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歯をぶつけた
学校での歯や口の外傷の件数が多く、特にスポーツにおける歯、口の外傷は小学生から中学生、さらに高校生へと年齢が上がるにつれて重症化する傾向にあります。歯、口の健康は食事、会話、審美性、運動能力など生涯のクオリティー・オブ・ライフ、すなわち生活の質に直結しますので、子供たちの自身の危険回避能力を育成することが重要となります。
その対策の一つとしてマウスガードの装着があります。いわゆるスポーツガードのことです。マウスガードは歯、口のケガの防止や軽減化を図ることが可能であり、スポーツ中の安全確保に役立ちます。残念ながら子供同士で遊んでいる時や、体育の授業などはマウスガードすることはないですから、そういう状況での不慮な外傷の対応は難しいのが本当のところです。
なぜマウスガードが必要なのか
運動やスポーツ中のケガにより、欠けたり抜けたりした歯は治療しても元の状態に戻すことが困難になります。治療を受ける場合にも長い時間や費用がかかり、また何より歯の寿命が短くなる可能性が考えられます。これらの対策の一つとして、歯、口のケガが発生する確率を低くすることができるマウスガードがあります。
歯、口の外傷には様々な種類があります。
歯の破折 歯が折れたり、その下の根の部分が折れたりすること
歯の脱臼 歯に外力がかかり、歯が抜けたり飛び出たりすること
歯の嵌入 外力により歯が顎の骨の中にめり込まれること
顎骨骨折 顎の骨が折れた状態 症状として患部の痛み、腫れ、出血、嚙み合わせの異常がみられる
顎関節脱臼 顎関節部の痛み、顎の動きの制限(口が閉じれないなど)がみられる
軟組織の損傷 口の周りの皮膚や粘膜にみられる外傷 頬粘膜、舌、歯肉、口唇など
対処法あれこれ
歯のかけ具合でも治療が大きく変わることがあります。
歯にヒビが入った、程度であれば様子をみることが多いです。その部分だけ詰めることは可能ですが削るというダメージを更につけたくないのです。
小さくかけている場合
程度にもよりますが、虫歯治療で詰める白い材料で修復することが多いです。破片を持ってきていただいても小さすぎて引っ付けられないこともあります。欠けているのは大抵歯の薄いところか、先っぽです。そういうところ、部位は詰めたとしてもまた小さな衝撃で外れることが多いです。
大きく欠けた場合
大きく欠けると、それを持ってきてもらって元の歯に位置付けることは比較的たやすいです。ただわかりやすいくらいですから、神経までの距離が近い、あるいは露出していることもあります。症状によっては神経処置をしなければなりません。神経処置せずに済んでも後日神経がダメになっていくこともよくあります。
上手く破折片を歯に付けられたとしても、やはり噛みしめの力などで外れやすいのです。そうなると一般的に言われる、差し歯、を若いうちから装着しなければなりません。歯茎も加齢と共にその位置が変化しますからある程度の年齢になればやり直す必要が出てくるかもしれません。
口腔外科受診も
歯が飛び出たり、めり込んだり、骨が折れたり、唇がとても腫れたりしたときには、口腔外科で治療してもらう必要があります。
歯には何の変化はその時なくても、時間の経過と共に歯の色が茶色くなってくることもあります。ぶつけた衝撃で歯の神経が根元で切れてしまうことがあるからです。これはその時レントゲンを撮ってもわかりません。時間が経ってからでないとわかりません。
保護者の皆様へ
子供たちが安全に体育やクラブ活動などの学校生活を送るためには様々な注意を払う必要があります。しかし体育やクラブ活動中に起こる歯、口の外傷を100%防ぐことはできません。万一のケガの症状を軽減させ、安全性を高めるのがマウスガードです。
その他にマウスガードは選手自身の噛みしめによる歯のすり減りや歯の破折の軽減や予防にも効果があり、また対戦相手と接触した際の相手選手へのケガの軽減効果等も期待できるため、体育での授業での使用も望まれるところではあります。
保険適応外ですが、子供の将来への保険
マウスガードを歯科医院で作製するとき、保険適用外となります。しかしスポーツ中の事故で歯の破折や脱落が生じると子供たちのその後の人生において肉体的、精神的に大きなダメージを与え、スポーツへの接し方や社会生活にも大きな影響を与えることが考えられます。そのためにも精密で外傷予防効果が高いカスタムタイプのマウスガードを歯科医院で作製する方が良いでしょう。
市販のマウスガード
市販のマウスガードの多くは平均的な大きさで出来ていて、熱を加えて軟らかくなる素材です。マウスガードを熱湯につけて軟化してそれを自分の口の中にいれて形づくります。温度が下がるとその形で固まります。
安価で手軽に購入、使用できますが適合が悪いことから外れやすい、しゃべりにくいなどの問題があり、また歯を守る効果は低いと考えています。
オーダーメイド
歯科医院でのマウスガードは歯型と嚙み合わせを採取させていただき、その模型をもとに精密に作製します。専用のシートと専用の加熱成型機を使用して作製します。個人個人の口に合わせて作製するので適合がよく、外れにくく、違和感も少ないです。
色もある程度選択してもらえます。ですが、グラウンドや体育館、など大きい場所で紛失してもわかりやすいよう、あるいは対外的に認識してもらいやすいように派手な色を選ぶ方がよいと思います。
外傷の多いスポーツは何でしょう
中学、高校で口腔周囲に関する外傷の多い種目
バスケットボール
野球・ソフトボール
サッカー・フットサル
バレーボール
ハンドボール
テニス
ラグビー
バドミントン
球技スポーツが比較的多いです。ボール、バット、ラケットなどが当たる可能性が高いからです。接触競技に関しては使用されていることが多いです。
義務化、推奨、許可という段階で使用されています。
完全義務化
アメリカンフットボール、ボクシング、キックボクシング、ラクロス、テコンドー、総合格闘技、極真空手
一部義務化
アイスホッケー、空手、ラグビー
推奨
モータースポーツ
許可
バスケットボール、硬式野球、柔道、ハンドボール
カスタムマウスガード作製の流れ
今まで記したようにお話して型取り、噛み合わせ関係の確認を一日で行い、次回に口腔内に装着します。当たる場所がないか、均等な噛み合わせになっているかなどを確認します。そして使っていただいて経過観察していくという流れになります。
使っているうちにすり減りなどで噛み合わせのバランスが崩れることもありますから定期的なチェックが必要です。成長期だと顎の大きさが変わります。使用頻度もそうですが成長に合わせて作り直すことも必要です。競技によりその厚みなどは変わってきます。極真空手などは指定された歯科医院でのみ作製されているようです。
お手入れ
取り外しできる矯正器具の洗浄剤やスプレーを使用して定期的に洗浄し、その後水道水で洗い流し、少し湿った状態で専用のケースで保管してください。夏場の車の中など高温なところでの保管、熱湯での洗浄などすると変形の原因になります。またあまりに乾燥した状態が続いてもよくないので保管方法には十分注意してください。
まだ治療中
歯を治療したり、矯正治療されていると歯の形、位置がずれたりするとスポーツガードの適合が良くなくなりますから本来は治療が終わってからの方がよいです。ですが、青春時代は一回きりです。できるものであれば何とかしてあげたいと思っています。
人と違うのは嫌、と思春期には思いがちです。でも将来のことを考えると接触競技をされているならマウスガードの使用は是非検討してみると良いと思います。