皆さんは舌を動かさずに咀嚼できますか。唇を閉じずに嚥下できますか。頑張ればできるかもしれません。でもそれをそのあとずっと続けていきたいと思いますか。舌も唇も筋肉です。筋肉動かして食べるという行為を行っています。その加齢と共に筋肉の動きは落ちていきます。走ったり歩いたりスポーツをする筋肉だけでなく、口の周りの筋肉の動きもその能力が落ちていきます。オーラルフレイルと言います。フレイルは衰えという意味です。口の衰え、ですね。そんなことまだまだ先の話、自分はそんなことないと思っていませんか。一気に衰えることはありません。
49.2%
平均50歳(±16歳)で口腔の機能低下症の罹患率は49.2%です。約半分の人がオーラルフレイル、機能低下が始まっているのです。平均80歳(±7歳)では77%の方が機能低下しているのです。
何を診ているか
口腔衛生状態 舌の上の汚れ具合
口腔乾燥 口腔水分計で舌の上を計測します。
咬合力低下の評価 しっかりした歯がどれほど残っているか
舌・口唇運動機能低下の評価 パ、タ、カ、それぞれを1秒間で何回言えるか
舌圧の評価 舌の押す力を測ります。
咀嚼機能低下評価 グミを食べてどれくらいグルコースが溶け出しているかを測定する
嚥下機能低下評価 飲み込むときの不具合とか何項目か聞き取ります。
これらから3項目以上該当した場合に口腔機能低下症と診断します。さあ、これに該当したらどうしましょうか。改善すべく行動を起こさなくてはなりません。リハビリテーションですね。何をしていかないといけないでしょうか。それぞれでやることは違います。でも簡単でないと続きませんよね。
口腔衛生不良には
口腔清掃、すなわち歯ブラシをしっかりするということです。してる!とおっしゃるでしょうが、出来てないからひっかかっているのです。ご来院いただいて、衛生士による歯ブラシ指導を受けてご家庭で同様にしていただければと思います。どうしても自分では管理できない部分がでてきますから定期的に医院にてクリーニングすることが肝要です。
また舌の上の刷掃も大事です。専用の舌ブラシがありますから普通の歯ブラシでなく、それを用いるとよいでしょう。数日に1回でよいです。力一杯しなくてよいです。適切な力加減でお願いします。
口腔乾燥には
脱水や薬剤の副作用があります。それには水分管理や補給の見直し、服薬の検討などが考えられます。医科へ照会する必要があります。
自分でできるのは唾液腺マッサージとあいうべ体操です。唾液腺マッサージに関しては文章で伝えるのは難しいので、youtubeのみんなの介護チャンネル内に唾液腺マッサージのやり方がありますのでご参照ください。効果があるのは食事前です。食前に毎回行うのが効果的です。
総義歯は唾液により吸着していることもありますから、乾燥しているとその場に維持することが難しいことがあります。その場合には義歯安定剤を用いるとよいです。使い慣れたものがあればそれでよいですが、比較的おすすめできるものもありますからご相談ください。
咬合力低下には
義歯を入れたり、歯周病治療を行い噛めるようにしていきましょう。
舌口唇運動機能低下には
舌、口唇の筋力の低下ですから、あいうべ体操を行いましょう。おおげさな口の動きをするのがポイントです。声は出さなくてよいです。
低舌圧には
舌の筋力低下ですから、あいうべ体操を、それに加えておでこ体操をするとよいでしょう。
おでこ体操は、
- 椅子に座りおでこに手のひらの下部(手根部)を当て、
- 顔はおへそをのぞき込むようの下を向け
- 手のひらは上に向かっておでこを押し戻すようにして5秒キープしてください。
喉ぼとけあたりに力が入っていることが意識しましょう。
誰でも齢を重ねます。例外はないです。
ご自身でできることはこのあたりかと思います。加齢による衰え、フレイルは誰にでも起こります。少しでも機能低下を遅らせていき、コロリといくまで美味しく食事したいと思いませんか。