そう言われるとそうですよね。
麻酔をして抜歯をする。抜いたところは出血をします。そこにかさぶたが出来ます。そこの表層が歯肉、いわゆる歯茎ができます。内側は骨が少しずつ出来てきます。歯肉と骨の治り方、でき方は歯肉の方が圧倒的に早いです。骨はなかなかできてきません。特に歯周病や歯の破折で抜歯した場合、骨はなかなかできません。身体は早く骨の露出している部分を埋めて感染を防ごうとするからです。ですから骨は二の次なのです。
タップを切る
インプラントは歯茎を直径4㎜ほど切開し、直径4㎜、長さ10㎜ほどの骨を削り取らせてもらい、そこにインプラントを入れていきます。
インプラントの形態はネジのようになっています。またインプラントとの表面を電子顕微鏡でみると粗造になっています。
骨を削ったところにタップを切り、そこにインプラントを少しずつ回転しながら少しずつ骨の中に埋め込みます。このように機械的に結合させるのですが、先程記載したようにインプラント表面が粗造になっていることでインプラントの表面面積を増やして骨と結合する面積を多くします。
インプラント周囲が全て骨であれば歯茎の入り込む余地はないのでインプラントの周囲に骨が直接ひっつくのです。
抜歯と同時にインプラントする、という手立て
周りに骨の無い場合、例えば前歯が割れて、抜歯した後すぐにインプラントする場合などはインプラント周囲がすべて骨ではありませんから歯茎で覆われる可能性があります。
そのような時、自分の骨と同時に人工の骨をインプラント周囲に敷設し、インプラント周囲すべてを骨になるようにします。
でもそれだけでは問題がでます。自分の骨ならそのようなことはありませんが、人工の骨は顆粒状であることがほとんどで、その顆粒の僅かな隙間に自分の骨が入っていく前に歯茎が入り込もうとしてきます。
人工の骨の顆粒の隙間に自分の骨が入って前に歯茎が入らないようにするためインプラント術と同時に特殊な膜を用います。
人工の骨が自分の骨と同じようになるのには自分の骨だけより時間がやはりかかります。だいたい半年を一つの目安とお考えください。自分の骨だけでも骨がやわらかい場合、かたい場合、抜歯して期間がまだ間もない場合、などによってもインプラントと骨の結合度合いが異なるので上物に取り掛かる時期が異なります。
骨のかたさはわかりません
骨が硬い場合、上物に取り掛かる時期は早まり、骨がやわらかいと遅くなります。骨のかたさはCTなどで術前診査してもわかりません。
あまりに骨がやわらかい場合インプラントを骨の中に設置することを断念します。そこまでではないがやわらかい場合、骨の中にインプラントは設置しますが歯茎の中に完全に埋めてしまい、3か月から半年くらい骨とくっつくのを待ちます。その後インプラントと骨の結合状態を知るために歯茎を少し切開して検査をします。結合状態に問題無ければ上物に取り掛かりますが、よくなければもう少し待つことになります。
最初から骨との結合状態がよければ3か月から半年くらいで上物に取り掛かります。
骨のかたさ、骨のボリュームに問題なければ事前に繊細に準備をしないといけませんが、全身麻酔が必要な治療ではありません。抜歯と同じく局所麻酔で行いますし、インプラント一本の設置であれば麻酔や術後の経過観察の時間を除けば30分くらいで済むことが多いです。
難しい抜歯と易しいインプラント、いろいろあります。
抜歯でも骨の中に完全に埋もれている場合など難しいケースもあります。インプラントも骨の無い場合など難しいケースがあります。
抜歯もインプラントも難しい、易しいがあるのです。インプラントの治療は今では特別な治療ではないと思っていただいてよいかと思います。