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音はどこで作られるのでしょうか?
耳に入ってきた音を、側頭葉のウェルニッケ野というところで脳は理解します。ウェルニッケ野が得た情報が、一旦前頭葉のブローカー野に入ってから運動野に行きます。そこから音を作る構音器官に指令を送ります。音を作る筋肉に指令が行きます。
構音器官はどこになるのか
1 声帯
肺から送られる息の流れが声帯を振動させて音が作られます。
パ と バ、カ と ガ、タ と ダ の違いを作り分けているのは声門です。声門の使い方で使い分けています。パ、タ、カ は無声音 バ、ダ、ガ は有声音です。
無声音と有声音
例えば「ス su 」のsは無声音、uは有声音です。スを長く引きのばしてみて、ウーを長く続けると震えるのがわかると思います。
2 咽頭
上咽頭と中咽頭(のどは便宜上、上中下に分けられます)を分けているのは軟口蓋です。上あごの奥の部分です。(のどちんこのあたりで鼻と口の交わるところ。)
「ナ行」 「マ行」 「ン」 「ガ行」は軟口蓋が下がって、息が鼻に抜けて作る音です。開鼻音です。
これら以外の音では口に息を通して発音します。軟口蓋が上に上がって息が鼻にいかないようにしています。
「あ行」は口を通して作ります。あ い う え お は鼻をつまんだままでも発語ができます。あ行の音がおかしくなることはありません。
3 舌
舌は前から、便宜上、舌先、前舌、中舌、奥舌に分けます。
舌を構音点(例えば歯や歯茎など)につけたり(破裂音)、近づけたり(摩擦音)、弾いたり(弾音)して音を作ります。結構微妙な舌使いが必要です。
4 口唇
口唇を閉じた後、上下の唇を破裂させて「パ行」「バ行」をつくります。
唇を閉じたまま鼻を開いて作る音が「マ行」
上下口唇を近づけて音を出すのが「フ」
構音点とは
呼気(息)が声帯から口唇、鼻までの通り道のどこかを狭くして音を作ります。その狭くなった部分が構音点です。
構音点は
1 口唇
2 舌先と歯
3 舌先と歯茎
4 前舌と硬口蓋
5 中舌と硬口蓋
6 奥舌と軟口蓋
7声門
になります。
例えば さかな が たかな になるのは
「さ」は舌先と上の前歯の歯茎が構音点になります。低位舌という、本来あるべきところになく下に下がった状態だと舌先が「さ」の音を作る舌先が歯茎に行かず、上の前歯の先端にいって音を作るので「た」になります。これを歯間化構音と言います。
構音点を狭くする方法は3つ
1 声門の開閉
2 舌の上方運動
3 口唇の開閉
歯並びや上顎骨の成長具合にも左右されます。つまり、顎が正しく大きく成長して歯並びよくて、哺乳や離乳の時に舌の使い方の訓練が出来ていないと、構音点を上手く使って発音できないということです。
お い お い とゆっくり言ってみてください。い では口唇は平らですが、お では丸くなりますよね。あ い あ い と言ってみてください。 あ ではのどまで見えるくらい顎が大きく開きます。い は舌の前方がせりあがって奥の方は見えません。口唇、顎、舌の微妙な協力関係で音を区別しています。
母音に問題が出ることは、ほとんどありません。
日本語の子音を分類すると
1構音点(音のつくられる位置)
2構音様式(音の作られ方)
3声の有無 (有声音、無声音)
です。この子音の発音で問題が出ます。正しく発音できない時は1~3のどこかに問題があります。
1破裂音
呼気の流れを止めて勢いよく息を出す音です。頬に息を貯めて指でつつくと“ぷっ”と音が出ます。息が口唇で破裂されてできた音です。ぱ行 ば行 た行 だ行 か行 が行 がそうです。
2摩擦音
狭い隙間に呼気を通すことで摩擦が起こります。上口唇と下口唇を近づけて隙間を狭くします。その隙間に軽く息を通すと摩擦された音が出ます。“ふ”を発音してみてください。さ行と は行は構音点の違いはありますが、無声の摩擦音です。
3破擦音
一度息の流れを完全に止めた後、摩擦しながら息を出してみてください。
ゆっくり“つ”の音を言ってみてください。舌先が上の前歯の付け根に押し付けられて隙間が無くなります。そこで溜められた息が破裂して「t」の音、直後に「s」の音が風のように続きます。ち つ ちゃ ちゅ ちょ は破擦音です。
4弾音
舌先を上の前歯の付け根で弾いて作られます。“ら”です。巻き舌の時の音です。「こるぁ~」 こらー ですね。
5鼻音
息が鼻腔を通って共鳴する音です。 ま行 な行 にゃ行 など
構音障害の種類
1置換 さかな が たかな らっぱ が だっぱ
2省略 ラッパ が アッパ コップ がオップ たいこ が あいお
3歪み ( これは日本語で表記できないので説明は省きます、すみません。)
になります。
大きな原因の一つとして考えられるのは舌の成長不足です。
ハート舌はご存じですか。舌の下に付いている筋です。哺乳期にしっかり哺乳を通した舌の訓練が出来ていないとその筋が短くならず、舌の自由な動きの妨げになります。少し大きくなると自然に短くなりませんから口腔外科で切ってもらうことになります。
舌の機能低下
舌先や前舌の機能が不十分だと、中舌や奥舌を使って代わりの機能を果たそうとします。奥舌が上に挙がらないと息が鼻から漏れます。私でも難しい領域になりますので、端折ってしまいますが、結局のところ哺乳期、離乳期における舌の訓練が十分に出来ていなくて、舌の機能が発揮できていないことが構音障害の大きな原因になっているということです。
哺乳は筋トレ
哺乳期間は世界平均で4年超、WHOの推奨期間は2年とされています。日本ではどうでしょうか。半年~1年で離乳に移行しているようです。口の周辺の筋肉つまり口、唇、頬、舌をフル稼働させないと哺乳できません。哺乳瓶で吸ってみてください。(出の良いものはよくありません。)かなりの力を使わないと中の物を吸えません。赤ちゃんは生きるために必死に筋肉を使います。そして筋肉を上手に使って吸い方、飲み方を覚え、口腔周囲の筋肉トレをして筋肉の使い方をマスター、つまり機能獲得していきます。
筋トレ不足が招く弊害
吸いやすいと筋肉を使いませんから筋肉は発達せず、機能をフルに使うことを知らないまま大きくなるということになります。特に舌を上あごに付ける訓練が出来ていない低位舌になり、上あごを大きく成長させる刺激になりませんから顎が大きくなりません。当然歯並びが悪くなります。上顎が大きくならないとそれにブロックされて下あごもおおきくなれません。唇の筋肉も弱いので口ぽかんになります。
早く離乳したら、保護者が口腔機能の筋トレをしてあげないといけません。
哺乳中は赤ちゃんが勝手に筋トレしてくれますが、離乳したら食事を保護者が与えることになります。その与え方一つで機能獲得できるかできないかが決まります。歯並びにも大きく影響します。責任重大です。女性の社会参画の面から断乳時期が早くなるのも仕方ないところもあります。離乳食の与え方は妊婦健診の時に当院ではお知らせしています。
舌の機能訓練を行うには
とはいえ哺乳、離乳時期に戻れません。構音障害の対策として何が出来るかと言えば、食育、筋機能訓練(MFT)、矯正治療になるのではないかと考えています。
MFT
舌の機能が獲得できていないのですから舌の筋トレを地道にしていく他ありません。口腔機能育成のページにありますが、当院では家でも取り入れやすい3つのMFTを推奨しています。あいうべ体操、ブクブクうがい、カミカミトレーニングです。他にもありますが多くなると続きません。まずは3つをルーティンにしてください。
矯正治療
舌の機能が乳児期に発揮できていないと顎が正しく成長出来ていないことが多いです。舌が上あごを前方、上方に押すことが刺激になって上顎を大きくさせています。その刺激がないと乳歯のうちから歯並びが悪いか、キチキチに乳歯が生えている、受け口、噛むと下の前歯が見えない出っ歯になってしまっていることが多いです。舌の訓練をするにも小さい空間ではあまり意味がありません。正しい大きさにした上で機能訓練することが望ましいと言えます。
食育
顎に噛むという刺激を与えて正しく成長を促すという意味から、保護者のしてあげられる食育はとても大切です。前歯に刺激を与える、前歯がぶりできる食材を食事の一品に加えていただくことで機能訓練できるのです!ポイントは細かく切らないことです。
ノーリスク
構音障害は、歯科的な対応だけで必ず治るとは言えません。しかしデメリットは何一つありませんから、言語療法だけでなく、歯科治療に取り組むことも検討してみてはいかがでしょうか。