目次
ガタガタは前歯ばかりではない。
前歯の歯並びがよくないのは一目瞭然でわかりますよね。学校検診で指摘されてたくさんお見えになります。お母さんは気になりますよね。大人でもマスクを外すようになってから改めて口元が気になっていませんか。上の2本目の歯が内側に生えているのもよく見受けられます。前歯だけがガタガタしているのではなく、奥歯にもガタガタはあります。親知らずの手前、通常一番後ろの大きな歯、第二大臼歯というのですが、上が外側、下が内側に倒れて生えていることがあります。またその歯の2本手前、第二小臼歯が上下とも内側に倒れて生えていることもよくあります。
何故歯並びが悪くなるか
端的に言えば顎の大きさに対してすべての歯の幅の総計の方が大きいから歯が並ばないのです。それぞれの歯がはえる時期の顎が、それまでに歯が並ぶくらいにきちんと成長出来ていないのです。高齢者の前歯のガタガタは少し状況が違います。加齢により歯を支える骨が減り、歯が動きやすくなっているからです。ヒトの歯は基本的に身体の真ん中に向かって倒れるようになっていますから、いわゆるエイジングで歯並びが悪くなっていくのです。
遺伝の問題だけではありません。
受け口傾向の家系、出っ歯傾向の家系はありますが、後天的な要因も顎の成長に大きく影響しています。哺乳の仕方、授乳の仕方、離乳食の与え方、このあたりまで遡ります。鼻が悪くなるのも元々はこのあたりに原因があると言われています。
哺乳は大切
哺乳時、しっかり正しく乳首に赤ちゃんの唇を加えさせて哺乳をさせることで赤ちゃんは唇と舌、頬の使い方を覚え、訓練し、正しい舌の動き、飲み込み方(嚥下)、鼻呼吸を覚えていきます。何もしていない時の舌の先端は上の前歯の付け根にあるのが普通で、正しい位置に舌があることで実はそれが上あごを広げていく、成長を助ける行為になっているのです。それができていないと上あごが側方、前方に正しく成長しないので歯が並ばなかったり、笑った時に上の歯茎が見えるようになっているのです。
ガミースマイルを治すには
見える歯茎を見えなくするよう治療するのはとても大変です。歯を骨の中にめり込ませて歯茎を上方へ押し上げるのですが、小さなインプラントとゴムを用いた治療、あるいはボツリヌス治療で上唇の筋肉の動きを抑えるなどの治療になります。ボツリヌスの効果は長くて半年ほどですから、それをずっと続けていくことになります。
鼻の成長と脳の活性化
上顎が大きくならないと鼻も大きくなりません。外側の鼻でなくて、骨の中の鼻、つまり鼻の中の空気の通り道が狭くなります。空気の通り道が狭いことで鼻呼吸しづらくなります。口呼吸するようになると気道を広げるために顎を突き出す姿勢になっていきます。猫背になっていきます。また鼻呼吸することで空気による脳のクールダウン効果が下がりますから集中力が下がったり脳がフル活動しづらくなります。哺乳がいかに後々まで影響を及ぼし、栄養を与えているだけではないことがおわかりいただけたでしょうか。
哺乳瓶の使い方も考える
吸いやすい乳首と吸いにくい乳首があります。栄養を与えるという観点からいうと吸いやすい方が哺乳の時間も少なくなり手間も省けますが、それでは赤ちゃんの口腔機能のトレーニングにはなりません。出づらくて時間はかかるかもしれませんが、しっかり唇を使わないと哺乳できない哺乳瓶を選ぶようにされるとよいでしょう。
離乳の時期は遅くなっても構わない
離乳食の時期に関しても、しっかり哺乳による訓練ができてから移行すべきでそれはハイハイとかつかまり立ちとか、成長と合わせて判断すべきで何カ月になったから、という基準ではありません。離乳食は決してスプーンを口の奥に突っ込んで丸飲みさせるのでなく、唇付近に置き摂食させるようにすべきです。
親知らずの抜歯はやむを得ない
矯正治療で抜歯は必要となることがあります。基本的に親知らずは抜歯したほうがよいです。親知らずがあることで歯並びを後ろから前方に押し出す力になるからです。親知らずの抜歯だけでよくなることもわずかですがあります。
犬歯は抜かない
歯並びがガタガタの場合、犬歯の後ろの歯、第一小臼歯を抜歯することがあります。八重歯とかは犬歯を抜けば済むじゃないかと思われますが、歯の中で一番歯の長さが長く、力を受け止めるように出来ているので犬歯を抜くことはあまりないです。インビザラインの世界中のビッグデータでは抜歯矯正は矯正全体の13%だそうです。少ないと思いますよね。
歯は顎の中でしか動かない
歯の大きさは決まっていますし、顎の大きさは決まっています。顎の大きさが歯の幅の総計より小さければどこかで間引きしてスペースを作らないと歯は並びません。親知らず以外のどこかで抜歯してスペースをつくることになります。
ティーンの抜歯は成長が終わってから判断
成長があるので顎そのものが大きくなるようにアプローチして歯の並ぶスぺースをつくるようにします。成人に近づくにつれその可能性は低くなりますから早く取り組みましょう。成長のピークは10歳を境にして成長度合いは小さくなります。私としても出来たら歯は抜きたくありません。でも出来るだけのことをしてもすべての歯が並ぶだけの顎に成長しないこともあります。抜歯をしない治療計画を立ていても、やむなく抜歯せざるを得ないことがあることはどうかご理解ください。成長の予測はどんなビッグデータをつかっても不可能なのです。
抜かずにスペースつくるには
一つは歯の幅を小さくすることです。歯を削らないといけません。被せ物があればそれを削ります。なければ日本人の平均の歯の幅や、左右同じ歯の幅を比較したりして削る量や部位を決めます。できればしたくありませんが歯を抜くことと天秤にかけてどちらがその方にメリットがあるかを考えて決めます。
後ろに送ることができるか考える
並べるのに足らないスペースを作るのに、歯を後ろに送るということも考えられますが、もともと歯が並ぶスペースがなくてガタガタになっていますから、出来たとしてもおそらく僅かしかできないです。それでもレントゲン分析して頭蓋に対して奥歯を後ろに送れるスペースがどれくらいあるかを調べます。
拡げることができるのか
顎の大きさは成人だと大きくなりませんが、骨から出ないように歯を外側に傾斜させることでスペースを確保できるかも検討します。なかなか難しいのですが、やれることはやってみます。CTがありますので骨量がどれくらいかをみながら治療計画の一助にしています。
資料を採らせていただき、分析をして、抜歯した場合、抜歯しない場合の治療計画をそれぞれ立てて、それぞれのメリット、デメリットを検討してどちらがその方にとって、ベターなのかを考え、それを提示して同意を得て治療をしていく、ということになります。
抜歯矯正は難しい
歯は顎の骨の中でしか動きません。骨の中、歯を動かしていくのは容易ではありません。動かし方も2種類あります。傾斜と平行移動です。どちらが動きとして簡単でしょうか。骨は硬いですよね。骨の硬さがある中、歯を平行移動させるのはとても大変です。頑張ってできても2㎜です。傾斜移動は比較的しやすいです。鉛筆を握っていただいて手から出ている部分を押していただくと傾けられますよね。鉛筆立てたまま横に移動させようとすると相当な力がかかるのが分かっていただけると思います。
抜歯への治療方針の変更もあります
鼻が悪ければまずそちらの治療が優先になります。非抜歯の治療を進めていても、治療していく中で歯の動きが悪かったり、顎の成長がなければ、抜歯に切り替えた治療になることもあります。抜歯はできるだけ避けたいという思いは皆さんそうだと思います。治療期間が延びることもありますがその点ご理解いただければと思います。