診療の予約をお受けするときに、気になっている点、痛みの有無、などをお聞きするのですが、痛みはないが歯が黒くなっているのが気になるので見て欲しい、という旨をお聞きすることがよくあります。
初期う蝕かも
虫歯の初期は痛みがありません。エナメル質というところに限局している場合には歯の神経と直接つながっていないからです。前歯の表面ならよくみればわかるかな、というほどで、歯と歯の間や内側にあると自分ではほとんど見えないと思います。奥歯であればなおのことご自身ではわからないと思います。C1といわれる状態です。
それくらいですから、治療する側の私も対応に苦慮します。
虫歯にたどり着くまでの健全な歯質を削合しなければならないからです。取り切るべき虫歯の量と比べて健全な部分の方を削ることが多いと本末転倒ではないか、と考えるのです。
北欧では初期う蝕の場合、経過観察をして必要になればその時治療に介入するというスタンスです。虫歯の進行が停止することもあるからです。レントゲン撮影やその方の持つう蝕抵抗性や年齢、定期的な受診に応じていただけるかどうか、私の臨床経験なども加味して経過観察にするか、治療に踏み切るかを私の判断基準にしています。
ですからC1程度であれば必ず治療、ということにはしていません。
どうしても白くしたいですか
虫歯を取り除いた後に詰め物をしていくことになります。前歯はほとんど白い詰め物で埋めていくことになります。平たく言えばプラスティック系の合成樹脂なのですが、経年的に劣化していきます。簡単に言えば少しずつ色が茶色くなっていきます。白く詰めることのできる材料は今のところ種類はあれど大きな範疇ではこれしかありません。ですから前歯の治療はなるべく避けたいのです。どうしても必要な場合には内側から虫歯を取っていき表側のご自身の歯をなるべく残すように診療しています。そうすることで歯の色が自然に近い状態で過ごしていけるのです。
経過観察は必ずチェックが必要ですよ
初期う蝕が見つかったら、歯を削らなくてもよいように定期健診にきていただくことが重要です。それだけでなくご自身によるケアも重要です。歯と歯の間の虫歯に関しては歯ブラシの他、補助的清掃具である歯間ブラシやフロスを使っていただきたいです。その清掃具に当院で販売している、歯間ジェル、という高濃度のフッ素が配合されているジェルをつけていただくとよいと思います。
歯と歯茎の境目近くの部分がC1、あるいは周りの歯に比べて白くなりすぎている場合には通常の歯ブラシに加えて、当院で販売されている、MIペースト、を歯ブラシ後にその部分に塗り付けるようにしてもらうとよいです。歯にミネラルを供給し歯質の強化につながります。
経過観察する小さな虫歯には経過を見るだけでなく充分なケアが必要です。