猫背は何故起こるのか。それは息をするのにその姿勢の方がしやすいからなのです。どういうことなのか。息をするのに空気は、基本的は鼻を通って、気道を通って、肺に空気を送り、その逆に息を吐き出します。鼻が狭くて、気道が狭いと色々な面で不利益がでます。
目次
感受性期
鼻が狭いと空気の通り道が狭くなります。何故狭くなるのか。それは成長期に鼻を構成する骨が十分に発達できなかったからです。鼻の下部は上顎で構成されます。上顎が大きくならないのは刺激が足らないから大きくならないのです。上顎は頭蓋を構成する骨です。頭蓋が最も発育するのはいつでしょうか?
3歳
赤ちゃんの産まれてきた時の頭囲の平均は33㎝です。1歳で45㎝、3歳で49㎝、6歳で50㎝です。成人男性で56㎝、女性で54㎝です。3歳で成人の9割が完成しています。この時期に刺激をしっかり与えないといけません。与えなくてもある程度はおおきくなるでしょうが、必要最小限になるか、逆に小さくなります。
廃用性萎縮
例えば、足の骨折で歩かないでいると足の筋肉は衰えますよね。足が細くなるのは何となくイメージできますよね。このように人間は使わないところはどんどん退行します。歩く、走るなどという刺激があることで機能を維持しています。
また哺乳!
では上顎の成長期における機能を高める刺激は何でしょうか。これが適切な哺乳になります。お母さんの乳首を唇と舌と上あごを上手に使って母乳を絞り出します。そして舌と上あごを使って食道に送り込みます。直接生き死にに係ることですから赤ちゃんも必死です。その運動が刺激となり上顎を大きくし、鼻を大きくするのです。間違った与え方ではその機能は獲得できません。また出のよい哺乳瓶では力使わなくても絞り出せますから刺激にも、飲み込むなどの機能獲得にも、役に立ちません。正しい哺乳をし、正しい哺乳瓶を選ぶことが肝要です。
口ポカン
哺乳の仕方が間違えていて、唇が鍛えられていない、上あごが小さい、鼻が小さいとなると鼻で呼吸しなくて口で呼吸して、いつも口がポカーンと開きます。こういう子どもは歯の表面が着色しやすいです。
哺乳は終わった、どうしよう、、、
哺乳の時期を過ぎてしまったら、何をして上あごを大きく、鼻を大きくするのでしょうか。それには前歯をしっかり使って食事をする。前歯を使わないと食べることのできない食事を提供することを意識してください。海苔で巻いたもの、春巻きで包んだ食材などどうしても前歯を使わないと食べれませんよね。そういうもので刺激を与えるようにしてみてください。食べている時は鼻で息をしています。よく噛んで食べましょう、と言います。それは正しいです。でもそれを水やお茶があるとすぐに流し込んでしまおうとします。せっかく前歯使って刺激を与えて上顎を、鼻を大きくしようとしているのに。食事中に水やお茶を飲むのは禁止するようにしてください。
だから開咬や受け口では刺激を与えられないからよくない
上下の前歯が噛んでいない状態、これを開咬といいます。受け口、上下の前歯で下の歯が前に出ている状態です。受け口、開咬では前歯で噛めませんから食育の前にこれを治療しましょう。
鼻を大きく
鼻腔は5歳で85%、9歳で90%、12歳で95%完成します。哺乳の時期を過ぎていてもまだ少しは大きくする見込みはあります。きちんと食育することで、上あごを前に成長させるように頑張りましょう。それができないと上あごの成長が前下方向に成長することになり上顎と鼻が大きくなりません。永久歯の生えるスペースが小さくなり、八重歯になったり、歯がガタガタにしか並ばなくなります。見かけ上の口元も、下顎より上顎がへっこんだ感じになります。
ガタガタな歯並び
上顎の歯のガタガタは子どものうちは歯を抜かずに、顎を大きくするための矯正力をかけてなんとかしたいものです。少なくとも成長がほぼ終了する前の14~15歳までに顎自体にアプローチしたいものです。下あごのガタガタも、上あごの成長のピークより後になるとはいえ同じように少しでも早く顎を大きくするよう、矯正力を使いたいものです。
気道が小さくなると
ヒトは生きるために呼吸します。呼吸するのに一番楽な状態で息をします。猫背になるのは猫背の方が呼吸しやすいからなのです。姿勢よくするより猫背になった方が、気道が広がるのです。顎先を前に突き出すようにして気道を広げているのです。顎先を前に出すと立ったり座ったりすると前のめりになるので、バランスをとるのに背骨が後ろに曲がるのです。
気道を狭くするのは
わかりやすい話でいうと、年齢を重ねると上下の奥歯が噛み合わさってすり減っていき、噛み合わせの高さが低くなります。低くなるとすり減りの程度が奥歯ほどでない前歯が先に当たって下顎が後ろに下がります。顎が奥に下がるとその内側にある舌も後ろに下がります。そうなるので気道が狭くなるのです。気道が狭くなることで就寝時にいびきをかくようになります。若くても歯ぎしりなどで奥歯がすり減ることもあって、いびきや睡眠時無呼吸症候群など引き起こすこともあります。
すり減り以外にも
親知らずが悪さをすることがあります。親知らずが前にある歯を押して歯並びを悪くします。そうすると歯が傾いたりしてどこかの歯だけが強く当たるようになります。そうなると顎が左右どちらかにズレます。左右共にズレることもあります。前にズレることはなくて、たいていは奥の方にズレます。親知らずはちゃんと生えていても、埋もれていても、影響することが多いです。
態癖
親知らずの他に交差咬合と呼ばれる噛み合わせでも同じようなことが起きます。なくて七癖といいますが、頬杖、うつぶせ寝、横向き寝、など知らないうちに顎、歯などに力がかかり、歯並びが悪くなって、噛み合わせの高さが低くなる、ということもあります。
カルシウム
加齢、態癖、歯ぎしり、親知らず、歯並び、色々な要因があって下顎が奥に押しやられて気道が小さくなります。みんながみんな猫背になるわけではありません。お年寄りはカルシウムの摂取などが減ったり、代謝が落ちるので、骨内のカルシウム量が減ることもあり、自重を支えられず背骨が曲がることもあります。骨粗しょう症も高齢の方に多いですよね。
顎関節症
下顎が奥に下がると気道が狭くなるだけでなく、顎の関節に歪をきたします。関節は骨と骨をつなぐ部位です。直接骨同士が接触しているわけでなく、その間に軟骨が介在して動きをスムースにしています。下顎が奥にズレると、頭と顎の間にある軟骨がズレて、骨同士が当たるようになります。そうすると骨は少しづつ変形します。顎を開けた時にカクっと鳴ったり、ミシミシ音がしたり、ジャリジャリ音がしたり、口を開けづらくなったりします。これを顎関節症と言います。
どう治すのか
顎が後ろに行ってるのは、噛み合わせが低くなっていること、噛み合わせが悪くなっていること、親知らずがあれば、親知らずの影響、が考えられますからこれらにアプローチしていくことになります。親知らずに関しては抜歯になります。噛み合わせに関しては低くなっているのを元の高さにします。歯並びを良くするのに、歯の並びを小さくして並べると舌の置き場が小さくなってしまいます。そうなると舌が奥にいくので気道を小さくしてしまいます。ですから噛み合わせを高くし、歯並びを小さくせずに整えていくと顎の関節が良くなり、下顎と舌が前に出て気道を元の大きさに戻っていきます。
マウスピース矯正のメリット、デメリット
歯並びを改善するのにマウスピース矯正が有効とされています。それはマウスピースをすることで噛み合わせの高さが上がります。強く当たる部分も治療中にはなくなり歯が動きやすく、また顎の関節が楽なところに動きやすくなるからです。治療中でも歯ブラシしやすかったり、審美的に目立たなかったりしてメリットも多いのです。ただしきちんと装着時間を守らないとか、きちんと歯に適合させないと予想通りに歯が動かないです。決められた事柄を遵守しないとマウスピース矯正は上手くいきません。コンプライアンス遵守が成功のカギです。