯正治療が必要です。
これからご紹介させていただく食育で上顎を大きくするために前歯に刺激を与える前歯がぶりを、口腔機能トレーニングを日々行って鼻呼吸の獲得と舌の機能を発揮させることなども必要です。
歯科治療で必ず解決するとは言えませんが、トライする価値はあるのではないでしょうか。
お子さんにこんな症状はありませんか?
- いつも口を開けている
- 口呼吸をしている
- いびきをかく
- 睡眠中に呼吸が止まる
- 夜中に何度も目が覚める
- 眠りが浅い
- 昼間、眠そうにしている
- 朝なかなか起きれない
- 鼻がよく詰まる
- 風邪をひくと長引く
- 扁桃腺が腫れやすい
- 集中力が無い
- 多動性
- 食事の時、飲み物で流し込むように食べる
- 食事の時、飲み込むのが苦手
- 食べるのが遅い
- よくえずく
- 受け口
- 下の前歯が、上の前歯で見えない
- 歯並びが悪い
当院の口腔育成治療は、哺乳、離乳、離乳食、食育も含め、年齢やそれぞれのお子さんに合ったアプローチを行います。
正しい顎顔面(顎の発育)へ促し、呼吸や健康を改善していきます。
口腔機能の成長期
脳や顔の骨の80%は乳幼児期(6歳)までに完成すると言われています。
頭囲については、3歳で成人の9割が完成します。
顔面頭蓋骨の成長は、0歳から2歳までが最も重要な大きく成長する時期となっています。
脳機能、骨格、顔のかたち、顎の大きさは、適正な刺激の有無(噛む)で多様に変化していきます。
0歳から6歳は、健全な口腔機能を育むうえでとても大切な時期なのです。
哺乳期は単に栄養をとる時期ではありません
赤ちゃんの哺乳・離乳
赤ちゃんは噛むようにして飲んでいることをご存知ですか?
哺乳期は単に栄養をとる時期ではありません。
この時期に適正な哺乳をさせることはとても大切です。
哺乳の際、赤ちゃんは顎を使い噛むように飲んでいます。
舌を前方から後方へ送り込み動かすなど、この段階で食べる練習をしているのです。
- 咀嚼機能
- 送り込み機能
- 舌、口唇機能
- 口腔周囲筋
など 様々な機能を育んでいる時期です。
しっかりと哺乳することで、顎顔面の発育が正常に発達し、歯牙萌出の準備を行います。
添い寝授乳はやめましょう
寝転んで飲む姿勢は、口と胃が一直線になるため、浅飲みになってしまいます。
浅飲みは噛むことにつながらないため、顎・口腔機能の発育に適していません。
哺乳瓶の選び方
噛むようにして飲むことが大切です。
そのため、飲み口が柔らかすぎるものはあまりよくありません。
噛むタイプの哺乳瓶(硬めの乳首)
- 乳首は母乳の乳首と同じような形状のもの
- 乳輪部が大きく逆さにしてもミルクが落ちないもの
を選びましょう。
ただし、どうしても最初難しい場合は、柔らかいものから硬めのものへ変更するなど、成長に合わせて使い分けてください。
指しゃぶり・おしゃぶり
無理に辞める必要はありません。3~4歳までに止められたいいですね。
赤ちゃんの行動にはひとつひとつ意味があります。
ストレスを感じたり不安になると指しゃぶりをすることもあります。
自然にやめる時期がきますので無理に辞める必要はないと思います。
ただし、指しゃぶりとおしゃぶりは違います。
おしゃぶりは、大人が与えるものです。
使うシーンを考えて、長時間使わないようにしましょう。
離乳のタイミング
離乳食をはじめる目安は、生後6ヶ月頃と言われています。
しかし、6ヶ月になったからといって必ず離乳食をはじめる必要はありません。
成長には個人差があるからです。
お子さんの成長に合わせてはじめることが大切です。
- 首が座っている
- 地座りができる・支えなく座れる
- 手を出して何かとろうとする
- 親が食べているものをほしがる
などが確認できてからでよいのです。
お子さんの成長を見ながらはじめましょう。 手づかみは汚れますが、許してあげてください。この時期だけです。成長していることを示す自発的な行為なのです。
離乳食の様子
哺乳機能が完成して、次の機能である、食べる機能を獲得する時期です。
スプーンを舌で押し出す状態が見られる時は、まだ食べる準備ができていないかもしれません。
お子さんの状態を見ながら進めていきましょう。
食べる・飲み込む時の姿勢は重要
顔を上に向けて飲み込ませたりしていませんか?
これでは舌を鍛えることができません。
スプーンを下唇にふれさせて上唇が閉じるのを待ちましょう。
待つことはとてももどかしいのですが、自ら唇を閉じて舌を使い食べる、飲み込むことが正しい口腔機能獲得に大切なのです。この時期の機能獲得が一生を決めるのです。
食育について
よく噛むための食育 3つのポイント
(1) 前歯がぶり
前歯を使うことで上あごに刺激が加わり、上あごを前方に正しく成長させます。
食材を噛み切るくらいの大きさがよいのです。
小さすぎると誤嚥の可能性も高まり、あまり意味がありません。
前歯で噛むとその刺激は脳の前頭前野という部分に伝わります。考える、やる気、コミュニケーション、感情のコントロール を司る部分です。上手に刺激を与えて、脳の活性化を促しましょう!(奥歯で噛むのも勿論大切です。)
スプーン食べでは一口量を覚えれないので、注意が必要です。
(2) 足底接地
足を床に付けるか正座で食べましょう。
良い姿勢だと噛む力がアップし、誤嚥予防にもなります。
(3) 水やお茶は食後に
食事中にお水で食事を流し込むと噛む力、飲み込む力が強くならずにお口の機能や顔の骨が発達しません。
口腔機能トレーニングについて
当院では、「ぶくぶくトレーニング」、「あいうべ体操」、「チューブ噛みトレーニング」をオススメしております。
おうちで簡単に取り入れやすいと思います。
歯みがき後2分間のぶくぶくトレーニングとあいうべ体操30回、前歯のチューブ噛みトレーニング3分を日課にしましょう!
これを続けることで、
- ① 舌骨上筋群の強化
- ② 口腔周囲筋の強化
- ③ 鼻呼吸促進
- ④ だ液の分泌促進
- ⑤ 食物残渣、 プラーク除去
に効果があります。是非、習慣にして下さい。
ぶくぶくトレーニング
実際にしていただくとわかりますが、結構口の周りの筋肉を使います。顎の下の部分(のどの上あたり)がめちゃくちゃ疲れます。舌を動かす筋肉の一部なのですが、その部分を強化して舌を持ち上げ、舌の位置を上方にを保持して低位舌にならないための訓練になります。
以下に、ORALcomさんのQ&Aがあります。
参考にして下さい。
Q:子どもがブクブクを上手にできません。どうしたら上手にできるようになりますか?
A:小さい頃は、唇と歯の間に水をためるのが難しいのですが、練習を続けることで、ブクブクうがいができるようになります。下記のうがいトレーニングのしかたを参考にしながら、できるまで気長に見守りましょう。
うがいトレーニングのしかた
1.左から水を適量口に含み、左のほっぺたにしっかりためます。
2.右へ水を、左から右のほっぺたに移します。唇をしっかり閉じて、水がこぼれないように。ゆっくりと、何度か繰り返します。
3.左右交互に上手にできるようになったら、左右に早く動かします。慣れてきたら、唇、舌、ほっぺたを上手に使って前と後ろにも動かしましょう。
画像引用元:ORALcom
あいうべ体操
口呼吸を鼻呼吸に改善していく簡単な口の体操です。いつでもどこでも誰でもできます。食後に10回、一日30回を目安に地道に続けると舌力がついて自然と口をとじることができるようになります。
継続してできるようになると自然と鼻呼吸できるようになりアレルギー性疾患等の症状も改善していきことがあります。
呼吸は産まれてから死ぬまで一時も休むことなくしなければなりません。一日二万回です!
口呼吸は浅く早い呼吸、鼻呼吸は深くゆっくりした呼吸になることがわかっています。精神安定につながります。座禅、瞑想などそうですよね。
口呼吸によって口腔内に雑菌が繁殖しやすくなると当然口臭も強くなります。さらに免疫系の働きも阻害され炎症も悪化していくのです。
万病予防のための鼻呼吸を促す体操ですが。鼻呼吸するための簡単な体操です。美顔効果もありますからお子さんと一緒に毎日やってみてください。
また鼻呼吸とあわせて、舌の位置を正しく覚えると舌先は上の前歯の付け根が定位置になります。それが出来るようになるとその舌の圧力が上あごに絶えずかかるので、上あごを正しい方向に大きくする力として正しくかかります。
もう少し詳しく知りたい方は みらいクリニック 今井一彰先生のHPなど検索ください。
あいうべ体操 | 福岡のみらいクリニック (mirai-iryou.com) https://mirai-iryou.com/aiube/
あいうべ体操を考案した医師が語る「口呼吸とあいうべ体操」
あいうべ体操
まねっこはみがき(男の子)
まねっこはみがき(女の子)
チューブ嚙みトレーニング
毎日3分前歯でチューブを噛み噛みすると、前歯を通して上顎骨に刺激が加わります。その刺激が上顎の成長を促すのです。上顎が大きくなることで隣接する鼻腔も大きくなり、上あごが小さいことで大きくなれない下顎の成長を妨げなくなるのです。食育の前歯がぶりも同じ目的です。食育とチューブトレーニングで正しい成長軌道に戻しましょう。出来るだけ早期に取り組みましょう。
他にも口腔周囲のトレーニング方法はありますが、まずはこの3つのトレーニングを確実に毎日行いましょう!