矯正の相談がある中で多いのが、八重歯など含んで歯並びがガタガタしている、というのと前歯が出ている、と2点です。他にも、上の前歯の間が空いている、受け口、などがあります。あまり関心がないよくない歯並びに、一番奥の歯がきちんと噛んでいない交差咬合や上下前歯をかみ合わせた時に隙間のできる開咬があります。
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鋏状咬合って読めますか
交差咬合は一番奥の歯だけでなく、親知らずを除く奥から3番目の歯などにも現れます。それらの歯がきちんとあるべきところに萌出するスペースが無くて、下の歯だと舌側向きに、上の歯だと頬側向きに生えてきます。八重歯の奥歯版みたいな感じです。そのように萌出してくると上下の歯で噛む面積が無いか、ほとんど無い状態です。
乳歯も大事
奥歯から3番目、第二小臼歯(これから5番と言います。前歯の真ん中から奥に向かって5番目にあるからです。)の前に生えていた乳歯が早くに虫歯などで早くに失われることが原因です。乳歯が早くなくなるとその前後の歯が、そのなくなったところに向かって歯が倒れてくるので、乳歯があった分のスペースが永久歯の萌出までに少なくなるのです。行き場がない永久歯が隙間のあるところに生えざるを得ないので歯並びが悪くなります。
親知らずはよくない
一番奥の歯が倒れて生えてくるのは、顎が小さくて生えるスペースが少ないからです。中には埋もれたままのこともあります。親知らずではないのに。この歯は第二大臼歯(これから7番と言います。)で、およそ中学生から高校生になるくらいに生えてきます。顎がそれまでに発育が悪いのと親知らずがある場合、親知らずが押し出そうとすることできちんと生えません。
ここにも哺乳
顎が大きくならないのは、遡れば哺乳の仕方が悪かったこと、離乳食の与え方が悪かったこと、普段の提供される食事、食材、食事の仕方など0歳からの食育に問題があるからなのですが、これらのことはは別のところでコラムとして記載していますのでご参照ください。これら交差咬合があると上手く歯ブラシできないので虫歯になりやすく、歯垢除去もしづらいので歯周病にもなりやすいです。
顎関節症
またそれらが原因で噛み合わせがよくなく、顎がズレます。顎関節症の原因、肩こりなどの不定愁訴の原因にもなります。見えないところですが、特に女性は筋肉の問題から顎関節症になりやすいので治療するとよいでしょう。見出しの漢字、せんじょう咬合といいます。親知らずの関与がありますから治療には抜歯は必須になります。
舌足らずなしゃべりかた
上下かみ合わせた時に前歯がしっかり空く方がいらっしゃいます。前歯で噛みきる麺類を食べづらい方はそれに相当します。また発音や食べ物の飲み込みする時に通常舌先は上の前歯の付け根の歯茎に付けます。上下前歯が空いてる方は舌先をその空いているところに入れ込んで飲み込みます。発音も、破裂音など空気をため込んで作る音をつくるのに歯だけで隙間を埋めれないので舌で埋めます。舌足らずな発音もそれが原因です。
鼻閉
発音や嚥下(食べ物の飲み込み)のために開咬状態であれば治療されるとよいと思います。ただこの状況を引き起こしたのは先述の哺乳、離乳食、食育も関係していますが、鼻呼吸できていないことも影響しています。これは歯並びの悪い方すべてに当てはまります。口ポカンしているのは鼻が悪いことが多いので耳鼻科受診してみてください。
指しゃぶりと同じ
この開咬と呼ばれる状態を治療して改善しても、舌の動きが治療前のまま発音、嚥下していると歯は元の位置に戻っていきます。これを後戻りといいます。開咬と呼ばれる不正咬合を治療するには、歯を並べて咬み合わせると同時に、舌の動きを正していく訓練を行わなければなりません。毎日地味な訓練をしていかなければなりません。それなしで後戻りしますし、再治療してもまた後戻りします。唇を閉じないとか、舌を前歯に間に入れる、とか軟らかい筋肉であっても硬い歯を動かす力になります。幼児が指しゃぶりしていると前歯が空くのと同じです。
本当に上の歯、上の顎が出ているのか?
口元を下げたいとおっしゃる方がいらっしゃいます。そういう方は口を閉じるのに下唇を上唇近づけないといけないので顎先が緊張して、いわゆるウメボシができます。顎先に皺ができます。顎先の筋肉を過剰に使わないと唇を閉じれないのです。閉じれないくらい上の歯が出ているのでしょうか。
上の歯の軸はとても出ていますか
古い話で申し訳ありませんが、おそ松くんという漫画にイヤミというキャラクターが出てきます。時々CMなどで見かけることがあるかもしれません。あのイヤミというキャラクターのように前歯の軸が前方に出ているなら、その軸を内側に入れていくことで口元は下がると思います。ただあのような上の前歯の出た方はあまりいらっしゃいません。
上下間の関係
では上顎が前に出ているのでしょうか。顎そのものの上下の関係は3つ考えられます。
1上顎が前に出ている 下顎は普通の位置
2上顎が前に出ている 下顎が後ろに下がっている
3上顎は普通の位置 下顎が下がっている
何をもって出ているか出ていないかを判断するかは、頭蓋のレントゲンを撮影しその中の決められた位置を元にして診断します。成長ホルモンなどを分泌する脳下垂体を納めているトルコ按、骨と骨の接合部、眼窩下部、耳孔、などなどあります。それらの点、それぞれ結ぶ線などを元に日本人の平均的な数値を割り出し、頭蓋に対して上顎が前か後か、下顎が前か後かを分析します。
日本人のほとんどは
そうすると日本人では上顎が前にあることは少数で、むしろ下顎が後ろに下がっていることがほとんどなのです。横から顔を見てください。鼻先と顎先を結ぶと下顎は後ろにいってませんか。日本人は上顎がその線より少し前、下顎は丁度その線に乗るくらいがちょうどよいのです。上顎だけ後ろにいくように前歯を後ろに下げると、上も下も後ろにいくことになり、のっぺりした口元になります。我々の言葉でいうと口元が寂しい感じ、になるのです。
骨の中でしか動かない
それでもやっぱり気になる、抜歯してでも前歯を後ろにしたい、ということであったとしても、それには限界があります。歯は骨の中にあります。骨の中でしか動かせません。骨から飛び出たら抜けます。日本人は歯を支える歯槽骨の幅が白人などに比べて薄いです。ということは動かせる移動量は限られます。また顎自体の大きさもありますから後ろに移動させられる量も限られます。頭蓋と大臼歯の位置関係も脳を守る観点から大きく変化させることができないことが日本人にはほとんどです。
下顎を前に出す
先程も述べましたが下顎が後ろに下がって、相対的に上顎が前に出ているように見えますから下顎を前に出すことで上顎の突出感を少なくすることが、よりよい選択のように思います。下顎が後ろに下がっていると顎関節に負担がかかり顎関節症の原因になっていますし、噛み合わせが深くなる傾向で舌が後ろにへっこみ、いびきや睡眠時無呼吸症候群の原因にもなります。また気道が狭くなり猫背になったり、背骨のバランスを保つために腰痛や肩こりの原因になります。
前へ
下顎を前に出すと顔貌だけでなく様々な症状の改善が見込めます。その分奥歯がかみ合わなくなりますから、前歯を治すために奥歯を噛ませる治療になります。もちろん歯の軸の修正もします。抜歯せずに済むかもしれませんし治療期間も短くできるかもしれません。
でもやっぱり前歯が
とおっしゃるのであれば、鼻を高くするというのもありかもしれません。そんな、と思われるかもしれませんが、日本人の鼻はたいていだんご鼻です。鼻を高くすることで上顎が相対的に引っ込みます。いやいや、そんなことでなくて、やっぱり口元をもっと下げたい、というのであれば、歯ではなくて骨格にアプローチした方がよいです。
外科矯正
骨を切り取り後ろに下げるのです。先述のように歯を動かせる量には限界があります。外科矯正というのがあって、術前にどれだけの骨を削合して後ろにもっていくかをシュミレーションできます。歯を動かすよりもダイナミックに後ろに下げれて、しかも短期間に終了できると思います。自費治療になりますし、おいそれとはできませんので大学病院などでの治療となります。求められる自分の口元のイメージと診療所でできることに乖離がある治療は上手くいきません。口元がとっても気になる方は外科矯正をまず検討されるとよいでしょう。